January 11, 2018 / 4:59 AM / 5 days ago

コラム:中国の米債購入停止は杞憂、それでも円高濃厚の訳=村田雅志氏

[東京 11日] - 一部米系メディアは、外貨準備を担当する中国の当局者らが、米国債の購入の減額ないしは停止を勧告したと報じた。同報道が伝わると、米債市場では売りが先行し、米10年債利回りは一時2.59%台半ばと、昨年3月以来の高水準に上昇した。

為替市場ではドル売りが進み、ドル円は111円台後半から111円台前半と、昨年11月28日以来の安値に下落。ユーロドルは1.19ドル台前半から1.20ドルちょうど近辺に上昇した。

今回の報道は市場で大きな反応につながったが、中国が実際に米国債の購入を減額ないしは停止に踏み切るとは考えにくい。中国の外貨準備(約3.1兆ドル)の通貨別構成は明らかにされていないが、少なくとも全体の60%程度(約1.9兆ドル)はドル建てと言われている。

中国の外貨準備は、昨年1月の3.0兆ドルを底に拡大基調で推移。世界最大のドル建て証券である米国債の購入を減額しながら、拡大する外貨準備を運用することは現実的ではない。現に米国債は、報道後に下落したものの、売り一巡後は買い戻され、米10年債利回りは2.54%台前半と、報道前の水準に低下した。

興味深いのは、米国債が買い戻された一方で、ドルは対円を中心に戻りが弱いことだ。報道翌日(11日)朝方のドル円は、111円台半ば手前と、前日安値から小幅反発にとどまっている。日銀が9日、超長期国債の買い入れを減額した後に、ドル円が113円ちょうど近辺から112円台半ばへ下落したように、今年はドル安・円高基調が続いている。

<ドル107円台前半まで円高が進む可能性も>

昨年後半は、ドル買いをサポートする材料が相次いだ。年内成立は難しいと言われていた米税制改革法案は、12月下旬に米上下院で可決。昨年初めに減速懸念が強まっていた米経済成長率は、昨年4―6月期、7―9月期と2期連続で3%台に加速した。連邦公開市場委員会(FOMC)は、一部の期待を裏切るように年3回の利上げを決めた。

ただ足元では、新たなドル買い材料を見いだすことが難しく、むしろドル・ロング(買い)ポジションを縮小したくなるような材料が増えつつある。米税制改革が米成長率を高めるとの期待があるものの、成長率が4%台に加速するとの見方はほぼ皆無。一方で、米財政赤字は、米議会予算局(CBO)の試算によると今後10年間に約1.5兆ドル拡大するとみられている。

米国では今年11月に中間選挙が予定されているが、共和党やホワイトハウスは上下院の過半数確保に危機感を強めていると報じられている。昨年おとなしくしていたトランプ米大統領が、米国内での支持確保を狙い、今年は保護主義的な動きを強める可能性もある。実際、報道によれば、カナダは、トランプ米大統領が北米自由貿易協定(NAFTA)離脱を表明するとの確信を強めているという。

ドルの先安観が残る中で、買い通貨の有力候補となるのは円だろう。昨年、ドルはほとんどの通貨に対し下落したが、対円での下落率は3.8%と、ユーロ(14.2%)やポンド(9.5%)といった主要国通貨だけでなく、新興国通貨のほとんどと比べて小幅だ。実質実効レートなどでみた円の割安感は依然として根強い。

日本景気の拡大を背景とした円長期債利回りの上昇や日本株高も円高の動きをサポートする。国内機関投資家は、円売りによる対外証券投資を積み上げており、ドル先安観が残る中、対外証券投資をさらに積み増すよりも、国内証券に資金を振り向ける合理性も高まっている。財務省が週次で発表する対外証券投資をみると、中長期債の対外投資は10月第3週でピークアウトしている。

当然のことだが、米長期債利回りの上昇が、海外投資家の売り(ドル売り)によるものであれば、たとえ日米金利差が拡大したとしても、ドル円の上昇は期待できない。日米の金融政策の違い(ダイバージェンス)は、依然として続いているものの、ドル安観測が根強い以上、ドル買い・円売りの材料に対する反応が鈍い一方で、ドル売り・円買いの材料には反応しやすいとみるべきである。

現に、中国国家外為管理局(SAFE)は11日、米国債購入の減額・停止に関する報道は、誤った情報を基にした可能性があるとの声明を公表し、前夜の報道を事実上否定したが、ドル円の反発は111円台後半で止まった。

原稿執筆時点でのドル円は昨年9月半ば以降から続いているレンジ相場の下限付近にあるが、今後、新たなドル売り・円買い材料の出現で、ドル円がレンジの下限(111円台半ば)を大きく割り込むようだと、テクニカル的には昨年来安値の107円台前半までドル安・円高が進む可能性を視野に入れるべきだろう。

*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。近著に「人民元切り下げ:次のバブルが迫る」(東洋経済新報社)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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