February 23, 2018 / 2:55 AM / 7 months ago

コラム:アベノミクス相場終焉か、ドル97円も視野=村田雅志氏

[東京 23日] - 今年に入ってから、日米金利差が開いているにもかかわらず、ドル円は上値の重い状態が続いている。日米金利差は、2年債で2.40%、10年債で2.86%と、年初より40ベーシスポイント(bp)ほど拡大(2月22日時点)。一方、ドル円は足元で106円台後半と、年初の112円台後半から6円近く低い水準にある。「日米金利差の拡大=ドル買い・円売り要因」が一般的な考え方だが、現実は逆である。

ドル円と日米金利差の逆相関の動きを素直に解釈すれば、世界の投資家は米国債売りとドル売りを進めていることになる。財務省が週次で発表する対外証券投資をみると、日本の投資家は2月に入ってから3週連続で外債を売り越し。年初来でも8311億円の売り越しとなった。

米金利の上昇で外債ポジションの含み損が膨らみ、損切りを余儀なくされた投資家も多いと推察される。一部報道によると、金融庁は20日、地方銀行20行程度を対象に外債の運用状況を緊急調査。調査対象全ての地方銀行が外債投資で含み損を抱え、中には年間のコア業務純益に相当する含み損を抱えた地銀もあったという。

市場関係者からは、ドル円が110円から115円程度にいずれ反発するとの見方も示されている。こうした見方の前提には、ドル円と日米金利差の逆相関は続かないとの考えがあるのだろうが、ドル円の反転上昇を実際に目にするのは当面、難しいと思われる。

米金利上昇で米国債の含み損が膨らむ状況では、投資家の多くは金利上昇が一服するまで損切りを続け、米国債買いを手控える傾向を強めがちだ。米2年債利回りは2.25%台と2008年9月以来の高水準に達しているが、米金融市場では今年3回の利上げを織り込みつつある状況だ。

ニューヨーク連銀が推計する期待金利は2年債で2.54%台に達しており、早期に米金利の上昇が一服するとは期待しにくい。しばらくは米債利回りの上昇が続き、米国債ポジションの損切りに巻き込まれる形でドル円が下落する展開が続く可能性が残っている。

<日銀人事で緩和拡大期待も後退>

ドル円の下落が続いたとしても、日銀が緩和強化に動くとの見方は強まらないだろう。政府は、黒田東彦総裁の再任と、若田部昌澄・早稲田大学教授と雨宮正佳・日銀理事の副総裁就任の人事案を衆参の議院運営委員会に提示し、本田悦朗・スイス大使の起用を見送った。

本田氏は、デフレ脱却のためには金融緩和だけでなく財政出動の大規模化を以前から主張。同じ財務省出身とはいえ、財政悪化に対し危機感を示す黒田総裁とは違う立場を鮮明にしており、本田氏が副総裁に就任すれば、現状維持に傾きがちな黒田総裁に対し、金融緩和拡大の圧力をかけるとの期待も持ちやすい。

一方、若田部氏も大規模な金融緩和の必要性を主張してきたリフレ派の一人だが、岩田規久男現副総裁と同様に学者出身だ。議長案に対し一度も反対票を投じなかった岩田氏と同様に、副総裁という立場から議長案を賛成し続け、自らの存在感を封じるとの見方が優勢のようである。もう一人の副総裁が、現在の金融政策を取り仕切ってきた雨宮氏だけに、日銀の金融政策は今後も現状維持バイアスが残りやすく、緩和拡大に舵を切るとは考えにくい。

このままドル円と日米金利差の逆相関が続けば、いわゆるアベノミクス相場の終焉(しゅうえん)を指摘する声も強まるだろう。日米2年債利回り差は拡大しているものの、その水準は2007年12月下旬以来の高さ。当時のドル円は111円程度で、足元で期待できるドル円の上値もその程度と言えなくもない。

いわゆるアベノミクス相場が始まり、ドル円が125円を超えた2015年6月の日米2年債利回り差は0.6%程度しかなく、ドル円の上昇を日米金利差で説明することは不可能だった。安倍政権発足後のドル円と日米金利差の関係をみれば、足元は異常のように思えるかもしれないが、安倍政権前のリーマン・ショック前後まで視野を広げれば、足元のドル円の水準が正常で、安倍政権発足後のドル円の動きが異常だったと解釈することもできる。

チャートでみたドル円のサポートは16日に付けた105円台半ばと105円ちょうど。仮に今後、ドル円が両者を割り込むと、次の節目は101円台前半まで見当たらない。日本の国内総生産(GDP)成長率は、8四半期連続のプラスと約28年ぶりの連続成長を記録。アベノミクスによる景気刺激策が後退するとの見方も加われば、ドル円は100円を割り込み、アベノミクス期待が一服した2013年10月の安値水準である97円程度まで下げが広がる展開も視野に入る。

この水準は、安倍政権発足前の2012年11月の安値(79.1円近辺)から2015年6月の高値(125.9円近辺)までの上昇の61.8%戻し水準でもある。

*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。近著に「人民元切り下げ:次のバブルが迫る」(東洋経済新報社)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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