December 11, 2017 / 2:49 AM / 4 months ago

コラム:2018年の投資戦略、悲観より楽観が得策か=村上尚己氏

[東京 11日] - 振り返ってみれば株式などリスク資産全般が上昇して終わりそうな2017年だが、2018年はどのような年になるのだろうか。

2017年のリスク資産上昇のけん引役となったのは、世界経済の成長加速である。中国など新興国経済の安定に加え、年央に始まった米欧経済の成長加速によって、グローバルGDP(国内総生産、市場ウエートベース)の伸び率は2011年以来6年ぶりに3%超まで高まったと試算される。

世界経済最大のリスクと常に言われていた中国経済の安定が続き、各国で緊縮気味だった財政政策が緩和方向に転じている。そして、米連邦準備理事会(FRB)による慎重な政策金利正常化が続くなかで、原油など資源価格上昇が金融緩和的に作用したことによって、各国の総需要の伸びが高まった。購買担当者景気指数(PMI)などの企業景況感、米欧の家計センチメント、アジア輸出動向などを見ても、さらなる景気加速の兆候が散見される。

こうした堅調な成長が続くかどうかはまず、米国で法人税減税を主軸とした拡張的な財政政策がさらに強まるか否かに依存する。トランプ政権に起因するリスクは残るが、少なくとも経済チームの手腕は予想以上で、法人税減税の実現可能性は高まっているようにみえる。なお、市場にはトランプ政権による拡張的な財政政策の実現可能性、またその効果について懐疑的な見方は残っていると思われる。

<海外より日本に潜むサプライズの芽>

2018年1―3月までは、減税政策の帰趨(きすう)、副議長人事などで示されるFRB執行部のスタンスといった米国の金融財政政策動向が日々の値動きを左右することになりそうだ。リスク要因としては、北朝鮮、中東での軍事リスクが挙げられるが、これは事態の推移を見守るしかないだろう。

ただ、世界の多くの市場参加者が気づいていないサプライズを引き起こす2018年初頭のイベントは、実は日本国内に潜んでいるとみている。日銀執行部の後継人事である。今後のスケジュールを考えると、政府は1―2月には日銀総裁人事案を国会に提示すると思われる。

後任人事は水面下で動いているだろうが、安倍晋三政権のブレーンの発言を追うと、まず内閣官房参与の浜田宏一・米イエール大学名誉教授は黒田東彦日銀総裁の再任を容認するスタンスを示している。元日銀審議委員の中原伸之氏や本田悦朗・駐スイス大使は黒田総裁交代が望ましいと明言しており、ブレーン内で見解が分かれているとみられる。

日本の債券市場などでは黒田総裁の続投が有力視されているようだ。いずれにせよ、最後は官邸の政治判断となるため、金融緩和政策をさらに強化すべく新たな総裁が誕生する可能性もある。黒田総裁交代となれば、「安倍政権は2%のインフレ目標達成にやはり本気である」と再認識され、2013年のようにレジーム・チェンジを受けて金利や為替の激しい展開が起こるかもしれない。

<利回り曲線フラット化は本当に悪いシグナルか>

さて、2018年後半までの金融市場を展望する上では、現在の債券市場で進んでいるイールドカーブのフラットニングをどう考えるかが重要な論点になる。フラットニングによって、例えば米国の2年―10年金利差は大きく縮小している。これが今後の景気減速のシグナルという議論も可能ではある。それが正しければ、2018年も世界経済の高成長が続くという予想が楽観的ということになる。

ただ、イールドカーブのフラットニングが、今後の景気減速のシグナルとは言えないと筆者は考える。長期金利が上昇しない要因として、中銀による国債購入が大きく影響していることがある。長短金利差と景気循環の連動性は崩れているとみるのが妥当だろう。

むろん、ターミナルレート(政策金利の着地点)のすう勢的な低下が長期金利を低下させている可能性もある。ただ、仮にそうであれば、債券市場が成長率・インフレに悲観的になり過ぎているのではないか。というのも、米国でも、低下していた労働生産性の伸び率が高まる兆候がみられるからだ。

上記の筆者の認識が正しければ、これまでのフラットニングが弱まり、長期金利が上昇に転じるか否かは、FRBがバランスシート縮小を続け、そして欧州中銀(ECB)による量的緩和縮小(テーパリング)がスムーズに続くかどうかに依存する。

さらには、2017年に予想外に低下した米国のインフレ率が、多くのエコノミストの予想通りに2018年3月から明確に上向くかどうかも重要だ。これは、米国においてフィリップスカーブ(物価上昇率と失業率の関係)が復活するかどうかという論点だが、この点については、筆者は現時点で判断に迷っている。

当社では、仮に米国で減税法案が実現しなくても、米欧経済の堅調な成長が続き、ECBの金融政策正常化が2018年末まで継続するなかで、米欧の長期金利も上昇すると予想している。このため、日米長期金利差拡大を背景にドル円は120円台にドル高円安が進むと見込んでいる。

では、債券市場での金利上昇が、株式などリスク資産の下落をもたらすリスクはあるだろうか。中銀の政策がオーバーキル(過剰引き締め)となることによる金利上昇ではなく、景気回復インフレを伴う金利上昇であれば、金利上昇が株安をもたらすとしてもそれは長期化しない。

地政学リスクの浮上、または金利上昇への警戒などを受けたリスク資産の下落局面に機動的に動けるかどうかが、2018年の投資パフォーマンスを左右すると考えている。

*村上尚己氏は、米大手運用会社アライアンス・バーンスタイン(AB)のマーケット・ストラテジスト。1994年第一生命保険入社、BNPパリバ、ゴールドマン・サックス、マネックス証券などを経て、2014年5月より現職。近著に、「日本の正しい未来 世界一豊かになる条件」(講談社刊、2017年11月)。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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