January 18, 2018 / 6:30 AM / 4 months ago

コラム:世界株高は続くか、今後の投資機会を考える=村上尚己氏

[東京 18日] - 前回12月11日付のコラムでは、2018年の投資戦略に関して、総じて楽観方向で考えていると述べた。2018年はまだ始まったばかりだが、年初からの米国株を中心とした世界株式市場の大幅高は、筆者の見立てが正しいことを示しているかもしれない。

振り返れば、2017年の世界経済は5年ぶりの高成長となった。年末にかけて上振れしていることから、2018年の成長率はさらに高まる見通しだ。トランプ米政権が看板政策としていた減税法案は、時間はかかったものの、昨年末に議会で可決された。経済押し上げ政策がない中で、2017年の米成長率は2%を上回った。2018年は減税政策によって2%台後半に届く可能性が高いと筆者は考えている。

<米株市場の調整材料>

年初からの大幅株高の一因は、2018年の経済成長加速・企業業績拡大に懐疑的だった市場関係者が、株式などリスク資産のポジションを拡大させたことだろう。

ただ、減税政策が実現した一方で、トランプ政権への懐疑的な見方はウォール街で根強い。減税の経済押し上げ効果、さらには今後のインフラ投資拡大などについては、慎重な見解が市場に残っていると筆者はみている。後で述べるが、2018年にトランプ政権に対する市場の見方が変わるとすれば、北朝鮮への姿勢が強硬化することではないか。

世界的な株高は、景気回復・利益拡大に加えて、低金利によるバリュエーション押し上げでもたらされている側面がある。特に米国株については、バリュエーション指標には割高感がみられている。低位で安定する米長期金利が上昇に転じれば、株式市場にとってリスクになり得る。

実際、米連邦準備理事会(FRB)は2018年も利上げを続けるとみられるが、1)短期金利上昇が米国経済にブレーキをかける、あるいは、2)イールドカーブがスティープ化に転じる、といった状況になれば、米国株市場の調整は起きるだろう。ただ、2018年は、減税政策が総需要を高めるとしても、経済が過熱に至るまでにはまだ時間がかかると筆者はみている。インフレ率上昇は緩やかにとどまるだろう。

また、債券市場では、利上げサイクルの最終着地点(ターミナルレート)が低下し、政策金利が天井に近づいている可能性が意識され始めているが、それはやや悲観的ではないか。いずれにしても、金利の大幅上昇などの米国債市場の波乱が、株式市場を混乱させる可能性は低いと思われる。

<足元の円高は投資チャンス>

一方、2018年の金融市場のリスクとして筆者が注視しているのは、朝鮮半島で軍事的緊張が高まることだ。今後、米国に加えて中国政府からの圧力が強まれば、北朝鮮は一段と苦境に追い込まれるだろう。それに伴い米中関係が緊張化するシナリオなど、夏場にかけて金融市場は軍事リスクに再びナーバスになり得る。

こうした政治情勢について筆者は深い見識があるわけではないが、昨年後半から、北朝鮮情勢については楽観方向に市場心理が傾いているようにみえる。逆に言えば、今後このリスクが再び注目される局面では、リスク資産に対する押し目買いなどの投資機会がもたらされるかもしれない。

また、2018年に入ってから米10年金利が緩やかに上昇する中で、為替市場ではドル円相場がドル安円高方向に動いている。最近のドル安の要因はいくつか挙げられているが、1つにはユーロドルが一時1.23ドル付近まで上昇し、ドル円も連れ安となったことだ。

ただ、ユーロドルの一段高をもたらしたドイツの大連立政権絡みのイベントが、持続的なユーロ高要因になる可能性は高くない。

加えて、日銀の国債買い入れオペの減額や、早々に引き締めに踏み出したい日銀関係者の声がメディアを通じて漏れ伝わっていることなどが、為替市場での円高要因になっているとみられる。だが、日銀の政策スタンスや安倍政権の経済政策を踏まえれば、これが持続する可能性は低い。であれば、最近の円高は、むしろ投資機会とみるべきということになる。

<米金融政策論議から学べること>

最後に2018年のFRBの政策については、チーフエコノミストの役割を果たすと思われるもう1人の副議長と、ニューヨーク連銀総裁などの人選が進んでいるとみられるが、不透明な要因は残っている。仮に人選が滞れば、2月以降のパウエルFRB新体制は3人の理事による運営となるリスクがある。

他方、複数の地区連銀総裁の発言や12月米連邦公開市場委員会(FOMC)での議論などから、FRB内では、インフレ目標引き上げや物価水準目標導入など、新たな金融政策の枠組みが検討されていることが注目される。

FRBでの金融政策の枠組み変更の議論は、次の景気後退などのショックに備え、金融緩和の効果を一段と高める具体的な手段が必要という問題意識がその背景にある。こうした慎重なFRB高官らの見立て通りに、米国の景気減速リスクが大きいかどうかに関して筆者は懐疑的だが、今後利上げを続けた時の備えとして、金融政策が役割を果たすために、建設的かつ具体的な議論が行われていると前向きに評価できる。

また、FRBの先進的で活発な議論が、他の先進国と比べた政策判断の優位性をもたらしてきた、と筆者は考えている。

翻って、日本では日銀の2%インフレ目標実現に程遠い状況が約4年続いている。つまり、日銀こそ、金融緩和強化につながるフレームワーク見直しが必要なのではないだろうか。日銀の金融政策への信認低下が、先述した金融緩和の早期手じまい観測を浮上させる一因になっている可能性がある。こうした意味でも、今後判明する、日銀新執行部の人事は重要なイベントになり得るだろう。

*村上尚己氏は、米大手運用会社アライアンス・バーンスタイン(AB)のマーケット・ストラテジスト。1994年第一生命保険入社、BNPパリバ、ゴールドマン・サックス、マネックス証券などを経て、2014年5月より現職。近著に、「日本の正しい未来 世界一豊かになる条件」(講談社刊、2017年11月)。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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