May 17, 2016 / 4:51 AM / in 2 years

コラム:世界経済は「最悪期」脱したか=村上尚己氏

[東京 17日] - 3月のコラムでは、同月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で明らかになったイエレン議長を中心とした連邦準備理事会(FRB)メンバーの、利上げ再開への慎重姿勢が、株式市場などの追い風になると指摘した。筆者の見立てどおりに、米国株は4月20日までに昨年7月以来の水準まで上昇した。

その後は、米国のモメンタム企業(値動きに勢いがある銘柄群)を中心に1―3月の決算が冴えず、また原油など資源価格上昇が一服。「Sell in May(5月に売れ)」の経験則もあっただろう4月末から調整地合いになっている。再びリスク資産は調整局面に入りつつあるのだろうか。

<市場心理改善は夏場まで続く公算大>

筆者は、FRBによる慎重姿勢が徹底される中で、これが市場心理を改善させる構図が夏場まで続くとみている。

5月初旬に公表された米雇用統計を受けて、6月利上げを想定していた米国のほとんどのエコノミストは、利上げ予想時期を後ろ倒しした。ただ、雇用統計の下振れが米国経済のぜい弱さを示し、利上げ先送りをやむなしと判断したためではない。予想対比での下振れといっても、統計的には誤差の範囲で回復が続く米労働市場の基調判断に影響は全くない。実際、4月小売売上の上振れが示すように、4―6月から米経済は再び年率3%前後に加速するとみられる。

金融市場にとってより重要なことは、景気判断が変わらない中でFRBが利上げを急がない姿勢を徹底しているということだろう。昨年末に利上げを始めても、FOMCメンバーの多くは海外や金融市場に起因する外的ショックに対して、先述したとおり警戒を崩していない。この慎重な姿勢は筆者の想定以上に強固である。

このように考えると、FRBが警戒するリスクを覆すほど、夏場までに米経済の成長加速やインフレの高まりが観測される可能性は低いだろう。経済成長とインフレの加速を確認、さらに株式市場の上昇でリスクが軽減される、との双方の条件がそろうことで、ようやく米国の利上げ再開が可能になるのではないか。

<年初の下落再来リスクは限定的>

もちろん、予想が困難な原油価格の値動き次第で、金融市場が再び揺れ動く可能性も残っている。ただ、年初まで停滞していた世界経済を見渡すと、最悪期を脱しつつある兆候が散見される。全産業ベースのグローバル景況感指数は2月の大底から、3月、4月と緩やかながらも2カ月連続で改善した。

原油・資源価格の暴落によるエネルギー産業のブーム崩壊は、昨年後半の製造業の生産調整を引き起こしたが、その調整が終わり米欧の国内需要が製造業循環を改善させるフェーズに変わりつつある。

昨年半ばから市場リスクの源泉となっている中国においても、企業景況感指数は50前後まで戻り、同時に輸出や企業利益も最悪期を抜け出した。政治闘争が長期化し、経済政策が行きあたりばったりで、さらにディスインフレと過剰債務に直面している中国が、世界経済にとって最大のリスクである状況は変わらない。ただ、短期的には、資本流出加速、通貨切り下げ、金融システム懸念など、市場の行き過ぎた懸念が和らぐとみられる。

また、中国など新興国に対する懸念が和らいでいる1つの理由には、原油・資源価格が大底から持ち直していることもある。一時、1バレル20ドル台への下落が避けられないなどと言われた原油相場は同40ドル半ばまで上昇、行き過ぎた悲観が蔓延した状況から様変わりしている。

確かに、今後産油国の政治情勢で再び乱高下する可能性はあるし、昨年の原油価格の値動きを踏まえると、原油高もいいところまで来ている可能性はある。鉄鉱石価格が5月になってから乱高下しているのも気になる。

ただ、投機的な思惑で原油や鉄鉱石が乱高下する中で、投機的に取引される側面が限定的な、すずや鉄スクラップなどの工業用原材料価格は依然、高値を保っている。循環的な景気回復を背景とした各商品の需要拡大が商品相場を支える中で、複数の要因が重なり過度の悲観に陥った今年初めのような下落局面が再来する可能性は限定的とみている。

*村上尚己氏は、米大手運用会社アライアンス・バーンスタイン(AB)のマーケット・ストラテジスト。1994年第一生命保険入社、BNPパリバ、ゴールドマン・サックス、マネックス証券などを経て、2014年5月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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