March 28, 2018 / 7:31 AM / 8 months ago

コラム:ドル100円の扉開くボラティリティー復活=門田真一郎氏

[東京 28日] - 低ボラティリティーやリスクオンの流れに象徴された2017年のゴルディロックス(適温)相場から一転、2018年の金融市場は不安定な足取りを余儀なくされている。

ゴルディロックス相場の背景にあった世界好景気、低インフレ、金融緩和環境のうち、世界経済の強さは健在だが、米国でインフレ加速への懸念が浮上し、主要国では金融政策正常化の波が広がりつつある。

加えて、貿易戦争懸念やハイテク企業に対する規制強化といった新材料も市場の不安定化につながっている。為替市場においては、こうしたボラティリティー上昇がリスク回避の流れを通じて円高圧力につながってきた。

全般的な市場のボラティリティーはすでに2月上旬のピークから低下しているが、異例の低さにあった2017年の水準はなお上回っている。ドル円も年初の112円台から一時104円台まで下落した後、徐々に安定化の兆しも見られるが、上値の重い展開が続いている。

中長期的な観点からすると、2009年から続いた金融市場ボラティリティーの一方的な低下トレンドは2017年に終えんし、ボラティリティーが徐々に正常化していく局面に入った可能性が高い。ドル円相場は動意に欠けた2017年から一転、円高リスクにさらされやすい市場環境に突入した公算が大きい。

<背景に経済見通しの不確実性と金融政策正常化>

ボラティリティーの変動要因は大きく分けて2つある。経済ファンダメンタルズの不確実性によるものと、金融政策や投資家動向といったそれ以外の要因だ。

経済ファンダメンタルズ要因とは、市場参加者の経済見通しが似通ってくる(すなわち予測分散が狭まる)とボラティリティーが低下するという関係を指す。例えば、米株のボラティリティー(VIX指数)はフィラデルフィア地区連銀が公表している米実質国内総生産(GDP)市場予測の分散との連動性が高い。

この予測分散が2009年以降は低下基調をたどり(すなわち市場予測が収れん)、昨年末時点で2008年の金融危機前以来の低水準に達したことが、ファンダメンタルズ面でのボラティリティー押し下げ要因となっていた。ただ、景気サイクルが成熟しつつある中、米減税・財政拡張の影響を巡る不確実性や通商政策懸念などを背景に再び経済見通しの乖離が広がりつつある。

経済以外の要因としては、金融政策が重要だ。以前は主要国のうち米連邦準備理事会(FRB)のみが利上げを行っていたが、昨夏以降はカナダ、英国、韓国なども利上げを開始した。堅調な世界経済情勢を背景に、こうした利上げの波は一段と裾野を広げていく公算が大きい。

さらに、2016―17年は日米欧の中銀全体で国債買い入れ額が発行額を上回る量的緩和状態にあったが、2018年はFRBのバランスシート縮小や欧州中銀(ECB)・日銀の資産買い入れ縮小によって量的引き締めへと転じる。

FRBの利上げに伴う米国債イールドカーブのフラット化は、ボラティリティー上昇に数年先行する傾向がある。これまでの米金利カーブのフラット化を踏まえると、現在のVIXの水準感も特段違和感はなく、先行きについてもボラティリティーが上昇基調をたどる可能性を示唆している。

<ドル円よりクロス円に下落圧力がかかりやすい>

2017年の各種ボラティリティーがそろって歴史的低水準に低下した背景として、投資家動向も重要だ。

市場では2016年の英国民投票での欧州連合(EU)離脱選択(ブレグジット)やトランプ米大統領当選といったサプライズ・イベントを消化した後、低利回り環境が投資収益を圧迫する中で、オプション(ボラティリティー)を売り、収益改善を目論む動きが広がった。背景には、ゴルディロックス相場で市場変動が抑制された状況が続くとの前提があった。

低ボラティリティーを前提とする株式ロング・ポジションも大まかにはこの動きの一環と見なせる。結果、本来リスク指標であるボラティリティーが投資の収益機会として捉えられるようになった。こうして積み上がったポジションの巻き戻しは、年初のボラティリティー上昇を増幅させた可能性が高い。

ただ、年初来の安全資産(主に米国債)の利回り改善を踏まえると、過度なリスクテークによってボラティリティーが昨年の水準まで押し下げられる可能性は低いだろう。金融政策正常化の広がりや通商問題といった不確定要素も踏まえるとなおさらだ。

最後に、ボラティリティー上昇が為替相場に与える影響を確認したい。株式、債券、為替のボラティリティーと主要10通貨の相関を見ると、各ボラティリティー指標と最も正相関が強い(ボラティリティー上昇局面で買われやすい)のは円、ドル、スイスフランといった安全資産通貨だ。

一方、最も逆相関が強い(ボラティリティー上昇局面で売られやすい)のは、オーストラリアドル、ニュージーランドドル、カナダドルといった、リスク選好度合いへの感応度が高い、いわゆる高ベータ通貨だ。これはボラティリティー上昇局面において、ドル円よりもクロス円(特に高ベータ通貨)に下落圧力がかかりやすいことを示唆している。

筆者は先行きのドル円相場について、中期的なドル安トレンドや脆弱なリスクセンチメントを背景に下落基調を続けると考えており、年内100円程度まで下落する余地があると予想する。ただ、ボラティリティーが高まる局面では想定以上に円高が進むリスクにも注意したい。

*門田真一郎氏は、バークレイズ証券のシニア為替・債券ストラテジスト。2008年にバークレイズ証券に入社し、銀行戦略調査および外債ストラテジーを担当、2013―16年にバークレイズ銀行で為替ストラテジストを務めた後、16年から現職。海外拠点の為替・金利・経済チームとのネットワークを活かし、為替市場見通しのほか、海外経済・政治動向などについて幅広い情報提供を行っている。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経済学部卒。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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