March 15, 2018 / 7:03 AM / 7 months ago

コラム:森友相場は小池相場と真逆、政治リスク過小評価か=山田修輔氏

[東京 15日] - 海外投資家を訪問すると、例外なく国内政治の議論に花が咲く。それは、政治は元来、国内外で情報の非対称性が強く、その国独自のものであり、海外投資家が咀嚼(そしゃく)しづらいためだ。

そのため、海外投資家の存在感が大きい市場では、ときに国内的感覚と乖離したプライシングが観測される。為替オプション市場もその1つである。

筆者はここ数年、安倍政権が直面する政治リスクは総じて些末(さまつ)なものだと判断し、市場の反応はしばしば行き過ぎだと論じてきた。2017年の衆議院選はその最たる例だ。オプション市場は当初、小池百合子東京都知事が「希望の党」結成で巻き起こした「小池旋風」を過剰に警戒し、特筆すべき歪みを醸成した。

その歪みとは、1)選挙日のボラティリティーの高騰、2)リスクリバーサル (円売りの権利と円買いの権利の価格差)の円高方向への極度の傾斜、の2つである(参照コラム2017年10月12日付「小池旋風が生んだ市場の歪み、総選挙後に修正か」)。

では、学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る今回の事案はどうだろうか。筆者は事案自体について分析をする立場にないが、相場に対する何らかのインプリケーションは提供できると思う。以下、為替・株式相場を中心に、影響を検討したい。

<静観するオプション市場、前提はアベノミクス継続>

まず、この事案は既報の通り政局に発展する潜在性を有しており、短期的にドル円の障害となり得る。これまでの事案と比べ、今回は財務省が公文書の書き換えを認め、安倍政権の中核をなす麻生太郎氏が担当大臣である点で趣を異にする。にもかかわらず、海外投資家との議論や為替オプション市場の値動きから、市場の政治リスクの織り込みがむしろやや甘い感じを受ける。

スポット市場は、2月の株安局面で円高派は面目躍如、円安派は防戦一方となり、いったん反発した後、どっちつかず、いわば首鼠(しゅそ)両端の相場つきとなっている。その落ち着きを反映し、1カ月のインプライド・ボラティリティーは8前後であり、12月の安値6よりは常識的だが、2月の10以上の水準からは低下。歴史的に見ても低位で推移している。1カ月のリスクリバーサルも、株価急落前の1月の水準に回帰している。

報じられている財務省の不祥事は、来年予定されている消費増税に影を落とし、すでに日銀正副総裁人事を含む国会運営の足かせとなっている。しかし、金融市場にとっての眼目は、安倍政権の安定性であり、政治的決着と政権支持率の動向が鍵を握りそうだ。

金融市場は安倍晋三首相が自民党総裁として2期目の任期を満了し、9月の総裁選で3選を果たすシナリオを描いている。すなわち、安倍政権の経済政策(アベノミクス)継続を前提としており、この前提が崩れると短期的に株安・円高が発生しやすい。支持率低下で経済政策が発動されるという期待や政治不安で通貨安との見方もなくはないが、総裁選が半年後に迫っており、ひとまずは株安・円高方向への調整となるはずだ。

<自民党総裁選のマーケットイベント化に要注意>

政治的帰結は、世論の動向に左右される。財務大臣交代というリスクシナリオでは、安倍政権の党内における政治力は無傷というわけにはいかない。政権支持率は、先週末時点では漸減にとどまっているが、過去の事例では、初期報道から支持率の本格的な低下まで、ある程度のタイムラグが観測されている。

支持率が30%台に低下し、不支持と支持が逆転する展開となれば、これまで無風と見なされてきた9月の自民党総裁選が、市場において「イベント性」をにわかに帯びてくる。野党の支持率が低迷しているため、政権交代リスクはほぼないが、政権の不安定化は与党内の派閥政治の活発化を意味しよう。ただ、今回の事案は多角的な見方が可能であり、世論の関心がどこに向くのかは不確実性が高い。

目下、良好な経済環境、国政選挙日程、政権の実績、党外の対抗軸の欠如を考慮すると、政権は今回の事案をひとまず乗り切ると筆者は想定している。また、より長期的には、誰が総裁になっても自民党政権は現行の経済政策を維持するという見方もある。

しかし、率直に言って、国内政治に対する金融市場の反応は予測し難い。政治安定に対する長期的なリスクもさることながら、短期的な支持率低下リスクには注意が必要だ。前述した通り、市場は日本の政治リスクを足元であまり意識していないように見受けられる。今後の世論調査に注意を払う必要がある。

*山田修輔氏はバンクオブアメリカ・メリルリンチのチーフ日本FX株式ストラテジスト。PIMCOをはじめとして米国の金融機関でマクロ経済、市場分析に従事し、2013年より現職。2005年マサチューセッツ工科大学(MIT)学士課程卒、2008年スタンフォード大学修士課程卒。CFA協会認定証券アナリスト。石川県小松市出身。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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