December 26, 2018 / 3:22 AM / 5 months ago

コラム:止まらない株安、裏にある投資家の「同質化」=嶋津洋樹氏

[東京 26日] - 世界的な株安に歯止めがかからない。12月26日の日経平均は一時的に戻しているものの、震源地である米国の主要株価指数は24日まで4営業日連続で下落し、落ち込み幅は8%前後に達した。

 12月26日、MCPチーフストラテジストの嶋津洋樹氏は、相場が一斉にリスク回避に動く投資家の「同質化」は、2018年初めから顕著だったと指摘。写真は米ニューヨーク証券取引所。12月19日撮影(2018年  ロイター/Brendan McDermid)

その原因としてまず挙げられるのは、主要国の景気が減速しているにもかかわらず、中央銀行が金融政策の正常化を継続する姿勢を維持していることだろう。また、欧米の市場参加者の多くが休暇に入って取引量が減る中、残っているのは10月以降の株価下落で敗戦処理を余儀なくされているファンドや、年末年始に向けてリスクを取りにくい国内投資家などに限られるという要因もある。

そこへトランプ米政権の混乱が重なった。しかも、今回浮上したのは連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長とムニューシン財務長官という、米国の金融・財政政策に携わる高官の進退が絡む憶測だ。それと前後して、マティス国防長官の退任とその時期の前倒しも発表された。

これまでもトランプ大統領の政策運営は、市場参加者の目には場当たり的に映ってきた。それを踏まえれば、多くの投資家がしばらくリスクを避け、様子を見ようと判断するのは合理的と言えるだろう。

とはいえ、多くの市場参加者が同じ方向を見ていることには違和感も覚える。冬季休暇のタイミングでリスクに手を出しにくい、という点を勘案してもその違和感は変わらない。

<進む予測の保守化>

振り返れば、こうした投資家の「同質化」は2018年初めから顕著だった。誰もが新興国株と欧州株の上昇、米長短金利の差が開くイールドカーブのスティープ化を予想していた。しかし、アルゼンチンで金融市場の動揺が深刻化し、英国のEU(欧州連合)離脱やイタリアの2019会計年度の予算案を巡る不透明感が強まると、今度は見方が逆方向に一変した。

ほぼ同じタイミングでトルコや南アフリカの金融市場が不安定化したこともあり、新興国株を含むリスク資産への悲観論は一気に拡大した。このほかにも、ユーロ圏の景気見通しが一斉に悲観的なものに転じたり、フェイスブック(FB.O)など「FANG」銘柄に象徴される米ハイテク株への強気な見方が突然終わりを迎えたりした。

もちろん、市場参加者が同じ見通しを持つことはコンセンサスと言われ、それほど珍しい事象ではない。それでも筆者は、その形成速度、金融市場に広がる浸透スピードが日に日に増していると感じている。市場参加者の横並び意識が強まっていること、さらにはリスクに対する過剰なまでの回避姿勢が関係しているのではないだろうか。

筆者自身が常に経験していることだが、経済や金融市場の現状を調査・分析し、先行きを考える仕事は、楽観シナリオと悲観シナリオを示すときの心理負担が大きく異なる。というのも、景気回復や株価の大幅な上昇を見通せなくても批判されることは少ないが、金融危機や景気後退、株価の大幅な低下といったネガティブな見通しを予測できないと風当たりが強くなりがちだからだ。

逆に、ポジティブな見通しは当たって当然と思われがちなのに対し、ネガティブな見通しは当たらなくても、警鐘を鳴らしたと評価されることさえある。

結果として、見通しは常に保守的で慎重なものにならざるを得なくなる。そうした流れはリーマン・ショック以降、さらに強まったと感じている。株価指数に連動した運用成績を目指すパッシブ運用の流行や、アルゴリズム、人工知能(AI)を使った取引の台頭、業界内の競争の激化も、慎重な見通しを促している要因だろう。

<2019年も振れ幅大きい展開に>

筆者は、市場参加者がより積極的にリスクを取るべきだと主張しているわけではない。しかし、予測が外れることを恐れて周囲の動きに合わせ、自身で判断することを避ける傾向が強まっていることは否めない。冬季休暇で参加者が減少している今のタイミングで、それが一気に顕在化したことが、大幅な株安の一因になっていると筆者はみている。

トランプ大統領の政策が場当たり的に映るのは、ときに正論や事実を述べることがあっても、自身の正当性を主張するために事実かどうか明らかではないことを並べ、人々の感覚や印象に訴えているように見えるからだ。米国内では、民主主義の根幹を揺るがしかねない危険な戦略との批判も聞かれる。

一方、金融市場で強まるリスク回避の傾向も、市場参加者が起きている事象の事実を確認しないまま、市場参加者が周囲の動きに合わせて投資判断をしている結果と言える。見通しが外れても批判を受けにくいかもしれないが、2018年を通して金融市場で見られた通り、すべての市場参加者がリスク回避に走るならば、上昇も下落も振れ幅が急激かつ大きくなりやすい。それは金融市場の機能を揺るがしかねない。

2019年の金融市場を展望する上で、市場参加者の見通しが極端かつ一方向に振れやすいという傾向は頭に入れておくべき要素となりそうだ。つまり、急速にリスク志向が強まる局面と、それが一気に逆流する局面とが混在する、荒れた相場展開が続くことを意味する。

(本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

(編集:久保信博)

嶋津洋樹氏(写真は筆者提供)

*嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントなどを経て2016年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネジャーとしての経験を活かし、経済、金融市場、政治の分析に携わる。共著に「アベノミクスは進化する」(中央経済社)

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