May 23, 2019 / 7:45 AM / 3 months ago

コラム:消費増税延期なら円高・株安か=亀岡裕次氏

[東京 23日] - 世界的な景気減速への懸念がある中で、日本の消費税は予定通りに引き上げられるのか、それとも先送りされるのか。

A Japan Yen note is seen in this illustration photo taken June 1, 2017. REUTERS/Thomas White/Illustration

見方は分かれるところだが、政府が24日に示す5月の月例経済報告で、景気の総括判断が下方修正されるか否かが材料の1つとして注目される。本稿では、消費増税が先送りされた場合に為替と株がどのように動く可能性があるのかを考える。

<過去2回のパターン>

安倍晋三政権下での過去2回の増税延期に対し、金融市場はそれぞれ正反対の反応を示した。

1回目の延期は2014年11月18日だ。もともと15年10月に消費税率を8%から10%に引き上げる予定だったが、14年4月の5%から8%への増税で個人消費が落ち込んだことなどを理由に、10%への引き上げを17年4月まで先送ることを決定した。

その際、市場は円安・株高方向に動いた。前日に116円台だったドル/円は12月5日にかけて121円台へ、1万6973円だった日経平均株価は12月8日にかけて1万7935円へと上昇した。

2回目の増税延期は2016年6月1日だ。新興国経済が落ち込み、世界経済が大きなリスクに直面していることなどを理由に、政府は消費税10%への引き上げを17年4月から19年10月まで延ばすことを決定した。

その際は逆に、円高・株安方向に動いた。前日に110円台だったドル/円は7月8日にかけて100円台へ、1万7234円だった日経平均は6月24日にかけて1万4952円へと下落した。

<日銀金融政策と内外景気が左右>

相場に明確なコントラストが生じた理由の一つは、増税延期に先立って日銀がそれぞれ打ち出した金融政策に対し、市場が異なる反応を示していたことだ。

14年10月31日に日銀が量的・質的金融緩和の拡大を決定し、長期国債保有残高の増加ペースを年間30兆円増の80兆円に積み増したことを受け、市場では円安・株高が進んでいた。

一方、2度目の延期前の16年1月29日、日銀はマイナス金利の導入を決定した。金融機関が日銀当座預金の保有拡大を抑制することで、日銀の長期国債買入が進みにくくなるとの見方が浮上し、市場は円高・株安に振れた。消費増税を延期しても、もともと円高傾向が変わりにくい流れだったと言える。

もう一つの理由は、経済成長に強弱があったことだ。

例えば、50を景気拡大と後退の分岐点とする米供給管理協会(ISM)製造業景況指数(PMI)は、14年5月―10月の6カ月平均が56.0、15年11月―16年4月の6カ月平均が49.5。ゼロを超えると経済成長が過去の平均を上回っていることを示すシカゴ連銀の全米経済活動指数(CFNAI)は、14年5月―10月の6カ月平均がプラス0.13、15年11月―16年4月の6カ月平均がマイナス0.33だった。

つまり、14年の米国経済はトレンドを上回る成長ペースであったのに対し、16年は下回る成長ペースで、景気減速が懸念される状況にあった。そのため、16年は日本が消費増税を先送りしても景気が上向くとの期待が高まりにくく、リスクオンの円安・株高へ相場の流れが変化しにくかったと言える。

実際の結果を振り返ると、14年は日本の実質国内総生産(GDP)成長率(前期比年率)が7―9月期のプラス0.3%から10―12月期のプラス2.0%へと加速した。国内民間最終需要は7―9月期のプラス2.0%から10―12月期のプラス1.2%へとやや減速したものの、「プラス成長」を続けた。

これに対し16年は、実質GDPが1―3月期のプラス2.7%から4―6月期のプラス0.4%へ、国内民間最終需要も1―3月期のプラス0.7%から4―6月期のマイナス1.7%へと急減速し、「マイナス成長」に転じた。やはり16年は、日本経済の減速が懸念されていたために消費増税を延期しても円高・株安が進んだと言えそうだ。

<金融政策は中立、景気はマイナス>

では、今年10月に予定されている消費増税が先送りされた場合、市場はどのように動くだろうか。まず、日銀による追加金融緩和はその余地や期待が小さく、金融政策は為替や株価にとって中立的に作用しやすいだろう。

米ISM製造業景況指数は、18年11月―19年4月の6カ月平均が55.3であり、水準こそ低くはないが、18年11月の58.8から19年4月の52.8へ明確に低下している。また、全米経済活動指数は、18年11月―19年4月の6カ月平均がマイナス0.15とマイナス水準にあり、3カ月移動平均が18年11月のプラス0.11から19年4月のマイナス0.32へと低下している。

つまり、米経済の成長ペースはトレンドを下回っているうえ、減速傾向にある。ここに米中貿易摩擦の悪影響が加わるため、成長は加速より減速するとの見方が優勢になりやすいだろう。

一方、日本の実質GDP成長率は18年10―12月期のプラス1.6%から19年1―3月期のプラス2.1%へと加速したが、需要が上向いたわけではない。GDP成長が加速した最大の要因は、純輸出の成長寄与度がマイナス1.2%からプラス1.6%へと大きく上昇したためで、輸出の減少を超える輸入の減少によるものだ。

また、民間在庫増減の成長寄与度がプラス0.2%からプラス0.5%へと上昇したこともGDP成長の加速要因であり、これを除く国内民間最終需要の成長寄与度はプラス2.3%からマイナス0.3%へと急減速した。

つまり、輸入減と在庫増に支えられて国内総生産が増えたのであり、国内最終需要と海外需要(輸出)はともに減速している。日本経済の成長が加速するとの見方より、減速するとの見方が優勢になりやすいだろう。

世界的に景気は減速に直面している国が多く、金融市場もそう受け止めているとみられる。この状況で日本政府が消費増税を先送りしても、国内外の景気減速懸念は払拭されにくいはずだ。

従って、今年10月の消費増税が延期された場合には、14年11月のような円安・株高よりも、16年6月のような円高・株安に振れる可能性が高いと考えられる。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

亀岡裕次氏(写真は筆者提供)

*亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。

(編集:久保信博)

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