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コラム:ドル円の鍵は自公圧勝より次期FRB議長人事=佐々木融氏
2017年10月23日 / 09:37 / 1ヶ月後

コラム:ドル円の鍵は自公圧勝より次期FRB議長人事=佐々木融氏

[東京 23日] - 22日投開票の衆院選は、自民党が公示前に迫る280台の議席を獲得し、公明党と合せて465議席の3分の2を維持した。予想を上回る与党圧勝を受け、自民党内における安倍晋三首相の求心力が高まり、来年9月の自民党総裁選にも勝利し、2021年まで首相を続けることが現実味を帯びてきた。政治の安定が続き、アベノミクスが継続されることが明確になった点は、市場にとって好材料だ。

ただし、安倍政権維持はほぼ市場に織り込まれていたと考えられることから、円相場や株式市場にとっては、円売りや日本株買いを躊躇(ちゅうちょ)する懸念材料が1つなくなった程度ととらえた方が良いかもしれない。

そもそも北朝鮮情勢も最近動きがないことから、リスクテーク志向は強まっている。海外投資家にとっては、円をより売りやすい状況になってきたと言えるだろう。前回のコラムでも指摘したように、世界経済は非常に安定した成長を遂げており、余計な心配事がなくなれば、最適な資本調達通貨である円はおのずと売られやすくなる。

もちろん、細かく見れば、2019年10月の消費税率引き上げをにらんだ動き、緩み始めた財政規律の影響、今回の選挙結果から勢いづきそうな改憲論議など、中長期的には日本経済や円相場に影響を与えそうな材料はあるが、どれも短期的な影響があるとは考えづらい。

もし、あるとすれば、金融政策に対する思惑かもしれない。安倍政権の継続が確実となり、金融政策の急転換は極めて考えにくくなった。イールドカーブ・コントロールのフレームワークも当面維持されることになるだろう。また、2%のインフレターゲットも維持されると考えるのが妥当だろう。

しかし、黒田東彦総裁の任期は来年4月まで、中曽宏、岩田規久男両副総裁の任期は来年3月までであり、仮に交代ということにでもなれば、年末に向けて日銀のトップ3人の後任人事が材料として持ち上がってくる可能性はある。その場合、わずかであっても、日銀の金融政策に関するファインチューニング(微調整)の思惑が強まる可能性は排除できない。

<先週のドルはなぜ最強通貨だったのか>

このまま日経平均株価が堅調に推移し、円相場も実効レートベースでの円安が続けば、日銀が日本国債購入のめどとしている「80兆円」に関する言及を止めたり、イールドカーブ・ターゲットの10年金利の変動許容幅を拡大したり、上場投資信託(ETF)の購入額を柔軟化したり、といったファインチューニングを行ってくる可能性は考えられる。

もっとも、この程度のファインチューインングが円相場の方向性に大きな影響を与えることはないのではないか。繰り返すが、現在の世界経済は非常に安定しており、投資家のリスクテーク志向はかなり強い。従って、ユーロ、豪ドル、英ポンドといった米ドル(以下ドル)以外の主要通貨に対する円安は続くだろう。当社が算出する円の名目実効レートは2016年2月以来の安値を更新しながら軟調に推移している。

ただ、ドル円相場に関しては、円よりもドルの動きに注目すべきだ。先週1週間、ドル円相場は111円台半ばから113円台半ばまで上昇したが、その間の主要通貨の騰落率を見ると、ドルが最強通貨となってドル円相場の上昇をサポートした。

先週ドルを押し上げた要因は、2つの期待の高まりだ。1つは、タカ派と目されるテイラー・スタンフォード大学教授が米連邦準備理事会(FRB)の次期議長になるとの期待。もう1つは、米上院が予算の大枠となる予算決議案を可決したことで高まった税制改革に対する期待だ。

米税制改革に関しては市場の期待がやや先走り過ぎている感もあり、今後まだ紆余曲折が予想される。問題は今週から来週初めにも発表される可能性が高い次期FRB議長の方かもしれない。

フェデラルファンド(FF)金利先物が織り込む年内の米利上げ期待は先週1週間で0.76回から0.84回に上昇、来年末までの利上げ期待は2.02回から2.30回に上昇し、それに沿う形でドルが買われ、ドル円を押し上げてきた。次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が公表される11月1日まではブラックアウト期間に入っているので、FRB高官からの発言はない。

30日に公表される9月の個人消費支出(PCE)価格指数、31日の第3四半期雇用コスト指数以外にはFRBの利上げに大きく影響しそうな経済指標もない。従って、誰が次期FRB議長として発表されるかがドルの行方を左右しそうだ。

また、2013年から2016年まで4年連続で、年末の2カ月間にドルが名目実効レートベースで比較的大きく上昇していることにも留意する必要があるかもしれない。特に過去4年間の11月のドル平均上昇率は2.1%と12月の0.9%の倍以上となっており、11月のドルの強さが目立っている。

年初からほぼ一貫して下落傾向を続けてきたドルは9月中旬頃から反発を始めているが、これが次期FRB議長や政策に対する期待で一時的に反発しているだけなのか、それとも過去4年間と同じような季節性とも思えるドルの強い上昇が今年は早めに始まっているのかが注目される。

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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