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コラム:弱い円と弱いドル、来年もレンジ相場に出口なし=佐々木融氏
November 22, 2017 / 7:29 AM / 19 days ago

コラム:弱い円と弱いドル、来年もレンジ相場に出口なし=佐々木融氏

[東京 22日] - 2017年のドル円相場は、年初の118円台から下落し、一時は107円台をつける場面もあったが、基本的にはほとんどの時間を108―115円のレンジ内で推移した。今年のドル円の値幅は今のところ9.6%程度にとどまっている。

1980年以降、ドル円相場が10%以下のレンジにとどまったことは今年を含めて4回しかない(年間平均レンジは17.7%)。従って、今年のドル円相場は、歴史的にみても、かなり狭いレンジ内で推移したと言うことができるだろう。

年初来でみると、今のところ主要10通貨の中でドルは2番目に弱い通貨となり、円は4番目に弱い通貨となっている。つまり、ドルも円も弱い通貨となったことによって、ドル円相場が狭いレンジ内にとどまったと言えそうだ。

来年についても、ドル、円ともに引き続き弱い通貨になることで、ドル円相場は今年同様狭いレンジ内で推移すると考えている。108―115円のレンジ内で上下動しつつ、徐々に上値は重くなっていくとみているが、来年末のドル円相場は112円と、現在とほぼ変わらない水準を予想している。

ドル円相場は過去に2年続けて10%以下のレンジにとどまったことはないが、世界経済や市場の環境を考えると、2年連続での狭いレンジとなる可能性は高いとみる。

当社エコノミストチームは、来年の世界経済の成長率は今年と同水準の前年比プラス3.2%になると予想している。2011年から2016年までの過去6年間、世界の経済成長率は2.6%から3.2%の非常に狭いレンジで推移してきた。このように長い間安定した成長を続けたことは、データをさかのぼっても見当たらない。

2017年も2018年も3.2%成長になると、結果的に非常に狭いレンジでの成長率が8年間続くことになる。

<来年4回利上げでもドル下落濃厚>

こうした安定的な世界経済、つまり過熱せず冷め過ぎてもいない「ゴルディロックス(適温)経済)」が2018年も続くのであれば、2017年と同様に円は弱い通貨にとどまると考えられる。円は典型的な資本調達通貨であり、世界経済が安定している状況下では、売られる方の通貨となる。

それに加え、日銀のイールドカーブ・コントロールが功を奏して、本邦投資家による対外証券投資に伴う円売りもかつてないほどの金額に上っていると考えられる。当社の試算では、2017年の本邦投資家による対外証券投資に絡む円売り額(ヘッジ付と思われる分を控除)の推計値は10月までですでに14兆円を超えた可能性がある(2015年と16年の同推計値はそれぞれ17兆円と14兆円)。

来年のドル円見通しに関しては、意見が分かれるのは円よりも、ドルの見通しかもしれない。当社は、今年に続いて来年もドル安になると予想している。ドルは来年末までに対スウェーデン・クローナで10%、対カナダ・ドルで6%、対ユーロで5%、対英ポンド、スイス・フラン、ノルウェー・クローネで1―2%下落するとみている。

実は、当社は来年、米連邦準備理事会(FRB)が4回も利上げを行うと予想しているが、それでもドルは下落するとみているのだ。

市場では、FRBの利上げに伴って来年こそドルは上昇するだろうとの見方は多いかもしれない。しかし、ここで指摘しておきたいのは、今年もFRBは2回利上げをしているが、それでも今年のドルは主要10通貨の中で2番目に弱く、名目実効レートベースで6%も下落しているということだ。

<ドル円はレンジ、クロス円の多くは円安へ>

また、経験則的にFRBが利上げをするからドルが上昇するとは言えない。前回のFRBの利上げは2004年6月から2006年6月までの2年間にわたったが、その間のドル名目実効レートは最初の利上げ時点がほぼピークで、その後はずっと軟調に推移している。前回の利上げ局面の2年間の主要通貨騰落率をみると、ドルは主要10通貨中で3番目に弱い通貨だった。

FRBが利上げを行えるということは世界経済が堅調に拡大していることを意味する。従って、ドルは円とともに資本調達通貨として弱くなるのである。FRBの利上げに絡んでドルが上昇するのは、利上げ開始までの時が多い。利上げが始まると、ドルはそれほど上昇しなくなる。

金利が上昇するのだから、金利差拡大でドル円相場が上昇するとの見方もあるかもしれない。しかし、例えば今年の日米2年スワップ金利差は145ベーシスポイント(bp)程度から足元は185bp程度まで40bpも拡大している。それでも、今年のドル円相場は逆に下落しているのだ。

ドル円相場との相関をそれなりに維持したのは日米10年金利差の方だ。今年、日米10年国債金利差は240bp程度から一時は200bp近辺まで縮小し、現状は230bp程度のところにある。ドル円と比較的同じような動きをしている。

では、来年の米国10年金利の予想はどうか。以前にもこのコラムで指摘したことがあるが、FRBが利上げをするからと言って米10年国債金利が上昇するわけではない。前回の利上げ局面では、米10年国債金利はFRBが利上げを始めたところが当面のピークとなり、その水準を明確に超えて上昇したのは、FRBが350bpも利上げを行った後だった。当社の金利ストラテジストチームは、来年は日本の長期金利上昇を主因に、日米10年国債金利差が縮小すると予想している。

世界景気が拡大を続け、ドルが資本調達通貨として売られるなか、トランプ政権の保護主義的な姿勢、市場の失望を招く可能性が高い米税制改革、ロシアゲート疑惑なども考慮すると、来年もFRBが利上げを行ったとしても、ドルは引き続き円と同じように弱い通貨になるとの予想は合理的と考えている。その結果、ドル円相場はレンジ、クロス円の多くは円安となるだろう。

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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