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コラム:ジャクソンホール後のドル相場シナリオ=佐々木融氏
2017年8月24日 / 08:09 / 3ヶ月後

コラム:ジャクソンホール後のドル相場シナリオ=佐々木融氏

[東京 24日] - カンザスシティー地区連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)が24日に開幕し、25日にはイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長とドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が講演を行う。イエレン議長の講演は日本時間25日午後11時、ドラギ総裁の講演は同26日午前4時からとなる予定だ。

イエレン議長の講演テーマは「金融の安定」であり、そこから大きくそれて話が展開するとは考えにくいが、講演の方向性に関しては、以下の3つのパターンが想定される。

まず、イエレン氏がFRB副議長だった2011年6月に示した見解、つまり「金融の不均衡を予防するのに金融政策を用いるのは最後の手段であるべき」という考え方を繰り返すパターンだ。

これは、例えば資産バブルに対処するために利上げを行うのは最後の手段とするべきという意味にもなる。こうした考え方を強調することは、今年の追加利上げの必要性を低下させることになり、ハト派的な内容と受け止められるかもしれない。

次に、今年6月にフィッシャーFRB副議長が示した見解、つまり、金融政策の役割には触れずに、最近の規制レジーム強化を強調するにとどまるパターンだ。この場合、金融政策に対するインプリケーションはほとんどなく、中立的な内容と受け止められるだろう。

3番目は、前回7月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の内容に沿って、FRBは緩やかな金融緩和政策の解除によって、バランスを適度に保ちながらマンデート(インフレ目標と完全雇用の達成、金融市場の安定化に対する懸念の緩和)を果たすことができるとの見解を繰り返すパターンだ。これはある程度タカ派的に受け止められるかもしれない。

当社は2番目のパターン、つまり中立的な内容をメインシナリオと考えている。イエレン議長は過去2回のジャクソンホール会議での講演で、金融政策にはあまり触れず、学術的なテーマに的を絞ってきた。議長はジャクソンホールを金融政策のシグナルを発する場にはしたくないと考えている可能性がある。2番目のパターンの次に可能性が高いのは、ややタカ派的な内容と受け止められる3番目のパターンだろう。

もっとも、ジャクソンホールでのイエレン議長講演は前回、前々回とも、特に金融政策の方向性を示すものではなかったにもかかわらず、その発言をきっかけに長期金利、ドルともに上昇した。

過去2回の動きをみると、市場はすでにどちらかに動く準備ができていて、ジャクソンホールでイエレン議長が発言を行うのを待っていただけだったのかもしれない。仮に今回も同じだとしたら、市場はどちらに動く準備ができているのだろうか。上記3つのパターンの範囲内であれば、どちらに動くかは議長講演の内容とは関係ないかもしれない。シナリオは2つ考えられる。

<ドルは短期上昇も、対円では下落方向か>

第1のシナリオは、米長期金利、ドルともに一段の低下の準備ができており、イエレン議長発言後に下げ足を速めるというものだ。

米10年国債金利は徐々に上値を切り下げながら、今年6月につけた、トランプ大統領当選以来の低水準となる2.1%に近づきつつある。ドルは実効レートベースでは昨年5月以来の水準まで下落しているが、ドル円相場は4月につけた年初来安値108.13円を目前にサポートされている。

足元のドル円の水準は、直近のピーク114.49円をつけた7月11日以降の日米10年金利差との相関に照らすと、ほぼ整合的だ。米10年債金利があと3―4ベーシスポイント(bp)低下すると、ドル円は年初来安値108.13円を下抜ける計算になる。また、米10年債金利がレンジ下限の2.1%に達すると、107円台前半まで下落する計算になる。

第2のシナリオは、米長期金利、ドルともに反発の準備ができており、イエレン議長発言後にその方向に向かうというものだ。

米10年国債金利も、ドルも下降トレンドが続いている。そろそろ短期的な調整だとしても、いったんは反発局面入りしてもおかしくない。また、市場はイエレン議長がハト派的な発言を行うことを警戒して、米債の売り戻し、ドルの買い戻しを控えているだけなのかもしれない。

正直なところ、短期的な反応を予想するのは難しい。筆者は引き続き中長期的なドル下落を予想しており、ジャクソンホールでイエレン議長が強烈にタカ派的な発言(前述した3番目のパターンを上回るタカ派的な発言)でもしない限り、そうした予想を変える必要はないと考える。

ただし、過去2回の経験則からは、短期的にドル円のボラティリティーが上昇する可能性は高いとは言えるかもしれない。

前述した通り、イエレン議長発言の内容に関するメインシナリオは中立だが、その次に可能性が高いとみられるのは、タカ派的と受け止められるパターンだ。したがって、ごく短期的な市場の反応としては、米長期金利上昇、ドル上昇の公算がより大きいと言えるのかもしれない。ただ、この場合でも、来年末までの利上げ予想に大きな変化が生じるとは思えず、動きはごく短期的かつ限定的なものとなるだろう。

一方、ドル円相場については、年初来安値が近づいていることを踏まえると、25日のイエレン議長発言を受けて変動幅が大きくなるのは下落方向ではないかと考える。

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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