April 5, 2018 / 3:15 AM / 13 days ago

コラム:ドル100円招く米利上げ停滞と日米関係悪化シナリオ=上野泰也氏

[東京 5日] - 年初来のドル円相場の値幅は4月4日時点で9円近くに達している。今年のドル高値(円安値)は、1月8日のロンドン市場でつけた113.37円(113.39円としている情報画面もある)。ドル安値(円高値)は、3月2日のオセアニア市場でつけた104.56円。したがって、値幅は8.81円である。

少なくとも外形的には、1月8日に112―113円台で推移していたドル円が円高の流れに入っていくきっかけになったのは、翌9日に日銀が突然実施した超長期ゾーンの国債買い入れ計200億円減額だった。1月24日にはムニューシン米財務長官がドル安容認とも受け取れる発言を行って、ドル売り材料になった。

2月に入ると、米1月分雇用統計で時間当たり賃金の前年同月比上昇率が加速したことが材料視されて「ゴルディロックス(適温)相場」が揺さぶられ、米国の主要株価指数が急落。市場全般が「リスクオフ」に傾斜する中、3月にかけて、逃避通貨である円が急伸した。

投機筋が積み上げた円売りポジションは、上記と並行して急速に解消された。米商品先物取引委員会(CFTC)が原則として毎週末に公表している円通貨先物(ドル円)の非商業部門(投機筋が多いとされる)の建玉バランス(ロング-ショート)は、1月2日と9日の時点では12万枚を超える大幅な売り越しだった。

だが、3月30日に公表された27日時点の数字は3668枚の売り越しにとどまった。この売り越し幅は2016年11月29日(269枚)以来の小ささである。その2016年11月というのは、相場の流れで大きな分岐点になった米大統領選の投開票が行われた月だ。

4月5日のドル円相場は3月28日に続き、107円台までドルが反発したが、ドル売り円買い圧力は依然根強い。投機筋が円ショートポジションのカバー(円の買い戻し)をほぼ終えたので円高圧力は一巡しており、円を売り直す動きがこの先出てくるのではないかという見方が市場にはある一方、この先は建玉バランスが円の買い越しに転じていくのではないかという見方も成り立つ。ちなみに、2016年は1月5日から11月22日まで、非商業部門の建玉バランスは一貫して円の買い越しだった。

<次に意識すべきポイントは101―102円台>

現在のドル円相場には、2つの面から円高ドル安プレッシャーがかかっていると、筆者は整理している。

第1は、米国の利上げ路線がこの先、遅かれ早かれ行き詰まりそうであること。今年は利上げ4回との見方も市場にはある、だが、仮に実際そうなった場合は、米国株が一段も二段も下落するのみならず、リセッションが手前に引き寄せられてしまうだろう。

米国債のイールドカーブを見ると、10年債と2年債の利回り格差は直近で一時50ベーシスポイントを下回っており、単純に考えればここからあと2回利上げすると、長短金利逆転という「リセッション・シグナル」が出てしまう。市場では完全に少数説になっているものの、年内の利上げはあと1回(計2回)にとどまるという見方を筆者は維持している。

第2は、11月の中間選挙をにらんで展開されているトランプ米政権の保護主義策である。経済政策としての合理性よりも、中間選挙で共和党の議席の減り方を最小限にとどめて政権の求心力を任期後半も維持する、下院による大統領弾劾訴追を回避することの方が、トランプ大統領にとって優先度がはるかに高い。大統領は4月中旬の日米首脳会談で、日本に対して自由貿易協定(FTA)の締結を求めてくるのではないか。

米国と韓国が合意したFTAには、競争的な自国通貨切り下げをタブーとする為替条項が盛り込まれていた。また、安倍晋三首相があくまで米国の環太平洋連携協定(TPP)参加を促す姿勢をとり続けて日米FTA交渉入りを拒否する場合、日米関係悪化が内閣支持率を押し下げる可能性もある。仮にそうなれば「アベノミクス」の先行き不透明感につながり、円高の材料になる。

心理的な節目である105円の先のポイントとして市場が意識しやすいのは、米大統領選の結果が明らかになった2016年11月9日の東京市場で市場が一時的にドル売りに動いた場面で記録された101.19円とみられる。

1985年から2017年まで33年間のドル円の年間値幅の平均値は21.8円。2000年から2017年まで18年間の平均を計算すると16.0円である。ただし、2010年から2017年までの8年のうち半分の4年(11年、12年、15年、17年)は、年間の値幅が10―11円台にとどまっていた。近年は値幅が狭い年が出てきやすいと言える。

今年の値幅が昨年と同じ11.28円になると仮定すれば、円高ドル安がさらに進む方向へと年間レンジがあと2.47円拡大するとみるのが自然であり、その場合、ドル円は102.09円をつけることになる。

筆者は、それよりももう少し円高ドル安が進む余地があるとみており、今年1年間の予想レンジ下限は、年初に設定して公表した100円のままである。

*4月5日の為替レートを更新して再送します。

*上野泰也氏は、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト。会計検査院を経て、1988年富士銀行に入行。為替ディーラーとして勤務した後、為替、資金、債券各セクションにてマーケットエコノミストを歴任。2000年から現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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