December 13, 2017 / 4:02 AM / a month ago

コラム:2018年の為替相場、主役はユーロか=山口曜一郎氏

[東京 13日] - 師走に入り、ここ最近は、2017年の為替相場の着地見込みと、2018年の見通しについて問い合わせを受けることが多くなっている。年末水準については、2017年夏に、ドル円が110円割れ、ユーロドルが1.2000ドルを上抜けるという状況下で、1ドル=114円、1ユーロ=1.1900ドルという見通しを出したのだが、足元ではおおむねその展開となっていることから、ほっと一息ついているところだ。

そうしたなか、2018年の見通しについては、ドル円が年央に118円まで上昇したあと、年末にかけて反落する一方で、ユーロドルは年前半に1.2ドル台が定着したあと、年末にかけて1.25ドル超えまで上昇する局面があるとみている。この見通しを述べると、特にユーロドルに関して質問を多く受けるため、今回はユーロを中心に話をしてみたい。

<1ユーロ=1.2ドル台定着の条件>

2018年のユーロドル相場を予想するのに、筆者は2つの大きな視点を持っている。まず、1つ目の視点は、2017年初頭と半ば以降ではユーロに対する見方が劇的に変わったが、それが持続的なものとなるにはもう少し時間が必要、という点だ。

2017年の最大のリスクはフランス大統領選挙と言われていたように、年初のユーロ圏では反欧州連合(EU)、反エスタブリッシュメントの嵐が吹き荒れ、政治リスクが欧州の金融市場の重しとなっていた。ユーロ圏経済自体は着実に回復し、デフレリスクも大きく後退していたのだが、政治動向次第で景気が再び悪化する危険性が排除できなかったこともあって、人々の懸念はもっぱらダウンサイドにあった。

しかし、4月、5月の仏大統領選挙でマクロン氏が勝利し、その他の国でも反EUや反エスタブリッシュメントの勢いが減退すると、マーケットの関心は良好な経済成長に向かい、中央銀行は金融政策の緩和度合いを調整する方向に舵を切り始めた。また、同じ時期に、イタリアなど一部の国でくすぶっていた銀行問題も改善に向かったこともあり、経済成長、中央銀行の政策姿勢、政治的不透明性、銀行不安、という4つの要因が全てユーロ上昇をサポートする材料となった。この点で、ユーロの為替レートは新しいステージに入ってきていると言っていいだろう。

ただし、1ユーロ=1.2000ドルという節目をクリアに抜けるには、2つほど条件がある。1つは欧州中銀(ECB)の非伝統的金融政策の縮小開始、もう1つは急速な通貨高に対する時間的あるいは水準的な調整の必要性だ。

1999年のユーロ創設以来のユーロドルのチャートを見ると、同年1月1日に1ユーロ=1.17ドル台で始まったのち、ユーロという通貨に対する信認の弱さや、ギリシャ加盟への疑問などから、一時0.82ドル台まで下落した。しかし、徐々にユーロ圏と通貨ユーロの信認が回復していくと、節目の1.2000ドルを上抜けて、2008年半ばの1.60ドルまで上昇を続ける。

この後、リーマン・ショック、ギリシャ債務問題に端を発したユーロ危機が続くと、再びユーロドルは売りを浴びることになるのだが、1.2000ドルの節目ではサポートされ続けた。しかし、2014年6月にECBがマイナス金利導入を決定し、さらに2015年1月に資産購入プログラムを発表すると、1.20ドルを大きく下回り、一気に1.05ドルまで下落する展開となった。仏大統領選挙次第では1ユーロ=1ドルのパリティを割れる恐れもあったが、その展開は回避され、前述の4つの要因を背景に、急速に1.20ドル水準を回復してきている。

しかし、ECBの非伝統的手段によって1ユーロ=1.20ドルを大きく割れてきたことを考えると、少なくともこの水準からさらに上昇するには、非伝統的手段の縮小が必要だと考える。2018年1月から資産購入額が月額600億ユーロから同300億ユーロに減額されると、この条件を一部満たすことになるとみる。

また、急速な通貨高は外需にマイナスの影響を及ぼすほか、輸入物価の下落を通じてユーロ圏のインフレに下押しの圧力を与える可能性がある。それらの影響が軽減されるには、幾分の時間調整あるいは水準調整が必要だろう。これもユーロドルの再上昇が2018年にずれることを示唆する。

<外貨準備に占めるユーロの割合に要注意>

2つ目の視点は、中央銀行の外貨準備を含めた通貨ポートフォリオへの影響だ。筆者が為替レートの予想をする際に用いる計量モデルはいくつかあるが、欧米金利、中央銀行のバランスシート、経常収支といった要因で推計した場合、必ずしも1ユーロ=1.20ドルを大きく抜けていく数値は出てこない。

実は、モデルで説明できないユーロドルの上昇は2003―2004年にもあった。当時、大きな役割を果たしたのは、中銀が保有する外貨準備の通貨構成の変化だった。ユーロという通貨に対する信認度合いの不確かさから、2000年には外貨準備に占めるユーロの割合が一時17%まで低下したが、2003年末には25%まで回復した。

ユーロドルはその間、金利差などでは説明できない上昇を見せており、外貨準備に占めるユーロの割合を引き上げるためのユーロ買いが起こっていたと考えられる。実際に外貨準備の要因を加えると、ユーロドルの上昇は説明しやすくなる。

その後、2009年にはユーロの割合が28%まで上昇していたが、ユーロ危機や年初頭の政治リスクなどの影響から、足元では再び20%割れまで低下している。これが20%台前半まで回復するのであれば、ユーロドルが1.20ドルを抜けていくことは十分可能だ。ユーロを取り巻くステージが新たな段階に突入していると考えると、このような通貨ポートフォリオの変更を伴いながら、ユーロが上昇していくと予想する。

今後3カ月から半年程度のより細かな材料を考慮すると、ドイツの連立政権に関するごたごたが解消し、イタリア下院選挙をこなし、緩やかなインフレ上昇を伴う経済活動の改善が実現し、10月以降にはECBによる一段の緩和縮小の観測が高まる、という流れのなかで、ユーロドルは上昇していく展開を予想する。

*山口曜一郎氏は、三井住友銀行市場営業統括部長で、ヘッド・オブ・リサーチ。1992年慶應義塾大学経済学部卒業後、同行入行。法人営業、資本市場業務、為替セールスディーラーを経て、エコノミストとして2001―04年にニューヨーク、04―13年ロンドンに駐在。ロンドン大学修士課程(金融学)修了。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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