July 9, 2015 / 8:28 AM / 3 years ago

コラム:序章の中国バブル崩壊、さらなる円高あるか=山口曜一郎氏

[東京 9日] - ギリシャ危機に揺れるマーケットの不安をあおるように、中国株式市場の混乱が続いている。上海総合指数は6月初旬に5000の大台に乗せたが、その後反落。8日は5.9%急落し、9日の本稿執筆時点ではやや戻しているものの、地合いは依然として弱い。

日経平均株価も、ギリシャ危機と中国株下落の不安に押しつぶされる格好で8日に2万円割れし、9日午前も前日比で一時600円を超える下落となった(その後、中国株の下げ止まりを受けてプラス圏に浮上はしたが)。

こうなると、ギリシャも心配だが、中国も心配だ。欧州連合(EU)首脳会議が開かれる12日にギリシャ情勢がヤマ場を迎える前に、中国の状況を確認しておきたい。

振り返ると、ギリシャがEU案を蹴って国民投票の実施を宣言した約2週間前の6月27日、中国人民銀行は追加利下げを決定。貸出金利と預金金利を0.25%ずつ引き下げ、それぞれ4.85%、2.00%としたほか、小規模企業向け金融機関の預金準備率を0.5%引き下げている。利下げは昨年11月、今年3月、5月に続いてすでに4回目であり、かつ追加利下げのペースは速まっている。金融緩和のタイミングとペースを見ていると、経済活動や金融・不動産市場に関して中国政府のコントロールが効かなくなっている雰囲気を感じる。

もともと中国政府は経済成長の鈍化を許容する姿勢を示してはいた。3月の全国人民代表大会(全人代)で成長率目標を7.5%前後から7.0%前後に引き下げたほか、経済構造については、高速成長から中高速成長へ、成長率重視型モデルから質・効率重視の成長モデルへ、供給能力の拡大重視から適正化重視へ、といったいわゆる「新常態」への転換を目指してきた。金融緩和の位置づけも当初は構造改革の側面支援という色が濃かった。

<売りが売りを呼ぶ展開、背景に3つの歪み>

しかし、実態は中国政府の想定以上に景気が減速しているようだ。5月の鉱工業生産は前年比プラス6.1%と、昨年5月の同プラス8.8%から大幅ペースダウン。実体経済を把握するのに有効とされている電力生産量と鉄道貨物輸送量については、5月は前者が前年比プラス3.3%、後者が同マイナス10.9%と弱い。また、相次ぐ金融緩和にもかかわらず、5月のマネーサプライ(M2)の伸びは前年比プラス10.8%と2015年目標の12%前後を下回ったままだ。

不安は不動産市場と株式市場に広がる。先に株式市場について触れると、上海総合指数が5000台に乗せた際、次のような3つの歪みが生じていた。

第1に、上海総合指数の株価収益率(PER)は20倍程度だったが、深セン総合指数のPERは40倍、新興企業で構成されている創業板指数のPERは70倍に達していた。

第2に、中国の株式市場は先進国と比べると規模が小さいため実体経済に与える影響は小さいという見方があったが、中国の株式時価総額の対国内総生産(GDP)比率は昨年末の50%未満から6月のピーク時には100%超の水準に上昇し、米国(140%)や日本(110%)に匹敵するレベルまで急拡大していた。

そして最後に、信用取引残高が2兆元を上回り、株式時価総額の3%超まで増加していた。このような行き過ぎや歪みが生じていたため、売りが売りを呼ぶ展開となっている。

その後、中国証券監督管理委員会(CSRS)が新規株式公開(IPO)の抑制方針を打ち出したり、中国の大手証券会社が1200億元を拠出して大手優良企業の上場投資信託(ETF)を購入したり、中国人民銀行が国内株式市場に潤沢な流動性を供給するとの声明を発表したりしているが、株価の調整は止まらず、中国政府のコントロールは効いていないようだ。この先も調整はすぐには終わらないだろう。各種のテコ入れ策が効いて一時的に反発したとしても、戻り売り圧力が根強く残ると見る。

<住宅市場は年後半から一段と減速か>

次に不動産市場を見ると、2013年にバブル領域に突入したあと、中国当局が不動産規制の強化に動いたことから、住宅価格は2014年にピークをつけ、その後反落に転じた。価格下落を受けて当局は一部規制を緩和し、一線都市と言われる主要都市では価格に下げ止まりの動きが見られるが、全国的には価格下落が続いている。

全国平均は3カ月連続で前年比マイナス6%という状況だ。都市移住者などによる住宅需要は根強く、不動産市場の調整は一時的というのが中国当局および強気派の見方だが、足元で下げ止まりの動きを見せている一線都市についても、再び住宅価格の下落が始まる可能性は排除できない。

また、価格下落が消費者マインドにマイナスの影響を及ぼす可能性がある。中国政府が望む水準で住宅価格の下落を止めることが可能なのか、消費者への悪影響を政府がコントロールできるのか、という点に疑問が残る状況だ。

こうした状況を踏まえ、さらに次の2点について考えを巡らせてみたい。

まず、中国の不動産市場の調整は終わったと考えていいのだろうか。予想は難しいが、1つの経験則としては、バブルがピークに達するのは懸念の台頭からしばらくしたあと、バブルが弾けるのはさらに一定期間を経てからという展開が考えられる。

例えば、米国の住宅市場に関しては2004年から2005年にかけてオーバーシュート状態に突入したが、その後も住宅価格は上昇を続け、ピークをつけたのは2006年、サブプライム問題で市場が崩れたのは2007年だった。また、スペインにおいては、2006年に住宅市場がバブル状態に陥った兆候が散見されたが、市場がピークをつけたのは2007年から2008年であり、その後、リーマンショック、ユーロ危機の中で住宅市場は大きく崩れた。

中国の住宅市場に対する懸念が台頭したのは2013年で、住宅価格の直近ピークは2014年。中国当局によるコントロールは可能という見方が、下落局面でも市場に安心感を与えている側面があったと考えるが、その見方に疑問が生じている今、下方リスクはじわじわと高まっていそうだ。米国、スペインのケースを手掛かりにすると、中国の住宅市場が一段と減速してくるのは2015年後半から2016年にかけてとなる。

また、足元の中国株の動きがドル円相場に与える影響はどうだろう。海外投資家による中国株投資への制約が存在することを考えると、中国株下落がグローバルな金融市場に与える直接的な影響は限定されそうだ。実体経済を経由した影響については、株価下落が中国の国内消費に悪影響を及ぼし、それが国内経済の減速につながり、外需減退から世界各国の中国向け輸出が打撃を受けるというルートが考えられるが、すぐに顕在化するものではない。よって、ファーストリアクションとしては主にセンチメント経由となるだろう。

ちょうど今月初め、ギリシャの国民投票前に、どういう展開になったらドル円は120円を割れて115円レベルまで下げるだろうかと、尋ねられたことがあった。その時、筆者は「ギリシャのユーロ離脱、中国での株価下落継続と景気失速、米国の景気減速と利上げ中止が全部やって来たら」と答えた。今でもこれら3つが発生するリスクは非常に小さいと見ているが、1週間前と比べて相対的な実現可能性は高まっており、その分、短期的にせよドル円が下落するリスクは高まっている。

突発的に、ギリシャ、中国、米国に関係する悪いニュースが重なった場合、ドル円が120円割れを試しに行く展開には注意が必要だ。

*山口曜一郎氏は、三井住友銀行市場営業統括部副部長兼調査グループ長で、ヘッド・オブ・リサーチ。1992年慶應義塾大学経済学部卒業後、同行入行。法人営業、資本市場業務、為替セールスディーラーを経て、エコノミストとして2001―04年に ニューヨーク、04―13年ロンドンに駐在。ロンドン大学修士課程(金融学)修了。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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