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コラム:ドル安・円高「長期化」の現実味=亀岡裕次氏
November 24, 2017 / 7:32 AM / 17 days ago

コラム:ドル安・円高「長期化」の現実味=亀岡裕次氏

[東京 24日] - 一時114円台後半まで上昇したドル円が、111円台に反落している。米国の長期金利低下と市場のリスク許容度低下が原因ではないだろうか。

ドル円は近年、日米の2年金利差よりも10年金利差との連動性が高く、今回も10年国債金利差が縮小に転じた後にピークアウトした。ただし、米10年国債金利が低下に転じてから1週間ほどは、世界の主要株価指数が高値更新を続けるリスクオンのなかで、ドル円は114円前後を維持した。その後、米長期金利低下が一服する一方で欧米などの株価が下落を始めた11月8日頃から、ドル円の下落が進むようになった。

11月のドル・円・他通貨の相対関係を見ると、他通貨に対して「ドル安」と「円高」が進んでいる。最近のドル円下落には、米長期金利低下によるドル安と、リスクオフによる円高の両方が寄与しているのだ。

では、何が米長期金利低下やリスクオフをもたらしたのだろうか。考えられる要因として、米連邦準備理事会(FRB)次期議長人事、トランプ陣営のロシア疑惑、米減税期待の後退、景気減速懸念の4つが挙げられる。

次期FRB議長にパウエル氏(FRB理事)指名との見方が強まった10月27日、テイラー氏(スタンフォード大教授)が次期議長になってタカ派的金融政策をとるリスクが低下したため、米金利は低下した。だが、金融政策見通しを反映しやすい米2年国債金利は、すぐに上昇に戻った。タカ派転換リスクの後退による米金利低下は一時的かつ限定的だったと言える。また、タカ派転換リスクの後退は一時的にリスクオンに働いたとも言える。

「米政権のロシア疑惑で初の訴追へ、30日にも容疑者拘束(10月28日)」「トランプ陣営元選対本部長マナフォート氏ら2人を大陪審が起訴(10月30日)」「トランプ陣営元顧問パパドポロス氏、米連邦捜査局(FBI)捜査官に対する偽証で罪認める(同30日)」「米特別検察官、トランプ氏陣営に文書提出求める召喚状(11月17日)」などの報道が、トランプ陣営のロシア疑惑を高め、米金利低下やリスクオフに働いた面もあるだろう。ただ、事態の進展が乏しく、限定的な効果にとどまっているように見える。

<ドル安・円高の一因は米減税期待後退>

それらに比べ明確な米金利低下やリスクオフの効果を与えたのは、減税期待の後退だろう。10月27日に米下院が予算決議案を僅差で可決した頃が米10年国債金利のピークとなり、「米下院、法人税率の段階的引き下げ検討、2022年に20%へ(10月31日)」「米下院共和党、個人所得最高税率を現行39.6%で据え置く方向(11月1日)」「米法人減税、2019年に後ずれか、上院共和党で浮上(11月8日)」「米下院の修正税制法案、レパトリ税率引き上げ盛り込む(11月10日)」「米上院共和党、税制改革法案にオバマケアの個人加入義務撤廃盛り込みへ(11月15日)」といった報道が、米長期金利低下やリスクオフに働いたとみられる。

結局、下院共和党は法人税率引き下げを段階的とはせずに2018年から20%とした税制改革法案を11月17日に可決したが、上院の法案採決はこれからであり、法人減税を2019年に先送りした税制改革法案が可決される可能性がある。また、オバマケアの保険加入義務撤廃が一部個人の保険料負担を高めるとして一部の共和党議員が反対して、上院の法案が否決される可能性も残る。

いずれにせよ、上院と下院の法案内容には減税(法人税、個人所得税、レパトリ税)、州・地方税控除、住宅ローン利子控除、医療費控除、医療保険加入義務などの面で違いがあるため、別々の法案を可決しても、その後に両院協議会で差異を調整して統一した法案を作り、それを再び両院で可決し、大統領が署名して法案成立となる。

12月12日にはアラバマ州で上院補欠選挙があり、もし民主党候補が勝利すると、上院定数100のうち共和党の議席は52から51へ減り、法案成立のハードルが上がる。「2018年からの法人減税を含む法案が年内に成立」するなら、米長期金利上昇やリスクオンにつながるだろうが、その可能性が高まるまでは減税期待が抑制された状態が続くだろうし、その可能性が低下するなら米長期金利低下とリスクオフが進むことになるだろう。

<米国や中国の景気減速懸念も影響>

米景気減速懸念も、長期金利低下とリスクオフに作用したとみられる。米国では、10月30日発表の9月個人消費支出までは市場予想を上回る強い指標が多かったが、11月1日以降は、10月米供給管理協会(ISM)製造業景況指数、非農業部門雇用者数、11月ミシガン大学消費者信頼感指数、NY連銀およびフィラデルフィア連銀製造業景況指数など、市場予想を下回る指標が相次いだ。

ハリケーン被災の復興需要により自動車・建材・住宅などの需要が高まり、関連指標が9月あるいは10月にかけて大幅に改善した後に、その反動が生じ始めている。小売売上高は9月の前月比プラス1.9%から10月は同0.2%へと大幅に減速した。

9月時点で、個人の消費性向(=消費支出/可処分所得)は93.5%と2005年9月以来の高水準(過去最高は2005年7月の94.1%)となり、貯蓄率は3.1%と2007年11月以来の低水準となった。資産効果や復興需要を背景に所得の伸びを上回る消費支出の伸びが続いてきたが、今後は続きにくいものとみられる。また、個人消費の減速は企業景況感にも悪影響を与えつつある。米経済指標の減速傾向が明確化して景気のピークアウト懸念が台頭し、米長期金利低下とリスクオフが進む可能性が出てきた。

景気減速の兆しは中国にもみられる。10月の中国不動産販売(床面積)は前年比減少率が拡大し、2005年2月以来の大幅な減少率となった。主要70都市の新築住宅価格は前年比上昇率が縮小し、大都市では下落も始まっている。家計向け融資も企業向け融資も、新規融資は減少し始めている。中国当局は不動産バブルや債務膨張を懸念し、不動産規制(短期売却制限、住宅融資規制など)を強化しており、不動産需要の減退が景気減速圧力となりつつあるようだ。世界的に景気減速懸念が浮上し、長期金利低下やリスクオフを招く可能性もあるだろう。

<利上げ期待による米金利上昇余地は限定的か>

ところで、米国で短めの金利が上昇した理由に、2018年の利上げ期待が考えられる。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)時点でメンバー16人中、平均的な利上げ予想(2017年あと1回、2018年3回)の「中立派」が6人、利上げ予想幅が大きい「タカ派」が5人、利上げ予想幅が小さい「ハト派」が5人だった。

発言内容などから独自に判断すると、2017年の投票メンバーは、中立派5人、ハト派4人と推測される。そして、2018年の投票メンバーは、タカ派が3人増え、ハト派が3人減り、2019年は、タカ派と中立派が各1人減り、ハト派が2人増えると推測される。

フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、2018年の利上げ予想幅が0.40%程度に高まり、2019年の利上げ予想幅が0.15%程度で低迷している。タカ派が増える2018年に近づいていることが短めの金利上昇の一因だろうし、米景気見通しが改善しないと金利上昇の余地は限定的だろう。米長期金利低下やリスクオフを背景にドル円の下落はさらに進んでいくのではないか。

*亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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