March 22, 2018 / 8:50 AM / 9 months ago

コラム:米FRBが助長するリスクオフの円高=亀岡裕次氏

[東京 22日] - 米連邦公開市場委員会(FOMC)は21日、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.50―1.75%へと0.25%引き上げることを決定した。

米長期金利とドル円は、FOMCメンバーの経済・金利見通しが12月よりも上方修正されたことに反応して、直後は上昇したが、長くは続かず、米株価が下落に転じると反落した。FOMC声明の発表直前に106.20円近辺にあったドル円はその後下落、日本時間3月22日午後4時現在は105円台で推移している(23日正午現在は104円台後半)。

<市場は当局ほど米経済を楽観視していない可能性>

FOMC声明は、最近は家計支出や企業設備投資の伸びが減速したとする一方で、経済見通しはここ数カ月で強まったとした。米税制改革が経済にプラス効果を与えるとみているからだろう。実質国内総生産(GDP)見通しを2018年だけでなく2019年についても上方修正したのは、所得税減税が家計支出に与えるプラス効果は減衰しても、法人税減税が企業投資に与えるプラス効果が続くとみているからか。

2019年と2020年のコアインフレ見通しは目標の2.0%を超える2.1%へ上方修正され、利上げの必要性が高まったことを示唆。2019年末と2020年末および長期のFF金利見通しも上方修正された。

2018年末の予想中央値は2.125%で前回と同じだが、平均値は2.015%から2.192%に上昇。3月を含む年内利上げ予想回数は、1回2人、3回6人、4回6人、5回1人で、3回と4回が同人数に。前回12月より当局者の見通しはタカ派に傾いた。

ただ、タカ派的な当局者見通しにもかかわらず、米長期金利とドル円が下落したのは、市場が当局者ほど米経済を楽観視していないからか。利上げペースが速まると米景気減速リスクが高まるとみているために株価が下がり、長期金利とドル円も下がるのだろう。むろん、米経済や金利が当局者の予想通りになるとは限らない。

2018年末については、上述の通りFOMCメンバーのFF金利見通し中央値が2.125%、平均値が2.192%であるのに対し、市場のFF金利見通し(同金利先物の2018年12月限)は2.105%である。当局者と市場の見通しともに年内3回程度の利上げを織り込み、両者の差異は小さい。今回のFOMCを受けて、市場のFF金利見通しはわずかに低下した。

一方、2019年末については、FOMCメンバーのFF金利見通し中央値が2.875%、平均値が2.917%であるのに対し、市場のFF金利見通し(同金利先物の2019年12月限)は2.570%である。当局者に比べ市場のFF金利見通しが大幅に低く、今回のFOMCで当局者の見通しが上方修正されたことから、市場の見通しは上昇した。

ただし、2019年末まではおよそ1年9カ月と期間が長く、不透明要素が多いので、FOMCメンバーと市場の見通しのギャップが縮まるように市場金利が上昇し続けるとは限らない。米国経済環境次第で市場金利は変化していくことになるだろう。

もし、FOMCメンバーが予想するよりも米国経済やインフレ率が弱いと市場が判断するようになれば、メンバーと市場の見通しのギャップが広がるように市場金利が低下するだろう。前回12月のFOMC後には、米税制改革法案が成立したことを受け、米経済と物価が押し上げられるとの見方から利上げ期待が高まり、市場金利は上昇したが、今後はどうなるのだろうか。

<米保護主義による景気減速懸念でリスクオフに>

「米保護主義・強硬姿勢への懸念」「米インフレ懸念の緩和」「米景気減速懸念」がリスクオフ・安全資産買いの要因となり、米株安・長期金利低下とドル円下落に作用しているほか、世界的な株安・長期金利低下とクロス円下落にも作用している。

米保護主義懸念や米景気減速懸念がドル安に働く一方で、リスクオフや他国に比べた米長期金利の相対的上昇がドル高に働き、最近のドル実効為替レートは安定的である。もし、リスクオフが強まるとドル実効為替レートが上昇し、ドル円よりもクロス円が下落しやすくなるだろう。

トランプ政権は中国に対米貿易黒字の1000億ドル削減を求める一方、中国からの輸入品のうち最大600億ドル相当に関税を課すことを計画している。コーン国家経済会議(NEC)委員長の後任への指名を承諾したカドロー氏は中国製品に絞った高関税の導入に前向きとされる。経済政策メンバーをロス商務長官、ナバロ通商製造政策局長、カドローNEC委員長と対中強硬派で固めたトランプ政権は、対中輸入関税を決定しようとしている。

一方の中国は、貿易戦争は中国と米国と世界に災難をもたらすだけと、米国の保護主義措置に自制を求めている。しかし、中国が米国からの輸入品の関税引き下げ(輸入促進)や米国向け輸出の抑制など、対米貿易黒字削減につながる具体策を進めない限り、米国は行動を起こすことになるだろう。

米政権が中国からの輸入品への関税を発動すれば、鉄鋼・アルミニウム関税よりも大きな規模となる可能性が高いだけに、市場は米国だけでなく世界経済への悪影響を懸念してリスクオフに傾くだろう。米株安(逆資産効果)でマインドが悪化して消費支出が減速すると、リスクオフは持続性を強めると思われる。

最後に言い添えれば、ドル円はFOMC後に下落しやすい。2016年12月から2017年12月に利上げをした4回のFOMCで、FOMC1日目までの20日間(FOMC前)とその後20日間(FOMC後)を比べると、4回ともFOMC後の方が米株価のパフォーマンスが悪く、4回中3回はFOMC後の方がドル円のパフォーマンスが悪い。

米国経済の成長見通しが高まらず、下方リスクが増えつつある中、米連邦準備理事会(FRB)が利上げ姿勢を強めることは、株価を下げやすくする要因だ。今回のFOMC前にすでに米株価は頭打ちで、ドル円は下落してきたが、FOMC後にはリスクオフのドル円下落がさらに進みやすいだろう。

*23日正午現在のドル円レートを加えて、再送します。

*亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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