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コラム:為替の金利離れ、ドル高と円高の前兆か=亀岡裕次氏

[東京 31日] - ドル円が金利離れしている。米国の金利が日本に比べ相対的に上昇し、2月11日に1.63%だった日米10年国債金利差は2%近辺にまで拡大している。昨年、同金利差が2%を超えていた局面では、1ドルは120円を上回っていた。ところが、ドル円は2月11日以来、111―114円程度のレンジにとどまっている。

 3月31日、大和証券・チーフ為替アナリストの亀岡裕次氏は、今後、ドル高がリスクオフの円高の引き金となってドル円の下落が進行することに注意が必要だと分析。提供写真(2016年 ロイター)

為替にはリスク許容度の影響もあるので、ドル円がいつも日米金利差に連動するわけではないが、リスクオンの円安圧力がかかるなかで、ここまで大きくドル円が円高・ドル安方向に金利離れするのは珍しい。

為替の金利離れは、ユーロドル相場についても言える。3月1日に1.68%だった米独10年国債金利差は足元もほぼ同じ水準で変化していない。ところが、1ユーロ=1.08ドル台から1.13ドル台へと大幅にユーロ高・ドル安が進んだ。やはり、ユーロドル相場も金利離れしているのだ。

日米金利差の動きに比べてドル円が下振れし、米独金利差の動きに比べてユーロドルが上振れしているということは、両者に共通しているのは「ドル安」である。ただし、為替が金利離れしている原因は、ドル安だけではないと考えられる。

<リスクオンでも円安が鈍いのはなぜか>

クロス円は、リスク許容度に左右されやすく、通常は世界株価との連動性が高い。だが、2月以降は世界株価が顕著に上昇したにもかかわらず、ドル以外の主要通貨の対円為替を国内総生産(GDP)で加重平均して見たクロス円の上昇は明らかに鈍い。

クロス円が下落した一因には、英国の欧州連合(EU)離脱懸念によるポンド安や、その影響を受けたユーロ安がある。ただし、原因はそれだけではないだろう。

欧州通貨以外の対円為替も、世界株高の動きに比べて上昇が鈍いからだ。リスクオンでも円安が鈍いのは、日銀の量的緩和拡大やマイナス金利幅拡大の余地は小さいとの見方が円高に働いているからだろう。

2―3月にドル安が進んだ一因に原油価格の反発があるが、商品総合指数の上昇に比べてドル実効為替の下落が大きい。これは、1)米供給管理協会(ISM)非製造業指数(景況感悪化)や米雇用統計(賃金上昇鈍化)、2)ドラギ欧州中銀(ECB)総裁による利下げ打ち止め示唆の発言、3)米連邦公開市場委員会(FOMC)でのフェデラルファンド(FF)金利見通し下方修正(利上げ期待後退)などが、ドル安に作用したためとみられる。

ただし、米金利は日本や欧州に比べて上昇し、結果的に米金利や商品市況の動きに比べてドルが過剰に弱くなりすぎた。3月下旬にドル実効為替やドル円がやや反発したのは、過剰なドル安の修正圧力が一因ではないか。

<ドル円はドルよりも円に左右されやすい>

程度の差はあれ、円もドルも資金調達通貨として、その実効為替は同方向に動きやすい。2015年6月から16年2月にかけては、リスクオフの円高とドル高となった。ただし、円高がドル高を上回り、ドル円が下落した。

米金利変化とともにドルがドル円相場を主導するケースもあるが、基本的にドル円相場は「ドル」よりも「円」の動きに左右されやすい。ドル安のときは円安になりやすく、ドル円は下落しにくいが、ドル高になると円高になりやすく、ドル円は下落しやすくなる。16年2月から3月にかけては、ドル安と円安が相殺されてドル円は小動きとなった。

現在はドル安に振れたことで米国企業の予想1株利益(EPS)は上振れしつつあり、少なくとも4月までは予想利益の上方修正が株価の押し上げ要因となりやすいだろう。ただし、ドルが反発すれば、予想利益の上方修正が短期間のうちに終わる可能性がある。

また、最近は米国の経済指標が市場予想を下回るケースが減っており、ドル安や株高が進んだ3月の経済指標については、堅調となる可能性が高い。ただし、米経済指標の市場予想が改善する一方でドル高となれば、その後は経済指標が市場予想を下回るケースが増えて、リスクオフに傾きやすいだろう。

2月に原油価格の底打ちとともにドル安に転じ、米国の利上げ期待、金利、株価が上昇した。それでも世界景気が回復基調であれば、米国金利が海外諸国に比べ相対的に上昇しにくく、ドル安は続きやすい。また、景況感改善がリスクオンの株高や商品高を支え続けやすい。

しかし、今は世界景気が減速基調にあり、米国金利の相対的上昇がドル高を生みやすい。米株価と金利の上昇により金利との裁定関係からみた株価の割高感が強まっているうえにドル高となれば、景況感悪化がリスクオフの株安を招きやすい。ドル安とリスクオンは持続しにくいだろう。

ドル安を招いた原油価格反発の原因は、産油国の原油協調減産による供給過剰縮小への期待にあった。だが、その期待が実現に向かっているとは言い難い。米国の原油生産はすでに減少に転じ、世界の産油国のなかでも供給抑制が先行しているが、その米国ですら供給過剰は解消に向かっていない。

原油在庫の前年比増加ペースは鈍化しているものの、これは前年同期の在庫水準が急増したためであり、なおも在庫水準はハイペースで増加し続けている。石油製品在庫については前年比増加ペースがこれまで以上に高まっている。これでは原油価格が反落しても不思議はなく、すでに原油価格と商品総合指数には低下の兆しもある。原油安がドル高を招き、それらが再び市場をリスクオフに傾かせる可能性がある。

また、ドル高に転じると、人民元相場を通じてもリスクオフにつながりやすい。ドル安(ドル実効為替が下落)となると、中国当局が参考とする主要通貨のバスケットが対ドルで上昇し、人民元は通貨バスケットに対して下落する。実質的に人民元は割安になるので、人民元には上昇圧力がかかり対ドルで上昇しやすくなる。

逆にドル高になると、人民元は対ドルで下落しやすくなり、中国からの資本流出や株安を誘発し、中国発のリスクオフが世界に広がりやすくなる。

<2016年度の予想レンジは1ドル=104―117円>

ドル安になると、米国経済へのプラス期待とともにリスクオンの円安圧力が生まれ、ドル円は底堅く推移しやすい。米利上げ期待の後退によるドル安にせよ、ドルの実効為替が下落しているうちは、世界的にリスクオフ圧力が弱い、あるいはリスクオン圧力がかかっている証拠であるから、ドル円が大幅に下落する可能性は小さいだろう。

しかし、世界経済が弱いなかでのドル安は、米金利を他国に比べ相対的に上昇させ、ドル高につながりやすい。また、原油の供給過剰が期待通りに縮小しない限り、原油価格が反落してドル高に働きやすい。そして、ドル高になると、米国経済へのマイナス効果が懸念されてリスクオフの円高圧力が生まれ、ドル円は下落しやすくなる。

米国経済が非常に強いことによるドル高なら別だが、そうではなくて米国以外の金利低下による相対的な米金利上昇や原油安を背景にドル高が進むようなら、リスクオフにつながりやすい。

つまり、ドル安(実効為替下落)によるドル円の下落は限定的となりやすい一方で、円高(実効為替上昇)によるドル円下落は大幅となりやすい。今後、ドル高がリスクオフの円高を招く引き金となってドル円の下落が進行することに注意が必要である。

ドル安ではなく円高を主因にドル円は下落基調となり、16年度のドル円相場レンジは104―117円になると予想している。

*亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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