August 20, 2018 / 7:53 AM / 3 months ago

コラム:リスクオフの円高加速か、ユーロドル下落にヒント=亀岡裕次氏

[東京 20日] - ドルに対する円とユーロの動き方に最近、変化が起きている。今年、ドルに対して円とユーロは同方向に動くケースが多かった。1月は上昇し、3―5月は下落、ユーロ円は安定的に推移した。2―3月はドルに対してユーロが小動きの一方で円高が進み、6―7月はユーロが小動きの一方で円安が進んだ。

 8月20日、大和証券・チーフ為替アナリストの亀岡裕次氏は、 ドルに対して円が上昇する一方で、ユーロなど多くの通貨が下落しており、リスクオフ相場の様相を呈していると指摘。写真はユーロと日本円、都内で2010年9月撮影(2018年 ロイター/Yuriko Nakao)

ドルに対して円とユーロが逆方向に進み続けるケースは少なかったが、8月に入り円高の一方でユーロ安が進み、明らかに逆方向に動いている。

<リスクオフで対ドルの円高とユーロ安に>

5月下旬にも対ドルで円高とユーロ安が進む局面があった。当時、中国が米国からの輸入拡大で合意した直後だったが、トランプ米大統領が米中通商協議に難色を示し、関税をかける中国製品を発表するとしたほか、米朝首脳会談の実現に疑念を示し、中止を決定(その後撤回)した。

また、米政権が新たな自動車関税を検討とも報じられた。さらには、イタリア再選挙の可能性が高まったほか、石油輸出国機構(OPEC)増産観測の浮上で原油価格が急落した。リスクオフ、原油安、長期金利低下を背景に円高の一方で他通貨が幅広く下落し、ドル円よりもクロス円の下落が大きくなった。

最近も同様に、ドルに対して円が上昇する一方で、多くの通貨が下落しており、ドル円よりもクロス円の下落幅が大きいリスクオフ相場の様相を呈している。

<リスク許容度主導の為替変動に回帰>

世界株価と対ドル為替の相関係数からも、為替の動き方に変化が起きていることが分かる。

トランプ米大統領が当選した2016年11月から2018年5月中旬までは、円とユーロの対ドル為替と世界株価指数の相関係数が同じように動くケースが多かった。これは、為替市場が米経済見通しの良し悪しを反映してドル主導(ドルの強弱)で動き、リスクオンで世界株高のときにドル高、リスクオフで世界株安のときにドル安のケースが多かったからだ。こうなると、円とユーロの対ドル為替と世界株価の相関係数は、ともにマイナスの逆相関となりやすい。

ただ、米政権のドル安歓迎発言や保護主義政策によりドル安に振れた今年1―2月は、一時的に円とユーロの対ドル為替と世界株価の相関係数はともにプラスとなった。

ところが、同じように動いていた円とユーロの対ドル為替と世界株価の相関係数が、今年5月下旬以降は乖離して、円はマイナス、ユーロはプラスとなった。つまり、円は世界株価と逆相関の一方で、ユーロは順相関となった。そして、ユーロに限らず多くの通貨が世界株価との順相関を強めた。

しかし、そうした中でメキシコペソやトルコリラは順相関が低い。メキシコペソに関しては北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉合意期待、トルコリラに関しては対米関係悪化など、個別要因によって通貨が大きく変動したために、リスク許容度を示す世界株価との相関が低下したのだ。

これらの例外を除くと、円の対ドル為替は世界株価と逆相関の一方で、他通貨は全般的に順相関を強めており、本来の通貨特性を表している。為替がリスク許容度主導(リスク許容度の強弱)で動くようになってきたことを示している。

<クロス円を中心に円高進む公算大>

クロス円の下落など為替相場の変化が目立って大きくなったのは、トルコリラが急落した8月だが、為替がリスク許容度によって動きやすくなり始めたのは5月下旬以降である。その時期は米経済指標が市場予想を上回る傾向が弱まり、米長期金利の上昇が止まった時期でもある。他国と比べた相対的な米経済見通しや金利先高観の強さが衰えたことが、為替をドル主導からリスク許容度主導へと変化させた原因と考えられる。

今後、もしトランプ政権が再びドル高に懸念を示すことがあれば一時的に為替がドル安に振れてドル主導の相場展開となるだろうが、基本的には為替がリスク許容度主導で動きやすくなっていると言えるだろう。

最近は国際紛争が市場のリスクオフ要因となっている。米中貿易摩擦を筆頭に、米国とイラン、米国とトルコ、サウジアラビアとカナダの対立に加え、非核化を進めない北朝鮮と米国の関係悪化も懸念されつつある。当面は米中通商協議が再開されて米中関係の緊張が緩和に向かうか否かがリスク許容度を左右するだろうが、米国が通商協議中は対中追加関税を猶予するような柔軟な姿勢を見せないと、リスクオンには働きにくいだろう。

また、主要国の景気指標が減速傾向にあることも、リスクオフ要因だ。ユーロ安効果や人民元安効果があっても欧州や中国の景気指標に改善の動きが乏しい中、米国の景気指標が減速し始めたことが世界景気の減速懸念を高めつつある。

さらには、需要鈍化懸念による商品安がリスクオフに働く可能性も出てきた。米原油および石油製品の在庫は増加して前年比減少幅が縮小しており、この傾向が続くと需要鈍化懸念で原油安が進み、世界的な長期金利低下や株安を誘発しやすいだろう。リスク許容度主導で動きやすい為替相場は、リスクオフ(オン)に振れた場合にクロス円を中心に円高(円安)が進みやすいと言える。

亀岡裕次氏(写真は筆者提供)

*亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。

(編集:麻生祐司)

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