November 28, 2018 / 10:10 AM / 14 days ago

コラム:米景気の山は来春か、ドル円が失う上昇力=亀岡裕次氏

[東京 28日] - このところ米国の株価や長期金利が下落し、ドル円を押し下げている。背景にあるのは景気減速への懸念で、米国の経済指標や企業業績に弱さが見えるようになってきた。

 11月28日、大和証券・チーフ為替アナリストの亀岡裕次氏は、米経済減速によるリスクオフや金利の低下で、ドル円は上昇力を失う可能性があると指摘。写真は年末商戦が本格化した米ニューヨーク市マンハッタンのブロードウェイ。11月23日撮影(2018年 ロイター/Andrew Kelly)

米金融当局者は景気見通しに慎重な姿勢を見せ始め、市場も利上げ期待を後退させている。「ねじれ議会」となった中間選挙後のタイミングで米株や長期金利が下げに転じたことから、トランプ政権の政策遂行能力が低下することへの懸念も一因なのかもしれない。

米国の経済成長は、すでに鈍化している。実質国内総生産(GDP)の伸び率は、2018年4―6月期のプラス4.2%(前期比年率)から、7―9月期はプラス3.5%に低下した。高水準の成長率だが、押し上げたのは在庫の増加で、その寄与度はプラス2.07%。在庫増減を除く最終需要の伸び率はプラス1.4%にとどまる。4―6月期の最終需要がプラス5.4%の高成長だった反動もあるが、7・四半期ぶりの低成長となった。

最終需要が減速した原因は、輸出から輸入を差し引いた純輸出と設備投資、そして住宅投資にある。

<輸出減少は続く>

GDP成長率への寄与度が最も低下したのは、純輸出だ。4―6月期のプラス1.22%から7―9月期にはマイナス1.78%まで落ち込んだ。輸出減少と輸入増加が原因で、このうち輸出は今後も減少が続きそうだ。需要減速を反映して世界的に製造業購買担当者景気指数(PMI)が低下しているうえ、ドル実効為替レートが上昇傾向にあり、米国の輸出環境が厳しいからだ。米製造業の輸出受注指数は10月、大幅に低下した。

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、世界経済に減速の兆しがあることを懸念材料として挙げている。成長率に対する純輸出の寄与度がさらに低下し続ければ、米国の国内需要に悪影響を与えやすいため、警戒しているのだろう。

米景気が世界経済の減速を受けて弱まれば、米金利やドルの上昇力が相対的に衰えることにもなるはずだ。実際、債券利回りにはそうした動きがみられる。一方、ドル高が明確に鈍化しないのは、英国の欧州連合(EU)離脱問題(ブレグジット)などによる欧州通貨安が作用しているためだ。

<減退する企業の設備投資意欲>

GDP成長率への寄与度が2番目に大きく低下したのは、設備投資だ。4―6月期のプラス1.15%から7―9月期にはプラス0.12%へと低下した。

米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明は、「家計支出と企業の設備投資は力強く伸びた」(9月26日)から、「家計支出は引き続き力強く伸びたが、企業の設備投資の伸びは今年早い時期の急速なペースから緩やかになった」(11月8日)へと変わり、設備投資の判断は下方修正された。

10月の米供給管理協会(ISM)製造業新規受注指数は、17年4月以来の水準まで低下。設備投資の減速が影響しているようだ。設備投資の先行指標とされる航空機を除く非国防資本財の受注は、3カ月移動平均の前月比が10月にマイナスへと転じている。法人税の減税による増益効果が薄れる一方で、貿易摩擦や海外経済の減速から景気不安が台頭し、米国企業の設備投資意欲が減退しているように見える。

<雇用もペースダウンか>

米国企業の雇用意欲が減退していることをうかがわせる動きもある。毎週発表される新規失業保険申請件数は、9月半ばにかけて20万2000人まで減少したが、その後は22万4000人に増加している。5月以来の高水準だ。

転職のために自発的に離職し、失業保険申請が増えるケースもあるので、一概に雇用鈍化の兆しとは言い切れない。だが、雇用者数の比重が大きい非製造業の景況指数や雇用指数が、9月をピークに悪化に転じつつあることも合わせて考えると、やはり雇用鈍化の兆しである可能性が高い。

10月の非農業部門雇用者数は25万人増と強い伸びを示したが、今後は増加幅が縮小することもあり得る。雇用が鈍化すればFRBは利上げの継続に慎重な姿勢を示す可能性があり、米長期金利とドル円の下落を招くかもしれない。

住宅投資も、わずかながらGDP成長率への寄与度が低下している。4―6月期のマイナス0.05%から、7―9月期はマイナス0.16%へと下がった。特筆すべきは、18年に入って3・四半期連続でマイナスになっていることだ。輸出や設備投資に先行し、いち早く減速し始めた需要項目である。

住宅市場は価格が高止まりしているうえ、ローン金利の上昇もあり、販売が減少している。10月の米中古住宅販売件数は7カ月ぶりにプラスに転じたが、3月から9月までに減少した分の15%を取り戻したに過ぎない。戸建て住宅販売や住宅建設許可件数は10月も減少し、住宅市場指数は11月に大幅に低下するなど、住宅投資は先行きも明るくなさそうだ。FRBのパウエル議長は、弱まる住宅セクターの動向を注視していると述べている。

<好調な個人消費も要注意>

唯一好調を維持しているのが個人消費だ。GDP成長率への寄与度は、4―6月期のプラス2.57%に対し、7―9月期はプラス2.69%となり、ここ最近で最も高い水準となった。米株価指数が9月から10月初めにかけて最高値を更新し、資産効果が拡大したことが大きく影響しているのだろう。

その後、株価指数は下落に転じている。27日時点のダウ工業株30種は9月末から6.5%、S&P総合500種は8.0%、ナスダック総合指数は12.0%それぞれ下落している。株安を反映するように、米ミシガン大消費者信頼感指数も10月、11月と2カ月連続で低下している。

11月以降、雇用が鈍化すれば、それも消費支出を抑える要因となる。米感謝祭の連休中、ネット通販の売上高は前年を上回ったものの、実店舗の客数は前年を下回ったようだ。米個人消費には不安材料も出てきており、今後の動向に注意が必要だろう。

09年6月を底に始まった米景気の拡大は、18年11月で113カ月が経過した。19年6月まで拡大が続くと、過去最長だった1991年3月から01年3月までの120カ月に並ぶ。当時は景気の山が01年3月、その7カ月前の00年8月にS&P500がピークアウトした。

18年9月にS&P500がピークアウトしていたとするなら、米景気は19年4月にピークアウトするかもしれない。米経済減速によるリスクオフや金利の低下で、ドル円は上昇力を失う可能性がある。

(本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

(編集:久保信博)

亀岡裕次氏(写真は筆者提供)

*亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。

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編集:久保信博

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