March 20, 2019 / 11:06 PM / a month ago

コラム:同盟を壊す「トランプ要塞」、駐留費負担増の現実味

[15日 ロイター] - トランプ米大統領はシリアやアフガニスタン、韓国や欧州大陸の大半で米国の軍事的な関与を後退させているかもしれないが、その流れとは逆を行く場所がある。

 3月15日、トランプ米大統領(写真)はシリアやアフガニスタン、韓国や欧州大陸の大半で米国の軍事的な関与を後退させているかもしれないが、その流れとは逆を行く場所がある。米軍横田基地で2017年11月撮影(2019年 ロイター/Jonathan Ernst)

米国防総省は、「フォートトランプ(トランプ要塞)」と呼ばれる大規模な基地をポーランドに新たに建設し、機甲師団を駐留させることを検討している。

その理由は簡単だ。ロシアを抑止し、米国の支持を得たいポーランド右派政権は、米軍駐留経費として20億ドル(約2230億円)、あるいはそれ以上の負担を申し出ている。これは多くの米同盟国、とりわけ欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国に警鐘を鳴らし、トランプ氏がさらに広範な適用を狙う先例のように見える。

トランプ氏は、日本やドイツなど米軍を大規模に駐留させている国々に対し、駐留経費の全額負担だけでなく、さらに5割増しで支払うことを望んでいるとブルームバーグは伝えた。この提案は政府内の多くの外交政策関係者ばかりか、外部からも激しい怒りを買っている。

同時に、2020年米大統領選が迫る中、米国の同盟国は自国防衛のためにもっとカネを出さなければ、米国は撤退するというレトリックをトランプ氏が強めていることを如実に示すサインでもある。

もう1つの明確なサインとして、提出された国防総省予算において、主張を強めるロシアと中国に対する軍事費は増加した一方、欧州における米軍活動費は1割減らされている。米軍の訓練活動などを支える欧州抑止イニシアチブ(EDI)の予算は現在65億ドルで、2014年のロシアによるクリミア併合以降、増加し続けていた。

国防総省によると、今後も米軍は東欧にローテーションで駐留し続けるが、ポーランドのように受け入れ国が費用を負担すると約束しない限り、新たな拠点の建設や訓練は削減するという。

これは1945年以降、米国の歴代政権が取ってきた方針からの大きな転換であり、孤立主義を一段と強めるものだ。歴代政権の大半は、海外駐留米軍について、願わくば長期的な平和をもたらし、米国が望み通りに影響力を及ぼすことを可能にするための投資だと捉えてきた。極端な話、現在の米国との同盟関係はカネ次第と受け止められかねない。

トランプ氏が大統領の今について言えば、これは米国の政策立案ですでに広範に見られる流れなのかもしれない。2020年大統領選の民主党候補、とりわけ左派のエリザベス・ウォーレンとバーニー・サンダースの両上院議員は、トランプ氏と同じぐらい孤立主義的だ。米国の外交政策の主流は今もNATOや他の同盟関係に深く関与し続けているが、未来の大統領を含む型破りな政策立案者に対するその影響力は、かつてほど大きくないかもしれない。

NATOなど同盟諸国の国防予算に対しても、不満は高まっている。14日公表されたデータによると、2018年のNATO国防費は29カ国の大半で増加しており、中でもバルト三国をはじめとしたロシアに近い東欧、北欧諸国においては急増している。一方、ドイツは減少を続けている。

国内総生産(GDP)比2%の国防費を拠出するというNATOの目標を達成したのは米国を除くと6カ国だけだった。トランプ氏は昨年、2倍の4%にすべきと主張している。

ポーランドのドゥダ大統領が冗談で名づけたとされる「フォートトランプ」が現実のものとなるかはまだ分からない。欧州の一部の専門家は懐疑的な見方をしており、ポーランドは欧州の友好国と取引にとらわれない関係を結んで運命を共にすべきと指摘する。「フォートトランプ」の提案について、ポーランド当局は米当局と協議する予定だが、他の米同盟諸国はその結果を注視するだろう。

トランプ氏は、強硬な態度に出て、米同盟諸国に支払いを要求すれば、自身の保守的な有権者に効果的に訴えることができると期待しているに違いない。だが、それがより大局的な戦略として理にかなっているかどうかはまた別の問題だ。

世界各地に点在する駐留米軍、特にドイツのラムシュタイン空軍基地のような主要施設は、米軍が世界で活動する上で中核をなす。費用を負担するよう同盟国に迫ることは、慎重な交渉の上に成り立ってきた数々の取り決めを台無しにする恐れがある。その中には中東やアフリカにおける米国の対テロ対策で中心的な役割を担っているものもある。

米国の同盟国の多くはすでにかなりの負担を強いられている。アジア太平洋ほほ全域における米軍の活動拠点である日本は、米軍の年間駐留費55億ドルの75%を負担しているとの試算もある。トランプ氏の希望通り、さらに50%増となれば、負担額はこの2倍以上になる。米軍駐留という議論を呼ぶ性質の問題であることを考えれば、増額が実現するかどうかは全く分からない。

それでも、トランプ氏はより広範なメッセージを送っているようにみえる。過去の米政権は友好国やパートナーとの防衛協定に積極的に深く関与することを選んできたが、そうした国々は今後、自身でその仕事を行うというものだ。それはある意味、自己達成的な予言の様相を強めている。2016年の大統領選でトランプ氏が勝利して以降、マクロン仏大統領やメルケル独首相といった欧州のリーダーは、防衛協力をより深めるようになった。

それは恐らく正しい選択だろう。米国防長官だったマティス氏は昨年12月に辞任するまで、同盟諸国に対する米国の関与を再確認するため、世界中を精力的に飛び回ってきた。

しかし、そうした日々は過ぎ去ってしまったようだ。ロシアも中国も、依然としてそれぞれの周辺地域で動きを活発化させ続けている。米国が反応してくる懸念が薄れるにつれ、一段と強硬姿勢を強め、潜在的な危険が高まりやすくなる。

実際に基地が建設されるかどうかは別として、トランプ政権が孤立主義的ムードの音楽を流す中、 「フォートトランプ」は同盟国による米国との関係見直しという遺産を残すかもしれない。それこそまさにトランプ大統領とその支持者が望むことだろう。

だからといって、世界がより安全な場所になるとは限らない。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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