November 12, 2018 / 3:57 AM / a month ago

コラム:中央銀行の独立性は守られるべきか

[ロンドン 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 政治家がまた、中央銀行を振り回そうとしている。トランプ米大統領だけではない。インドやトルコ、ロシアや南アフリカの指導者も、中銀が国民の意思に反した行動を取っていると不満を口にしている。

 11月8日、政治家がまた、中央銀行を振り回そうとしている。写真は、パウエルFRB議長を後ろから眺めるトランプ大統領。ワシントンで昨年11月撮影(2018年 ロイター/Carlos Barria)

そうした圧力は大いに正当化されているが、完全に間違っている。

トランプ大統領のように選挙で選ばれた指導者は通常、中銀に対し、金利を低く保ち、緩い融資基準について過度な心配はしないよう望んでいる。しかし時には、複雑な場合もある。

インドのモディ政権は2016年、インド準備銀行(中央銀行)に通貨切り下げを命じた。一方、ユーロ圏では、欧州中央銀行(ECB)の債券買い入れプログラムが、財政的に苦しい加盟国へ隠れた補助金を与えるものだという厳しい批判を浴びている。

こうした緊張には、基本的なコンセンサスが隠れていることがある。ジンバブエやベネズエラといった、ほんのわずかな国々の独裁者だけが、支持者や、敵になり得る人にカネを握らせるために財政的破滅へと向かっている。

他のほとんどの国々では、政治家や中銀当局はどちらも、低インフレ率、安定した経済成長、そして害のない金融システムを求めている。

そのようなゴールに達する最善の方法を誰が決めるのかについては、今でも真剣な議論が交わされている。

中銀は政策を決定する上で、どの程度自由であるべきなのか──。この議論を翻弄(ほんろう)しているのは2つの「神話」だ。

1つ目の神話は、金融テクノクラシー(専門家による支配)が現実的な解決の可能性であると、中銀当局者が信じたがっていること。2つ目は、一部の政治家が自身による介入について「呪術的思考」にふけっていることだ。

まずは、中銀の独立性という問題において、従来の擁護派の主張から見てみよう。2008年の世界金融危機はこうした大義を守ろうという熱意をくじいてしまったが、多くの専門家は今でも、金融政策と金融規制が本質的に、例えば交通安全よりも、政治的ではないと考えている。

彼らのような純粋主義者は、中銀当局者は通常、英経済学者のジョン・メイナード・ケインズが提唱した控えめな理想に従ってやっていけると主張する。つまりそれは、歯科医のように技術的スキルを使うことである。政治家は中銀に大まかな目標と広範な基準を示すべきで、あとは専門家に任せろ、と言うのだ。

だが中銀の独立性を強硬に支持する人たちでさえ、異例の事態においては政治的になり得ると認めている。2008年と09年に先進国全体に急速に広がった緊急措置と、その後10年に及ぶ超金融緩和策は、非常に大規模かつ長期にわたる「例外」だったのかもしれない。

だが、そのような大規模な例外でさえも、戦争下での公民権はく奪が、民主国家が隠れた独裁国家であることを意味しないのと同じように、政治的中立性の原則は損なわれない、と彼らは主張する。

だが、それは幻想にすぎない。

中銀には政治が組み込まれている。金利は、一般的に恵まれている貸し手と、普通は比較的貧しい借り手の所得格差に多大な影響を及ぼしている。銀行規制に関する決定は、さまざまな社会経済的な階層や産業を手助けすることになる。金融政策の選択は、戦争や社会福祉政策ほど政治的対立を生まないかもしれないが、かつてないほど論争を呼んでいるため、純粋に専門家が解決できる問題とは言えなくなっている。

金融危機後、中銀が行った選択の政治的影響を考えてみよう。中銀は新たに創造した資金で金融資産を購入して、経済に資金を注入した。量的緩和はそうした資産価格を上昇させ、大半がすでに裕福な保有者の資産を膨らませた。異なる政策、例えば、個人の銀行口座に新たな資金を貸し付けるという選択をした場合、消費力と富の分配に与える影響はまったく異なっていただろう。

基本的に政治問題であれば、政治家がより大きな発言力を求めることは法に反することではない。しかしながら、何について求めるかについては注意すべきだ。中銀当局者は不意を突かれることも多いが、政治家の方がうまく対処できると考える根拠もない。

実際、金融政策に関わりたがる政治家は、主に自身のイリュージョンを追い求めている。短期的な追加刺激策は効果的で安全だと彼らは主張する。短期的に見れば、正しいことかもしれない。緩和策によって、1、2四半期は成長が持続することはある。あるいは、選挙が終わるまで金融危機を回避することすら可能かもしれない。

だが長期的には、低過ぎる金利で過度な融資を行うことは、既存の経済問題や金融問題を悪化させるだけだ。政治家は、こうした短期的な衝動に抵抗できるという信頼性に欠ける。

過剰なまでに防衛的な中銀当局者と愚かしいほどアグレッシブな政治家の対立は残念なことである。協力し合った方がお互いに楽になるからだ。例を挙げると、強力な政治的後押しがなければ、近年ほとんどの景気低迷の裏に存在する「過剰金融の呪い」を解くことはできない。また、金融政策と財政政策はより緊密に連携した方が賢明だろう。

政治的な日和見主義者も思い上がった中銀当局者もいない世界なら、有益な協力は自然なことだろう。そのような世界では、中銀の独立性という神話を声高に叫ぶ必要もない。

だが現実は、このような理想の世界とは程遠い。

トランプ氏と仲間の各国指導者たちが反抗的な中銀当局者について文句を言う場合、彼らが与える圧力は有害無益である可能性の方がはるかに高い。そうした不幸な状況において、中銀の独立性を擁護する価値はある。不安な現状を続けることは、恐らく最後に残る間違った選択肢だろう。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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