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コラム:コロナ感染の再襲来、日本経済の打撃と対策はどうなるか=熊野英生氏

[東京 2日] - 英独仏など欧州では、コロナ感染者の増加ペースが3、4月を上回って第2波を迎えている。米国でも3、4月の第1波、6、7月の第2波、それに続く第3波に見舞われている。11月中旬からはクリスマス商戦が始まり、そこで個人消費が不振に陥る懸念がある。

 11月2日、英独仏など欧州では、コロナ感染者の増加ペースが3、4月を上回って第2波を迎えている。写真は都内でマスクをつけて歩く人々。10月20日撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

すでにダウ平均株価.DJIは、第3波の感染リスクを織り込んで大きく下落している。まだ、市場には11月3日の米大統領選を前にした熱気があり、今後のクリスマス商戦の悪化までは織り込み切れていないと感じられる。誰が大統領に決まっても、感染拡大の第3波がもたらす打撃の大きさは、それほど変わらないだろう。

日本の累計感染者数は10月29日に10万人を超えたが、米国の1日当たりの新規感染者数は約10万人(10月30日9.9万人)である。米国の累計感染者数は912万人(11月11日時点)と、日本とは桁違いに多く、どれだけ深刻かがわかる。

<米長期金利上昇と円高リスク>

大統領選挙が終わると、追加経済対策がいよいよ議会を通るはずだ。これは、歓迎されてよいことだが、さらなる財政出動が期待されると、それが米長期金利をさらに上昇させる。ドル/円JPY=EBSレートは、米長期金利US10YT=RRが上昇してもドル高には向かわず、逆にじりじりとドル安・円高に振れている。米クリスマス商戦が不振になると、米国の財政出動の強化という思惑と相まって、悪い金利上昇とドル安が進む可能性がある。同時に円高は、日本株の下落を誘う可能性も警戒される。

2021年初のリスクは、欧米だけでなく日本を含めてコロナ感染の波が大きくなることだ。米経済への打撃次第で、ドル/円レートは従来のレンジよりも円高が進み、同時に株安が起きる展開もありうるだろう。

<再度の自粛要請と政府の対策>

日本では、まだ、再襲来の兆候はないが、冬の寒さが本格化し、季節性インフルエンザの流行とともにコロナ感染拡大が起きると、再び景気が下押しされるシナリオが頭に浮かぶ。

仮に日本にコロナの感染拡大が再襲来しても、医療機関の患者受け入れがひっ迫しない限り、4、5月の緊急事態宣言を再発令することはないだろう。実質国内総生産(GDP)が年率マイナス28.1%も急落することは回避できるだろうが、それなりの損失が生じることは覚悟せねばなるまい。

日本政府は、冬場の再襲来に対してどんな対応を採るのだろうか。菅義偉首相は、経済を止めることには消極的である。従って仕事の出勤停止は行わないだろうが「お願いベース」の出勤制限は、かなり広範囲に行われると予想される。テレワークをはじめとする働き方のデジタル・シフトは強化されるに違いない。  現在の「Go Toキャンペーン」は中断されて、サービス業の回復も進まなくなるだろう。政府は、不要不急の外出自粛を要請し、飲食店の夜間営業が制限されて、再び持続化給付金の追加支給を行うことも考えられる。

自治体の給付措置を政府が交付金で賄えるようにするだろうから、追加の補正予算の規模は膨らむことになるのは必至だ。消費は減少し、雇用悪化に対して財政資金を支える政策を強化すると予想する。

こうした長期戦からの出口は、ワクチンの完成・普及が行われるまで見えなくなってしまう。菅首相は、ワクチンの準備ができるのは2021年前半とそのめどを示すが、そのタイミングでの実現の保証はない。

<経済二極化が進む>

コロナ再襲来の打撃があっても、4、5月に緊急事態宣言が出された状況とは異なるだろう。まず、製造業の回復は続く。消費が減少するとしても、モノの分野は落ち込みにくいとみられる。日米欧で感染リスクが高まっても、中国はそのリスクを抑え込んで引き続き回復を演出すると予想される。

日本の鉱工業生産は9月までの実績は堅調で、回復は10、11月の予測指数でも継続する見通しである。モノの消費は、9月までの商業動態統計の小売業の販売指数がやはり堅調だ。4、5月のような強制措置を発動しなければ、食料品、家電、保健・医療やそれに関連する消耗品の販売は限定的な減少になるとみる。

問題は、サービス消費が極端に悪化して、観光業や外食・娯楽・個人サービスの中から事業破綻する企業がいよいよ多く現れることであろう。財政からの支援では、ついに持ちこたえられなくなる。二極化する日本経済の中で、「負け組」への対応をどうするのか、政府の大きな課題になる。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

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編集:田巻一彦

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