for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

コラム:日経平均3万円回復と持続に必要な条件は何か=熊野英生氏

[東京 26日] - 昨年末の各メディアに日経平均株価の予想が出て、2021年は2万7000円─2万9000円のレンジになるとの見方が多かった。

 1月26日、昨年末の各メディアに日経平均株価の予想が出て、2021年は2万7000円─2万9000円のレンジになるとの見方が多かった。写真は9日、都内で撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

しかし、現実の株価は2021年1月に一段高となり、数カ月以内に3万円の大台をつける可能性が視野に入ってきたと言っていいだろう。

他方、国内経済の実態面を見ると、新型コロナウイルス感染の第3波が広がって、大都市圏を中心に11都府県が緊急事態宣言の発令対象になった。2021年1─3月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比マイナスに転じる公算が高い。2月7日までと設定された緊急事態宣言も、感染者数や医療提供体制の推移をみると、延長される可能性が高いと予想している。

昨年4、5月の緊急事態宣言の時は、日経平均株価がいったん1万6500円近くまで下落した。ところが、世界的に感染が広がっているにもかかわらず、今回は各国で株価が上昇している。株価は、ファンダメンタルズを離れて、少し楽観的な期待に支えられているとみてよい。投資家心理が強気に傾いて、皆が上がり続けるという期待を持ち続ける限り上昇するという「合理的バブル」の状態にあると言える。

<株価上昇は懐疑の中で育つ>

「合理的バブル」の読み方が難しいのは、「バブルだから、いずれ急落する」と言っても、そのタイミングが読めないことだ。株価が3万円を超えて割高だと言われながら、上昇を続ける可能性もある。また、「投資家を悲観的にさせる材料がない」という環境ではなく、悲観的材料によって強気期待が起こるメカニズムも働いている。

例えば、感染の長期化が懸念されるから、各国政府は強力な金融緩和と財政出動を停止させることはないという見方が強まる。先進国はどこでも財政収支の均衡に目をつむり、景気刺激にひた走る。その結果、金融緩和の出口や財政健全化の計画が具体的に語られる局面になると、政策支援に対する楽観が消えて、「合理的バブル」も成立しなくなる。実体面での悲観論が支配的だからこそ、政策的な楽観論が投資家の間で共有されるというロジックである。

米国生まれの英国人投資家、ジョン・テンプルトンの有名な格言にとして「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育つ」がある。米経済では、切れ目のない財政出動が続くとみられている。その中で、財政支援が途絶えて景気失速すると警戒されているうちは、バイデン大統領の積極財政が投資家の強気期待を支えることになる。

<割高という見方が共有される株価水準はどこか>

もう1つ、「合理的バブル」が崩れる条件がある。それは高所恐怖症の共有化である。誰が考えても「その株価は割高でしょう」という状態になると、それ以上の株価で取引を続けようとする投資家が少なくなる。仮に日経平均株価が3万8915円に近づくと誰もが割高感を共有するだろう。だが、その具体的な割高水準のラインは全く見えない。3万円が割高で、3万5000円はもはや限界などと判断できる材料はないのだ。

投資家は、過去の株価変動を参考にして、将来の株価を考えることが多い。日経平均株価は、アベノミクスが開始される直前から上昇し始めて、2013─2020年まで継続して上昇している。年間での高値と安値の変化幅は、13─19年は4000─5800円と安定していた。20年だけは1万1000円という大きな変動幅となり、この大きさは1990年以外に例がない。

20年の株価の変動幅は、コロナ危機が一時的に強く意識されたことによる例外とみることはできる。20年末の株価(2万7444円)は、19年末(2万3656円)よりも3788円しか上昇しておらず、これは決して大幅なものではない。すると、平均的な年間変動幅の範囲内とみることもできる。

あえて試算すれば、20年末の株価水準に13─19年の年内変動幅4000─5800円を上乗せして、21年内に3万1500─3万3300円くらいまで上がると、過去の経験則では説明しにくい株価の領域に達することになると感じる市場参加者が増えるかもしれない。

<環境変化のリスク>

最後に、株価の強気期待に変更を迫るようなイベント・リスクがあるとすれば、それは何になるのかを考えたい。

まずは、金融政策の方針転換である。特に米連邦準備理事会(FRB)がインフレ懸念に注意し始めたときは怖い。しかし、それは21年中に起こりにくいと筆者はみる。日銀は3月に点検を行って、ETF(上場投資信託)の買い入れペースを落とすだろう。それ自体は緩和後退だが、黒田東彦日銀総裁は株価が急落した時は機動的に買い入れを増やすと同時にアナウンスするだろうから、それが株価を崩すことにはつながらないだろう。

むしろ、現在は予想しにくいリスクの急浮上が、「まさか」の悪材料として問題視されることが考えられる。

1つは、先進国の一角で大型企業破綻が発生し、国家が救済できない事態に直面して政策の限界が意識されることだ。

2つ目はバイデン政権の外交方針の転換によって、北朝鮮のような国が地政学リスクを高め、何らかの波乱に至るケース。

3つ目はワクチン効果によってが先進国の経済が次々に好転した直後、金融・財政政策が方向転換するという「疑心暗鬼」が突然生じる可能性だ。

このように考えると、「まさかそれは起きないだろう」とか、現在は視界の外にあるファクターの急浮上が、株価を崩すリスクになると予想している。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

編集:田巻一彦

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up