for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

コラム:コロナ後は低金利継続と株高か、懸念はデッドデフレーション=熊野英生氏

[東京 30日] - 新型コロナウイルスワクチンの接種が遅れていた日本でも、ここにきて急速に接種が加速している。今のペースが持続すれば、菅義偉首相が掲げた目標に沿って10、11月ごろには希望者の全員が接種を完了する可能性が高まっている。

 6月30日、 新型コロナウイルスワクチンの接種が遅れていた日本でも、ここにきて急速に接種が加速している。写真は14日、羽田空港の日本航空施設で行われた職域接種で撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

その時に議論になりそうなのは、コロナ後の日本や欧米の実質経済成長率がどのくらいまで上昇するかである。国際通貨基金(IMF)が今年4月に公表した見通しによると、2021年は日本が3.3%、米国が6.4%、中国が8.4%と高くなりそうだ。

問題は、22年以降のコロナのリバウンドが一巡した後の成長率だ。デジタルトランスフォーメーション(DX)など新しいテクノロジーが各国の全要素生産性を高めるので、高成長を維持できるという見方が1つ。

逆の見方として、各国ともコロナの後遺症があって、低成長を余儀なくされるという予測がある。コロナ禍では、宿泊・飲食・娯楽・交通などのセクターが深刻な打撃を受けた。この状態は、欧米でも日本でも多かれ少なかれ同じである。ロックダウンが長期化して、サービス事業者は金融支援を受けながら耐えしのいできた。

これらサービス業は、潜在的な過剰債務を抱えて、今後は返済を進めていかなくてはいけない。返済=強制貯蓄は、企業収益を新規投資に回しにくくする。すると、債務が投資抑制に働く。潜在的な成長率を下押し、デッド・デフレーションの図式になっていく。こちらの方に向かえば、アフター・コロナの成長率は低くなると考えられる。

<上がりにくい長期金利>

筆者の予想では、DXなどテクノロジーを活用して高成長するセクターと、過剰債務処理に力を奪われて低成長するセクターが当分の間、共存する。製造業は、前者に属していて、コロナ禍でも悪影響を受けにくかった。日本の輸出額はコロナ前を超えて、上昇トレンドを描いている。中国も、世界的なデジタル需要の高まりの恩恵を受けている。

とはいえ、経済全体では過剰債務負担が大きくなっている分、成長率は下押しされるとみた方がよいだろう。そして、債務負担が大きいがゆえに、各国中央銀行の利上げはそれほど進まないと予想される。

足元では、米国の消費者物価(CPI)が上振れて、米連邦準備理事会(FRB)のテーパリング(段階的な資産購入量の削減)や利上げのタイミングの予想が前倒しになっている。製造業が活況であることも、インフレ圧力を強く意識させている。

しかし、日本でも欧米でもサービス業などの過剰債務が大きいため、政策金利をそれほど高く引き上げることはできないと予想する。米長期金利が上昇しにくいのは、そうした実体経済の潜在的弱さが背景にある。

<国際的な資本移動は活発化>

コロナ禍では、セクターごとの景況感に大きな差が生じ、K字型回復と言われた。アフター・コロナも製造業などとサービス業などの間で「二極化」は広がりそうだ。宿泊・飲食・娯楽・交通などは、ワクチン接種が進み、21年秋から22年前半くらいまではリベンジ消費(コロナで抑制された分を上乗せした大幅な消費拡大)で活況となるだろう。

しかし、過剰債務問題が次第にその存在感を強め、悪影響が不動産や金融などのセクターにも下押し圧力となって波及していく。これがアフター・コロナの展望として、低い長期金利、低成長率の根拠になる。

次に考えたいのは、製造業などにとって、金利水準が低過ぎるという問題である。もしも、製造業にとって国内が低成長で、資金調達が容易であるならば、どうやって収益拡大を目指すだろう。

その答えは、海外への資本移動だ。国内市場よりも、成長率が高い新興国などを目指して、生産拠点を増やし、海外法人の買収を通じて収益を拡大させる。実は、日本企業の場合、1990年代から2000年代にかけて、製造業のグローバル化が進んだ。欧米企業でもアフター・コロナは、国内需要の後遺症によって低成長になる中で、製造業の海外展開がさらに進むのではないか。

<株価にとってプラス>

コロナ禍では、日米欧ともに企業と政府が債務残高を増やし、それがアフター・コロナの成長の足かせになるという見方が根強くある。

その点はその通りであるが、成長制約を受けにくかった製造業を過小評価をしてはいけないと思う。確かに世界中がコロナ感染によって打撃を受けているが、相対的に傷の浅かった地域では成長が見込める。例えば、中国はその代表格であろう。

企業は、海外展開を通じて収益を増やし続けることができる。株式市場は、そうした業績拡大の力を背景にして株価を上昇させていくと考えられる。日本株も、東証一部の時価総額の55%は製造業で占められている。日本企業は海外収益によって稼ぐ力を高めており、連結ベースの業績を反映して株価は上昇していくと予想される。

しばらくは、FRBのテーパリングと利上げ予想によって、株価が時々乱高下することがあるだろうが、いずれ「金融相場」から「業績相場」へとスイッチしていく展開に移行していくと考えている。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up