October 8, 2015 / 5:58 AM / 4 years ago

コラム:サプライズなき追加緩和、次回決定か=熊野英生氏

[東京 8日] - 10月に2回ある日銀金融政策決定会合のうち、前半7日は追加緩和を見送った。注目されるのは、次の30日会合である。その日は展望レポートの発表もあり、経済・物価見通しを双方引き下げることはほぼ確実だ。

2016年度前半に2%の物価上昇を達成できそうにないと日銀が判断したときは、黒田総裁は公言した通りに「躊躇(ちゅうちょ)なく調整を行う」ことになる。

筆者が30日に追加緩和がありそうだとみている理由は、そのタイミングで追加緩和をすると、物価の押し上げに大きな効果を働かせることができると考えるからだ。30日には、前回の追加緩和から1年が経つ。つまり、円安効果を一巡させずに、2015年度後半以降にも働かせようとすると、このタイミングでの追加緩和が有効になる。

展望レポートの見通しの下方修正を受けて、追加緩和で物価上昇の期待形成を後押しする必要が増してきたので、日銀は緩和に打って出ると考えると筋が通る。消費者物価は、目下はエネルギー要因のマイナス圧力が強く表れているが、今年11月以降にその圧力が剥落していくので、ここで輸入物価が上昇すると、来年1月以降の消費者物価の上昇率は0%台後半を超えたプラスになっていくことが予想される。

もしも何も行動をしなければ、2016年度前半にかけて劣勢の状況を説明することが一段と苦しくなる。追加緩和の絶好のチャンスを見送ったこと自体が、日銀が醸成する追加緩和効果を弱める方向に作用することも考えられる。

<市場に見透かされた日銀の台所事情>

金融市場では、もしかして9月15日の会合、もしくは10月7日の会合でサプライズ緩和があるかもしれないと、ささやかれてきた。なぜ、人々がサプライズ緩和を警戒したかというと、そこにあるのは「日銀はサプライズを起こさないと影響力のある追加緩和を演出できないだろう」という心理である。

つまり、日銀にはもう追加緩和の影響力を高める緩和余地が残されていないという台所事情が見透かされているのである。

黒田総裁は、インフレ予想を定着させていくと語っているが、追加緩和の影響力を高めるツールが底をついている。だから、ごく短期間で消滅してしまう奇襲攻撃のインパクトで円安を促進しようというのは矛盾にほかならない。

当初の黒田日銀は、円安で企業収益を底上げして、それが賃上げに結びつくことで消費者物価が上がるとシナリオを描いていた。しかし、賃上げは思ったほど物価上昇を誘発せず、円安を促す追加緩和を何度も行わなくてはいけなくなったのが、弾薬庫の武器がなくなった背景だ。円安だけで物価上昇を誘導するという短期決戦志向のせいで、現在のように深みにはまったわけである。

<政治の思惑で外堀が埋まるリスク>

7日の決定会合は、安倍内閣改造と重なった。新閣僚が決まると、補正予算を組んで、環太平洋連携協定(TPP)発効を念頭に置いた農業対策や、景気対策を行おうという流れになるだろう。すると、日銀にも景気対策の一翼を担ってもらわなくては困るという意見が出てくる可能性はある。

30日の決定会合は、そうした目に見えない圧力が働く中で、追加緩和を検討することになろう。

もっとも、追加緩和にはマイナス要因もある。これ以上の円安は、輸入物価の上昇を嫌う生活者から反発を受けることだ。元来、こうした反発は金融政策には関係ないことだが、政治的な思惑が強まると無視することはできなくなる。

6月10日に黒田総裁の発言が取り上げられて、1ドル=125円の為替レートが円高方向に跳ね返されたことは記憶に新しい。無言の圧力として「円安は1ドル=125円が限度」という「黒田ライン」が意識されたこともあった。

<最大のかく乱要因はFRBの年内利上げ>

30日に日銀が追加緩和を行うかもしれないと考えると、最大の障壁になりそうなのは、米連邦準備理事会(FRB)の利上げがかく乱要因になることだ。米指標は、雇用統計もISM製造業指数も徐々に勢いをなくしている。強い経済指標を前提にした年内利上げはできそうにない。

そうなると、米利上げによって株価が乱高下して、リスク回避の円高圧力が生じるリスクはある。日銀にとっては30日に追加緩和をしても、その影響力はFRBの利上げに伴う混乱によってかき消されてしまうことになりかねない。

しかし筆者は、FRBの年内利上げ実施は厳しいだろうとみているので、日銀は緩和するならば早い方がよいと判断するのではないかと考えている。

日銀は、追加緩和の影響力を2013年4月や14年10月のときのように高めることはできないだろうが、それでも追加緩和のメッセージ性に重きを置いて、緩和を決断するだろう。追加緩和の内容は、長期国債の買い増しなど特段サプライズに依存しないものになると考えられる。

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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