July 9, 2020 / 6:15 AM / a month ago

コラム:コロナ第2波、経済回復途上で到来なら金融危機も=嶋津洋樹氏

[東京 9日] - 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続くなか、国内では東京都を中心に新規感染者が再び増加へ転じたことで、第2波への警戒が強まっている。日本以外でも、米国ではニューヨーク州での感染拡大に歯止めがかかる一方、全体としては増加ペースが加速。中国や韓国は相対的に落ち着いているとはいえ、感染拡大の第2波に対する警戒は根強い。

 7月9日、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続くなか、国内では東京都を中心に新規感染者が再び増加へ転じたことで、第2波への警戒が強まっている。写真は3月28日、東京都内で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

もっとも、死亡者数をみると、新規感染者数の増加が依然として続くなかで、やや頭打ち感がみえる。具体的な要因は必ずしも明らかになっていないようだが、重症化しやすい高齢者などの感染が抑制されていることや、時間の経過とともに新型コロナに対する知見が深まったことなどが指摘されているようだ。

日本経済新聞(電子版)によると、トランプ米大統領は死亡者数の減少を受けて、「事態が改善している」と発言。それを受けて、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が「死者数に着目することで『間違った自己満足に陥ってはいけない』とクギを刺した」と報じられている。筆者もさすがに「事態が改善している」とは思わないが、今後も死亡者数の抑制が続くとすれば、徐々に第2波への警戒感も緩和する可能性はあるだろう。

<リスク資産にも影響>

筆者は3月中旬以降のリスク資産の動向について、産油国が価格競争を回避する姿勢を示し、原油相場が安定したこと、各国政府・金融当局が大規模なマクロ経済政策を早いタイミングで打ち出す一方、実体経済の落ち込みが想定ほど深刻ではなく、持ち直しも円滑だったことなどが好感されたと考えているが、死亡者数の落ち着きを受けて、第2波への警戒感が緩和したことも材料視された可能性がありそうだ。

とはいえ、今後も新型コロナの新規感染者数が増加する一方、死亡者数が抑制ないし、減少し続けるかはわからない。実際、国立感染症研究所感染症情報センターのウェブサイトでは、スペイン風邪について、「第2波は10倍の致死率」で、「15―35歳の健康な若年者層においてもっとも多くの死がみられ(た)」と説明されている。新型コロナについて、依然としてわかっていないことが多いとすれば、やはり第2波への警戒は怠れないだろう。

<乏しい政策余力>

それどころか、第1波の影響の深刻さを踏まえれば、仮に第2波の人的、経済的な被害が限られたものであったとしても油断は禁物だ。すでに多くの国では政府が大規模な財政支出に踏み切り、中央銀行は政策金利の大胆な引き下げや資産購入を実施。追加的な対策を打ち出そうにも第1波の時ほどの余裕は残っていない可能性がある。

とくに経常収支が恒常的に赤字で、資金の多くを海外に依存する新興国には注意が必要だ。そうした国で財政赤字を拡大すれば、通常は長期金利が上昇し、資金流入を促すが、今回は中央銀行が金融緩和でそれを相殺。結果として通貨が下落し、インフレ圧力が高まりかねない。実際にインフレ率が中央銀行の目標を上回れば、財政拡大と金融緩和という現状のポリシーミックスは見直さざるを得なくなり、それを放置すれば、金融市場からの圧力が増すだろう。最悪の場合、危機に陥る可能性すらある。

6月のインフレ率が2カ月連続で加速したトルコや、原油のほぼすべてを輸入に依存するインド、出稼ぎ労働者の送金が経済を支えるフィリピンなどの通貨や資金フローからは目が離せない。

こうした危機の芽は企業や家計にも存在する。いくら財務体質が強固な企業や家計であっても、経済活動が急速かつ大幅に停滞すれば、その悪化は避けられない。その立て直しに十分な時間があれば良いが、感染拡大の第2波は今秋にも来ると言われるなど、通常の景気循環よりも短期となる可能性が高い。しかも、「3密」回避などの「新しい生活様式」への対応も求められる。

景気が十分に回復しないままでの第2波は、たとえ、その人的、経済的な影響が第1波に比べて限られたものとなっても、深刻な景気後退や金融危機など、悲惨な結果を招くリスクをはらむ。

<いたるところで「分断」加速>

また、第1波をきっかけに顕在化した「分断」が第2波への対応を困難にする可能性もある。たとえば、米国での人種差別に対する抗議活動は、一部が暴徒化。筆者はその背景に根強い人種差別への不満のみならず、新型コロナの感染拡大と、それを受けた移動制限や都市封鎖に伴う不安の高まりもあったと考えている。米大統領選を控えて、政治的な対立が先鋭化しやすいなか、景気の深刻な落ち込みで経済的な格差が拡大したことも加わり、当面は合意を目指した協議よりも、単なる言い争いが多くなりそうだ。

国家間の「分断」も深刻だ。とくに中国を巡っては、米国を中心に新型コロナの発生源として責任を追及する動きがあるほか、欧州は中国の我田引水ともいえる「マスク外交」に冷ややかな視線を送る。主要先進国がマスクのみならず、医薬品やワクチンを確保しようと東奔西走する姿は、国際協調という言葉がいかにむなしいかを示すだろう。筆者は第2波を前に各国が足並みをそろえられるか不安に思っている。第1波への対応で、各国のマクロ経済政策の余力が大幅に削られたとすれば、なおさら不安にならざるを得ない。

リスク資産への投資では引き続き、アップサイドよりもダウンサイドを意識した、下値に堅いポートフォリオを構築する必要があると考えている。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

嶋津洋樹氏

*嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントなどを経て2016年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネージャーとしての経験を活かし、経済、金融市場、政治の分析に携わる。景気循環学会監事。共著に「アベノミクスの真価」。

(編集:橋本浩)

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