August 29, 2014 / 5:32 AM / 5 years ago

コラム:ハリウッドで「悪役」はロシアの理由

[27日 ロイター] - クリミア併合やウクライナ東部の親ロシア派への武器供与疑惑などで、米国人の「新ロシア帝国」に対する悪のイメージが正しいことが立証された。

 8月27日、冷戦が終わっても、ハリウッド映画のなかでロシアはいまだに悪者でしかない。写真は映画「エアフォース・ワン」で米大統領専用機をハイジャックするロシア人役のゲイリー・オールドマン(左)と大統領役のハリソン・フォード(右)(2014年 ロイター/Courtesy of Columbia Pictures)

クリミア併合以前でさえ、60%以上の米国人がロシアを世界の悪者だとみなしていた。

その原因は政治によるところが大きいが、真に責めを負うべきは映画の都ハリウッドだ。冷戦が終わったとはいえ、映画会社の幹部らはその事実を無視すると決め込み、ロシアが友好的に描かれることはなかった。一方、ロシアはそうした過去を払しょくしようと努めてきたかもしれないが、ハリウッド映画のなかで同国はいまだに悪者でしかない。

例を挙げると、ソ連崩壊から6年後の1997年に公開された映画「エアフォース・ワン」で米大統領専用機をハイジャックするのはロシア人だし、同じく97年作品「セイント」の悪役はロシアの石油王だ。

筆者は当時、信じられない思いでこうした映画を見たものだ。「なぜいまだにロシアは米国の敵なのか」と。

2000年のプーチン氏のロシア大統領就任は、同国の「資本主義」の産物であり、また、ロシア資本主義と米国型モデルとの強い結び付きの結果とも言える。だが、プーチン大統領はロシア人の自尊心を取り戻すべく、共産主義時代のような方針を打ち出し、反政府的人物や「無責任」なメディアに対する取り締まりを強化した。

しかしながら、米国人が信じているように、プーチン大統領は本当に究極の悪者だったのだろうか。

ロシアにとって厄介なのは、ハリウッドが同国に勝る悪役がいないと考えていることだ。キューバのフィデル・カストロ氏は年齢とともにその影響力は薄れ、北朝鮮の指導者一族も西側を脅しこそすれ、実際の攻撃実行能力に欠けている。一方、中国は貿易相手国としてあまりに強大だし、アラブ諸国の場合は敵として描くには政治的に不適切であるだけでなく、面白がる対象とするには恐ろし過ぎる。

ロシアが常に誹謗中傷の対象とされてきた理由は他にもある。第一にロシア人は白色人種であることから、米国でマイノリティーではないこと。第二に、イラクなどの国際情勢やグローバル経済において米国のリーダーシップが行き詰まると、ロシアが米国にとって、冷戦で勝利した記憶を心地よく呼び覚ましてくれる存在となることだ。米国人は自国が世界で一番であり、自分たちが優位な点は数多くあると考えているため、超大国ロシアを標的にした方が大いに楽しめたのだろう。

英国のスパイが主人公である人気映画シリーズ「007」のジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグと身体的特徴が似ていることを考えると、旧ソ連国家保安委員会(KGB)のスパイだったプーチン大統領が現代ロシアのボンドになりたかったと考えていたとしてもおかしくはない。だが、プーチン氏はむしろボンドの敵役の側に位置づけられてしまった。

ゲイツ米国防長官(当時)は、冷戦について、それほど複雑ではなかった時代へのノスタルジアがすべてを満たしてくれると語っていたが、この言葉にすべてが集約されるのかもしれない。

米ロ関係が良好だった21世紀最初の10年間も、ハリウッドは冷戦時代と変わらぬ姿勢を貫いた。

2007年の「ライラの冒険 黄金の羅針盤」に登場する悪役は、ロシア語を話し、長いひげとコサック帽をかぶっっており、子どもたちに反ロシア的メッセージを潜在的に与えかねない。

また、2010年の映画 「ソルト」では、アンジェリーナ・ジョリー演じる主人公は、米国を陥れようとするKGBの計画を暴こうと戦う。アニメ「怪盗グルーの月泥棒 3D」では、主人公で「世界一の悪党」を目指すグルーはロシア語のアクセントで話し、グルー(Gru)いう名前も軍事スパイや特殊部隊を監督するロシア連邦軍参謀本部情報総局のロシア語の頭字語となっている。

2012年の米大統領選で共和党候補だったミット・ロムニー氏が、ロシアは米国にとって地政学的な第一の敵だと発言し、冷戦を扱ったハリウッド映画の見過ぎだと、当時はロシア人からも冷笑された。

だが、最近のウクライナ情勢をみると、ロムニー氏がそれほど間違ってはおらず、ロシアが問題であることが示されている。今となってはまるでハリウッドに先見の明があったかのようだ。

ハリウッドといえば最近、オバマ大統領は「エンターテインメントは米外交の一部である」と認めた。ロシアに関していうなら、そのような外交は無残にも失敗している。

この夏に放送された反ロシア的な連続ドラマ「The Last Ship」と「Legends」や、映画「スパイ・レジェンド」(日本公開2015年1月17日)によって、文化的な憎しみがさらに増幅する兆しを見せている。

一方、ディズニー映画「ザ・マペッツ2/ワールド・ツアー」(同9月6日公開)は、次世代の米国人がロシア人は敵だとみなす心構えを持たせることに貢献している。

*筆者は米ニューヨーク市にあるニュースクール大学の国際関係学教授で、旧ソ連の元最高指導者フルシチョフ氏のひ孫にあたる。著書に「The Lost Khrushchev: A Journey into the Gulag of the Russian Mind」など。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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