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コラム:HSBCの「英国残留」、誰も喜ばない可能性
February 15, 2016 / 4:56 AM / in 2 years

コラム:HSBCの「英国残留」、誰も喜ばない可能性

Peter Thal Larsen

 2月15日、英HSBCの本社の所在地をめぐる現状維持の決定は、全ての人を満足させようとすると、結果的には誰もが満足できないという典型例になる可能性がある。写真はHSBCのロゴ。パリで昨年6月撮影(2016年 ロイター/Christian Hartmann)

[香港 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英HSBC(HSBA.L)の本社の所在地をめぐる現状維持の決定は、全ての人を満足させようとすると、結果的には誰もが満足できないという典型例になる可能性がある。

他の金融センターに長々と浮気心をみせた後で、HSBCは本社をロンドンのまま維持することを選んだ。英国は一段と銀行に友好的な国になっており、HSBCの元本拠地である香港には不確実性がある。それでもグループが表立って慎重な熟慮を重ねた結果、両都市が不当な扱いを受けたと感じるおそれもある。

10カ月間の検討期間中、時価総額で欧州最大のHSBCはトロント、パリなど地理的条件の異なるさまざまな都市に視線を送った。競争力、安定性、将来の成長性など11の選考基準に基づき都市をランク付けしたのだ。BREAKINGVIEWSは昨年、こうした要因に基づき独自の計算を行い、シンガポール、香港、そしてカナダまでもが現在のロンドンよりも魅力的だとの結論を下した。しかし、香港と上海に約151年前に設立されたHSBCにとって、中国への回帰のみが現実的な選択肢だった。

弁護士費用や他のアドバイザーに約3000万ポンドを費やし、100ページ以上の文書を精査した結果、HSBCの取締役会は全会一致でコストや移転の複雑さの方が、メリットよりも大きいと結論付けた。

これはロンドンが以前より快適な場所になったことが一因だ。ジョージ・オズボーン財務相は、英国が中国最大の外資系銀行を失えば、中国指導部の歓心を買うことははほとんど意味がないことに恐らく気付いていたのだろう。財務相は、HSBCとライバルの英銀大手スタンダード・チャータード銀行(STAN.L)に特に負担の大きい銀行のバランスシートに対する課税を引き下げた。こうした中で政策決定者たちはロンドンが主要な金融センターであり続けることを支持して声を上げた。

一方、HSBCが1992年まで本拠地にしていた香港は、魅力が低下した部分もある。中国の景気減速と金融政策の不透明感によって、現在の中国は好ましい場所としてはやや遠い存在になった。旧英国植民地としての香港の法制度は一段と不安定とみられる。香港が2047年に再び中国と一体化されるまでに状況が改善する可能性は低い。

しかし、香港はHSBCの第2の市場であり続けるし、同行は珠江デルタ全域で重点的な投資を行っている。戦略の劇的変化がなければ、HSBCの中国事業は拡大し続けるだろう。HSBCはもはや3年ごとに本社の所在地の見直しを行うことはない。現状維持の決定に対して中国は冷たい態度を示されたと感じるかもしれないし、ロンドンもものすごく愛されているのだとは感じないかもしれない。

●背景となるニュース

*HSBCは15日、引き続き英国に本社を置くことを決定したと発表した。取締役会が全会一致で決議した。香港証券取引所に出した声明で明らかにした。

    *今回の決定は、同行の既存の存在感や、規制上の頑健性、経済的重要性、将来の成長、移転に伴う財務面でのインパクトなどを含む基準に対して所在地ごとの詳細な評価を経て行われた。

    *最近の見直しの段階において、HSBCは英国と香港に分析対象を絞っていた。

    *HSBCのダグラス・フリント会長は「特定の基準に対して複数の地域について評価を行った結果、アジアに戦略的な重点を置くと同時に、世界の金融センターの1つであるロンドンに我々の拠点を維持するという組み合わせが、両立可能なだけでなく、顧客や株主に最善の結果をもたらすことが明確になった」と述べた。

    *スチュアート・ガリバー最高経営責任者(CEO)は「英国に本社を置き、重要なアジア太平洋地域で事業を行うことは双方の当社のステークホルダーに最善のものを提供する」としている。

    *筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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