January 22, 2019 / 2:21 AM / 25 days ago

コラム:中国ファーウェイ、打ち砕かれる「5G世界制覇」の夢

[香港/ロンドン 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が危機に陥っている。世界各国で「法の壁」と高まるセキュリティー上の反発に包囲されている。だが次世代ワイヤレス通信競争が加速するにつれ、「ファーウェイ封じ込め」の代償は高くつきそうだ。

 1月18日、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が危機に陥っている。写真は中国国際情報通信展覧会での同社のブース。北京で昨年9月撮影。提供写真(2019年 ロイター/China Stringer Network)

●各国政府はなぜそんなにファーウェイを警戒するのか

非上場のファーウェイは中国のテクノロジー大手企業だが、その世界的影響力と浸透力はあなどれない。中国人民解放軍出身の任正非(レン・ツェンフェイ)氏(74)が創業した同社は世界最大の通信機器メーカーに成長し、2018年の売上高は1090億ドル(約12兆円)超だとしている。同社はまた、韓国サムスン電子(005930.KS)に次いで世界2位のスマートフォンメーカーでもある。

だが最も重要なのは、ファーウェイが次世代高速通信「5G」技術において最先端にあることだ。同社の台頭により監視の目が強化された。任氏が中国共産党や軍と築いたとされる緊密な関係が、同社の海外進出を悩ませている。同社が自社製モバイルネットワークに「裏口」を組み込んで、中国政府がアクセスできる可能性について各国当局者が懸念を表明しているためだ。

ファーウェイは中国政府の干渉を受けてはいないと主張する。めったにメディアに登場しない任氏は16日、報道陣に対して、そうした懸念を自ら否定した。

米国は、モバイルインフラの更新に向けて準備を進める同盟各国に対して、圧力を強めている。ファーウェイは30件を超える5G契約を結んだとしているが、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が昨年11月報じたところによると、米国政府はサイバーセキュリティー上のリスクを理由に同盟諸国に対し、中国製機器の使用をやめるよう求めている。

米中貿易摩擦が高まる中、昨年12月に事態はさらにエスカレート。任氏の娘でもあるファーウェイの孟晩舟(メン・ワンツォウ)最高財務責任者(CFO)が米国の対イラン制裁違反の疑いでカナダ当局に逮捕された。同CFOは米国に引き渡される可能性がある。

●懸念は妥当か

それはなんとも言えない。2012年の米下院調査は、ファーウェイと中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)(000063.SZ) (0763.HK)について、国家安全保障に脅威をもたらすため禁止すべきと結論付けた。ただし、機密扱いとされていない同報告書は詳細な証拠を一切示していない。

WSJは16日、米検察当局が、米携帯大手TモバイルUS(TMUS.O)などから企業秘密を窃取した疑いでもファーウェイを捜査していると報じた。ただしここで問題となっているのは、スマートフォンの品質試験で使われていた技術である。

中国の国家情報法が疑念をあおっているのは明らかだ。中国の企業や市民が「国家の情報活動」に協力するよう同法は義務付けている。これにより、ファーウェイやZTEの公式声明が何であれ、もし中国政府から要請されればデータの引き渡しを義務付けられる可能性が高まった。

今のところ、オーストラリアとニュージーランドが米国に倣い、自国の5Gネットワーク構築において中国機器の使用を禁じている。日本や英国、ドイツなど主要市場も制限することを検討している。

一方、東欧や中欧でも問題が起きる可能性がある。ポーランド当局が8日、ファーウェイの中国人社員と自国の元安全保障当局者をスパイ容疑で逮捕したのを受け、同国はファーウェイ製品の使用制限を検討している。

●携帯会社は他の5Gサプライヤーを使えばいいのでは

それは可能だが、問題は、ファーウェイ、ZTE、スウェーデンのエリクソン(ERICb.ST)、フィンランドのノキア(NOKIA.HE)のわずか4社がモバイルインフラ市場を独占しているということだ。IHSマークイットによると、2017年の世界売り上げ約370億ドルの9割以上を同4社が占めていた。

とりわけファーウェイが低価格戦略で市場シェアを伸ばして以来、こうした状況は携帯電話会社にとって大きな悩みの種となっている。ファーウェイ製品を禁じるオーストラリアの決断に対する批判的な意見として、例えば、ノキアやエリクソンに乗り換えるとコストが最大3割増しになるとの主張もある。

もう1つは互換性の問題だ。ジェフェリーズの推定によると、現在欧州で使用されている4G機器市場において、ファーウェイ製品は4割のシェアを占めている。従来のネットワークを、異なる機器を使って新たなネットワークにつなげることは、リスクを伴うだけでなく、コストもかかる。

中国企業が排除されたことで、ノキアやエリクソン、さらには意欲的にシェア獲得を狙う韓国サムスン電子は、もし供給不足を補うことが可能だと仮定すれば、世界の通信会社に対する価格決定力を高めることになるだろう。

近年、ファーウェイとZTEにより利ざやの縮小を余儀なくされていた北欧勢は、長期的に見れば得をする可能性がある。一方、消費者は5G使用においてより多くの通信料を支払うことになるだろう。

●中国勢が欧州から完全排除される可能性は

欧州連合(EU)の全加盟国が同意する事項を見つけることは困難であり、中国勢の排除も同様だ。EUは「懸念」すべきだとテクノロジーを担当するEU欧州委員会のアンシプ副委員長は語った。

一方、フランスのルメール財務相は、自国最大の通信会社オランジュ(ORAN.PA)が5Gネットワーク構築にあたり、ファーウェイには頼らないとしているにもかかわらず、同社による投資を歓迎すべきだと述べた。

措置は国ごとで分かれるようだ。例えば、英通信大手BT(BT.L)は5Gネットワークの主要部品からファーウェイを締め出している。

それでもファーウェイ排除で被る損失という点において、欧州の通信会社の方が、米国の同業他社よりも失うものが大きい。

欧州大陸の通信市場はより細分化されている。つまりそれは低価格を意味し、新しいネットワーク投資からそこそこのリターンを生むことさえ困難だ。バーンスタインのアナリストは、同セクターが2021年に投資から得るリターンはわずか8%だと予想する。それは資本コストをかろうじて上回る程度にすぎない。「ファーウェイ外し」は次世代5Gネットワークの通信料を割高にする可能性すらある。

●次に何が起きるか

最終的に、ファーウェイの運命は米国次第だろう。中国通信機器の使用を禁止するよう他国に圧力をかけることと同様に、米議員が提案したように米テクノロジー企業に対しファーウェイ向けの販売を制限することは、同社の事業を損なうことになるだろう。

孟CFOの米国引き渡しが現実となれば、同社に決定的打撃を与えるかもしれない。また、中国政府の反応は、良くも悪くも米中関係を一変しかねない「ワイルドカード」となるだろう。

政府も企業も、そして消費者も、5Gがもたらす副産物に備えるべきだ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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