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コラム:ドル110円視野へ、国際収支も円高示唆=亀岡裕次氏

[東京 25日] - 黒田日銀総裁が6月10日、「実質実効為替レートでは、かなり円安の水準になっている」「ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」と発言して以来、ドル円は米5月雇用統計発表後の6月5日ピーク125.86円を超えていない。

 12月25日、大和証券・チーフ為替アナリストの亀岡裕次氏は、2016年のドル円相場は、世界景気減速によるリスク許容度の低下、利上げ期待の後退による米長期金利の低下、さらに日本の国際収支が円高方向に作用し、1ドル=110円近辺も視野に入るだろうと予想。提供写真(2015年 ロイター)

円の名目および実質実効為替レートは2015年6月をボトムに反発し、年後半はドル円でこそ程度は軽いもののクロス円を中心に円高が進んだ。

すでに円高は始まっており、円安基調に戻る可能性は低いだろう。2016年の為替市場は、米国を含む世界景気減速によるリスク許容度の低下、利上げ期待の後退による米長期金利の低下から、110円近くへと円高が進行すると予想している。

<国際資本フローは円高に働き始めている>

円高に作用する要因には、日本の国際収支もある。経常収支と金融収支(外貨準備増減を除く)を合わせると、現在も資本流出超過である。ただし、これをもって資本フローが円安に作用しているとは言い難い。

2015年の年間ベースの資本流出超過幅は、5月までの5.8兆円をピークに縮小に転じ、10月まででみると2.6兆円となっている。明らかに日本からの資本流出幅は縮小しているのだ。過去には、12年2月に資本流入幅がピークアウトして円安傾向に転じたケースもあり、資本流出入と為替との相関性は高い。15年6月以降は、経常収支の資本流入拡大が金融収支の資本流出拡大を上回り、資本流出幅の縮小とともに円高傾向に転じた。金融派生商品収支などが、金融収支の資本流出を抑える一因となった。

金融収支の構成項目のなかで、証券投資収支は資本流出超過幅の拡大傾向が続いている。対内証券投資の資本流入幅が2015年4月から頭打ちの一方、対外証券投資の資本流出幅が拡大しているためだ。対内証券投資については、世界的に株価がピークアウトするなか、対内株式投資が縮小している。15年6月までの円安・株高局面では、海外投資家の日本株投資の多くが為替ヘッジされていたとみられるだけに、対内株式投資増加の円高効果も、対内株式投資減少の円安効果も小さいだろう。

一方で対内債券投資が拡大しているが、中長期債投資は増えておらず、短期債投資が拡大している。利回りの低い短期債への投資増加は、価格上昇期待や円高期待によるものではなく、ドル・プレミアムが上昇して海外投資家のヘッジ付投資が有利になったことによるものではないか。円高効果は小さいとみられる。

<16年後半に対外債券投資が減少する可能性>

対外証券投資については、対外株式投資の増加が頭打ちになりつつある。2015年6月に主要株価や円安がピークアウトした後に株価先高観や円先安観が弱まったこと、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用改革による外国株式運用比率の上昇が進んで投資増加がペースダウンしやすくなったことなどが原因として考えられる。

GPIFの運用委託先でもある「銀行等の信託勘定」の対外証券投資は頭打ちになっている。対外株式投資による資本流出は今後も拡大しにくいだろう。

一方、対外債券投資は2015年6月に縮小した後、中長期債を中心に拡大している。円安が進むと対外債券投資が減少し、円高に振れると投資が増加する傾向にある。つまり、為替相場に逆張り的に対外債券投資が変動しているわけで、これは国内投資家が円安見通しと円高見通しのどちらかに大きく偏っているわけではないからだ。

円高時には対外債券投資の増加が円安要因となり、円安時には対外債券投資の減少が円高要因となる。ただし、円安更新せずに円高傾向が1年以上続いた場合、逆張り的ではなくなり、円高でも順張り的に対外債券投資が減る方向に変化することが多いので、2016年後半の対外債券投資の動向には注意が必要だろう。

2015年後半に債券投資を中心に対外証券投資が増加したのは、投資家部門別には「銀行・信託の銀行勘定」、建値通貨別には「ドル建て」の対外証券投資が増えたことが主因だ。銀行勘定の対外証券投資は、非居住者から調達したドル資金を非居住者のドル建て債券で運用するなど、為替変動リスクを伴わない取引が多くを占めるので、為替相場への影響は小さい。銀行勘定を除く部門の対外証券投資増加が鈍く、銀行勘定の対外証券投資が増えるだけでは、円安効果は小さいと言える。

<資本流出から資本流入に傾き円高圧力強める要因に>

為替ヘッジした対外債券投資は2016年度には減る可能性がある。15年12月の米利上げを前にドル調達圧力が増し、円を担保にドル調達する追加的なコストが上昇。その後、ドル・プレミアムは低下したが、日米短期金利差が拡大し、為替ヘッジコストは1年で140ベーシスポイント(1bp=0.01%)程度に高止まりしている。日米2年国債金利差は100bp程度とヘッジコストを下回るので、米短期債へのヘッジ付投資は割に合わない。一方、日米5年国債金利差は170bp程度、10年国債金利差は200bp程度と為替ヘッジコストを上回るので、米中長期債への投資は堅調に推移している。

しかし、今後は米利上げで日米短期金利差が一段と拡大し、為替ヘッジコストが上昇する一方で、米景気減速懸念や米利上げ期待後退から米長期金利が低下し、日米長期金利差が縮小する可能性がある。米金利曲線のフラット化によりヘッジ付投資が不利になっても、円高リスクが高まるなかではヘッジ比率を下げるわけにもいかないので、ヘッジ付外債、オープン外債ともに対外債券投資は次第に減りやすくなるだろう。金融収支の資本流出が鈍化し、日本の国際収支が経常収支に連動するように資本流入に傾くことが、円高圧力を強める可能性が高い。

<ドル円の変動率は拡大に転じる公算大>

ドル円変動の1サイクルは8年前後のケースが多く、目下のところ今回も2007年6月の円安ピークから8年後の15年6月に円安ピークをつけている。ドル円は11年10月に底打ちし、15年6月まで3年8カ月上昇したが、円安が4年目を迎えた15年は円安のピークを迎えやすい年だった。

なお、相場格言は、「未(ひつじ)辛抱」、「申(さる)酉(とり)騒ぐ」。2015年は、ドル円の年初値に対する年間変動率が、ザラ場ベースで8.4%、日次(NY正午)ベースで7.3%と非常に小さく、まさに「未辛抱」の年だった。

これほど年間変動率が小さい年は連続しにくいので、2016年は「申騒ぐ」の格言通りに年間変動率が大きくなる可能性が高い。

*亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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