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コラム:輸出競争力むしばむ「日本病」、リスク取らない経営者
2017年8月16日 / 08:27 / 3ヶ月後

コラム:輸出競争力むしばむ「日本病」、リスク取らない経営者

[東京 16日 ロイター] - 日本の輸出競争力に陰りが出ている。アベノミクス効果で円安基調が定着しても、輸出額は過去のピークを下回ったままで、経常黒字に占める貿易黒字の割合は20%程度にとどまっている。

 8月16日、日本の輸出競争力に陰りが出ている。アベノミクス効果で円安基調が定着しても、輸出額は過去のピークを下回ったままで、経常黒字に占める貿易黒字の割合は20%程度にとどまっている。都内の港で2016年撮影(2017年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

この背景にあるのは、日本企業の経営者を覆っている「リスクを取らない」心理にあると指摘したい。リスク回避の材料を並べ立てることに秀でているリーダーがひしめいている状況を「日本病」と名付けたい。病状は相当に深刻だ。 

<伸びない輸出総額>

足元の企業業績は、上振れ方向に動いているようだ。一部の報道では、2018年3月期の最終利益は、2期連続で過去最高を更新。5社に1社は最高益を出す見通しという。

だが、国内市場の収縮が進み出している中で、重視されるべき「輸出競争力」に黄信号が点灯している。

世界経済は、米国や中国の堅調な伸びなどを背景に拡大傾向がはっきりしてきたが、日本の輸出額は、2016年10─12月期が18兆3723億円、17年1─3月期が19兆0436億円、17年4─6月期が18兆2640億円と横ばい傾向となっている。

輸出総額(暦年)を振り返ってみると、リーマンショック前の2007年までは順調に増加し、その年に83兆9314億円を記録した。

しかし、それから10年たっても、輸出額はピークを回復できないまま。ここ3年は14年の73兆0930億円、15年の75兆6139億円、16年の70兆0358億円と停滞感が強まっている。

また、2017年上半期の経常黒字は10兆5101億円だったが、貿易黒字は前年同期マイナス11.7%の2兆0531億円と経常黒字全体の19.5%にとどまっている。大半は、第一次所得収支の9兆7622億円が稼ぎ出した。

日本企業の現地生産化が進んでいるとはいえ、売れる製品群が減少していることも響いている。典型は電機産業の衰退だ。かつては日本企業の液晶に占めるシェアは群を抜いていたが、今は見る影もない。

「ワールド・エコノミック・フォーラム」の2016年国際競争力ランキングによると、日本は前年の6位から8位に後退した。

<花形から転落した電機業界の惨状>

背景にあるのは、リスクを取りたがらない企業経営者のマインドにあると指摘したい。確かにリーマンショック後、鉱工業生産は急速に落ち込み、日本経済はマイナス成長に転落した。

しかし、その後も数々の制約要因を「六重苦」などと呼びながら、積極的な設備投資を控える企業が続出。最近は「少子高齢化」による国内市場の縮小を「大義名分」に掲げ、投資しないことが当たり前の風潮がはびこっている。

国内で勝負しないのであれば、現地生産か輸出で活路を開いていくしかないが、輸出金額の推移をみれば、日本の産業界が全体として「沈滞化」の道を歩んでいるのは間違いない。

日本人経営者が総退陣し台湾企業に買収された途端に業績が急回復した電機メーカーや、債務超過の瀬戸際で子会社の売却が進まない別の電機メーカーの対応を見ると、「決断しない」理由をたくさん列挙して、行動しないリーダーのいる企業の未来は暗いと言っていいだろう。

<まん延する日本病>

最近の韓国では、新政権の意図した最低賃金の引き上げによって、人件費カットの目的で機械化や自動化の動きが急速に進展しているという。

日本では人手不足という要因で、同じように人件費の高騰が企業業績に影響を及ぼすようになっているが、韓国の一部でみられるような「無人コンビニ」の実証実験などの動きは、まだ出てきていない。

今までとは非連続な対応に踏み切る決断をするリーダーが、日本の産業界には少ないことが、ここでも示されている。

行動しない理由を挙げて、投資や賃上げなどに動かないリーダーが増える現象を「日本病」と名付けたい。

この病気は直すのが難しく、今の日本では症状が相当に進行している。

<AI活路に設備投資の連鎖目指すべき>

6月9日のコラムでも指摘したが、企業の利益剰余金が過去最高の390兆円まで積み上がっているのは、企業経営者の「無策」が露呈した結果だろう。

そこで提案だが、今後の生産性上昇の行方に大きな影響を与える人工知能(AI)を業務の改善に使った企業への優遇策を打ち出し、そこを起点に設備投資の波を作り出すべきだと考える。

実際、AIは思いがけない効果を発揮する。NTTドコモ(9437.T)、東京無線、富士通(6702.T)などが今年3月までに行ったAIを活用したタクシーの配車ルートの実証実験では、乗車ニーズの予測に関し、相当の効果が出たという。

日本病には特効薬はないが、「まず、行動しよう」というエートスの広がりが、症状の進行を抑えると思う。

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