May 15, 2019 / 9:12 AM / 7 months ago

コラム:米中覇権争いは長期化覚悟を、世界的な供給網に激変も

[東京 15日 ロイター] - 米中通商交渉の早期合意観測が市場に根強く存在するが、「根っこ」に米中覇権争いの構図があるだけに、長期化を覚悟すべきだ。それを裏付けるようにトランプ米大統領が国家安全保障上のリスクをもたらす企業の通信機器の米国内使用禁止を定めた大統領令に署名すると報道された。

 5月15日、米中通商交渉の早期合意観測が市場に根強く存在するが、「根っこ」に米中覇権争いの構図があるだけに、長期化を覚悟すべきだ。上海の食品・飲料総合国際見本市で14日撮影(2019年 ロイター/Aly Song)

その延長線上には、半導体内製率が20%という中国の「アキレス腱」を意識し、半導体や同製造装置の輸出を制限するカードを切ることもありそうだ。

こうした事態の継続は、海外企業の中国からの「移転」現象を生み、世界的なサプライチェーンの激変を招くことにもつながる。そのケースでは、市場価格の変動幅も大きくなり、日本経済や日本株の受ける打撃は、足元で市場関係者が想定している範囲を超えるリスクがある。

<米大統領令の波及効果>

ロイターの14日(米東部時間)の記事[nL4N22Q5CF]は、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]など特定の企業名や国を名指ししていないものの、「国家安全保障上のリスク」を理由に、それに該当する企業の通信機の使用を米国内で禁止する大統領令にトランプ大統領が今週、署名すると伝えている。

トランプ大統領は昨年8月、ファーウェイと中興通訊(ZTE)(0763.HK)(000063.SZ)との米政府の取引を制限する法案に署名。米連邦通信委員会(FCC)は今月9日、中国移動(0941.HK)による米国市場参入を全会一致で拒否していた。

21世紀の経済、軍事、社会構造を形成しているのは、人工知能(AI)やビッグデータ、IoT(モノをつなぐインターネット)などを駆使したデジタル・システムだ。その死命を握っているのは通信速度と情報量であり、5Gは血管とも言える。

そこを中国が握ってしまえば、最終的に軍事的な対米優位も確立し、中国の覇権が名実ともに打ち立てられるとの危機感が、米国にはあるとみられる。

<早期合意なら、暫定的意味合いも>

今回の米中通商交渉は、その全体的な覇権争いの一部にすぎず、仮に合意に達したとしても、ベトナム戦争時のパリ和平協定のように暫定的な役割しか果たさない可能性がある。

米国は、知的財産的価値のある情報の開示を求める中国側の対応の見直しを求め、中央政府や地方政府による企業に対する補助金の大幅もしくは全面的な削減も求めている。

しかし、「中国製造2025」の中でも示されているように、国や地方政府の支援は中国の経済政策の根幹であり、この見直しは中国が推し進めてきた中国流の市場経済運営の見直しにつながる。正面切って譲歩すれば、習近平・国家主席の政権基盤にも影響が出かねず、短時間での合意形成は難しい。

合意ができたとすれば、どこかに「抜け穴」があり、それを承知で「妥協」すれば、必然的にその合意は暫定的な存在になるだろう。

したがって大胆に予測すれば、市場が期待するように6月に大阪で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)に合わせた米中首脳会談で、米中通商交渉が最終合意に達する可能性はかなり小さい。

その時までに市場の期待値が高まっていれば、世界的に株価の下落幅は大きくなってしまうだろう。日本にとっては、最も避けたいドル安/円高現象が久方ぶりに現出するリスクが大きくなる。

<中国のアキレス腱、低い半導体の内製率>

問題は、そのレベルで危機拡大のうねりが収まらないとみられることだ。米国は中国の国内総生産(GDP)がいずれ米国を追い抜く時期について、いつくかのシミューレーションをしていると思われるが、その過程でどうやら中国の弱点を見抜いた可能性がある。1つは過剰債務体質であり、もう1つは半導体内製率の低さだ。

2018年9月に米国が対中関税を10%に引き上げた際、中国経済への影響は軽微と多くのエコノミストが予想していたが、その後景気のスローダウンが表面化。中国政府が対策を打ち出すことになったが、その背景には、過剰債務の下では、需要の減少に対し、許容度が低下していたということがあったとみられる。

また、半導体内製率の低さは、ZTEに対する米国企業との取引停止という制裁措置(北朝鮮、イランに対する禁輸措置違反)で、半導体不足による生産停止という現象を生み出した。

製造2025では、2020年までに内製率を足元の20%から40%、25年に70%に引き上げるとしている。その途中でもし、米国からの半導体輸出が全面的にストップしたり、同盟国である日本などに同様の対応を求めてきた場合、中国経済の受ける打撃はかなりの規模になる可能性があるだけでなく、世界経済にも予想外のインパクトが出てくることになりかねない。

こうした事態を予見し、米国の多国籍企業の一部では、中国からの撤退を含めたサプライチェーンの見直しを水面下で検討しているもようだ。日本の大手企業の中にも、こうした動きを察知し、中国から生産拠点を移すことを検討している動きがある。

国際通貨基金(IMF)が今年4月に公表した試算では、米国が中国からの輸入品全てに25%の関税をかけた場合、最大で米国の成長率を0.6ポイント、中国の成長率を1.5ポイント押し下げるとしている。

しかし、これまで見た来たような政策対応の拡大や、企業による自衛手段などの波及効果を加えると、さらに大きな衝撃が加わる可能性がある。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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