August 29, 2019 / 6:58 AM / 2 months ago

コラム:日本で騒がれない「長短逆転」、マイナス金利で稼ぐ海外勢が影響

[東京 29日 ロイター] - 米国では長短金利が逆転すると景気後退への「シグナル」ではないかとの警戒感が広がり、リスクオフ心理が台頭した。だが、すでに長期金利がマイナス0.285%まで一時低下し、日銀が当座預金残高の一部に適用しているマイナス0.1%と逆転している日本では、「長短逆転」だなどと市場は大騒ぎしていない。

 8月29日、米国では長短金利が逆転すると景気後退への「シグナル」ではないかとの警戒感が広がり、リスクオフ心理が台頭したが、日銀が当座預金残高の一部に適用しているマイナス0.1%と逆転している日本では「長短逆転」だなどと市場は大騒ぎしていない。201年撮影(2019年 ロイター/Yuriko Nakao)

日本経済の先行きに暗雲が垂れ込めている、との声もあまり聞かれない。

背景には、マイナスの長期金利でも収益を確保できる一部の海外勢が、円債市場の主役になっているという「構図」がある。海外勢の取り引きが金利を一段と低下させる一方、国内勢は利益を出そうと海外に目を向けているため、市場のどこからも日本の金利の現状を問題視する声が出てこない。

そもそも、日本では「長短逆転」していないという見方が、日銀内にはある。確かに当座預金の中の政策金利残高に0.1%のマイナス金利を適用しているが、2年JP2YTN=JBTCと10年JP10YTN=JBTCの国債利回りを比較すれば、2年がマイナス0.30%台、10年がマイナス0.28%台と順イールドになっている。

ある国内銀行の関係者は「5年JP5YTN=JBTCがマイナス0.35%程度まで下がっているので、順イールドというのは言い過ぎだが、市場関係者のイメージとしては、ほぼフラット」と話す。

イールドカーブ(利回り曲線)の過度なフラット(平坦)化は、銀行収益などを圧迫する。実際、大手銀の一部の株価は、PBR(株価純資産倍率)が解散価値の1倍を下回っている。本来なら市場の各方面から、様々な批判や指摘が沸き起こりそうだが、多くの市場関係者はいたって冷静だ。

別の国内銀行関係者は「今の国債市場で、プラス金利を前提にしたトレードを展開する銀行や生保が主役から降りている。仮に2年と10年の利回りが逆転しても、大きな注目点になりえない」と話す。

2019年3月末現在、1027兆円の国債残高のうち、日銀が475兆円を保有。銀行は166兆円、生保は208兆円を保有しているに過ぎない。銀行の保有国債には担保用も含まれ、実際に運用に使える国債の規模はかなり限定されている。

<日銀は無関心でいられない>

一方で、マイナス金利でも収益を上げることができる一部の海外勢が、国債取引の主役に躍り出ている。ベーシススワップ取引でドルやユーロを円に換え、日本国債に投資することで利益を確保している。

現状の市場環境では、50─60ベーシスの利益を期間10年のベーシススワップ取引で得ることができ、マイナス0.28%台の10年国債を購入しても、20─30ベーシスの利益を出すことができる。

「(海外勢は)ベーシス取引が主流であり、プラス金利を取りに行く国内の投資家は、海外に行くしかない」と、先の国内銀行関係者は話す。

海外勢のベーシススワップ取引の相手方になっているのが、生保を筆頭とする日本の国内機関投資家であることは、市場関係者の常識となっている。

50─60ベーシスのコストを払っても、米国債やイタリア国債などで運用すれば、日本国内では望めないまとまったプラス金利を獲得できる。

つまり、国内勢が脇役となった国債市場でのイールドカーブの形状に対する市場関係者の関心が、大幅に低下しているということだ。

他方、無関心でいられないのが日銀だろう。イールドカーブコントロール(YCC)政策を採用し、長期金利が概ねゼロ%で維持するよう運営することを明記し、その下限のメドをマイナス0.20%程度としてきたからだ。

金利低下を促しているのが海外勢の動向であり、その中核に米金利の低下があるなら、日銀にとってもやっかいな問題となる。

第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は、直近の米長期金利US10YT=RRの低下ペースが急激であり「市場はこの先の世界経済に何か、ショックが発生するのではないかというある種の恐怖感を感じているかもしれない」と述べる。

急激な長期金利の低下を市場調節でいったん止めることはできるが、市場は「円高」で反応する可能性がある。

この先、日銀は長期金利の低下と円高の進行のどちらを優先的に止めるのか、という「究極の選択」を迫られる可能性も出てきている。

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