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コラム:米「トリプルブルー」の衝撃 株高は続くか=木野内栄治氏

[東京 12日] - 米国政治は、民主党が大統領職に続いて議会の上下両院も制する、いわゆる「トリプルブルー」となった。バイデン次期大統領は上下両院の支持を受け、大型の追加経済対策を進める見通しで、米連邦準備理事会(FRB)も金利高を抑制する姿勢を明確にしている。株式市場への追い風は続き、4月いっぱいごろまでは株高が期待できるだろう。

 1月12日、米国政治は、民主党が大統領職に続いて議会の上下両院も制する、いわゆる「トリプルブルー」となった。株式市場への追い風は続き、4月いっぱいごろまでは株高が期待できるだろう。NY証取で2020年3月撮影(2021年 ロイター/Lucas Jackson)

一方、大型財政出動への期待から米債投資が拡大しており、この状況が続けば、新年度入り前後には、その巻き返しとして円高圧力が強まる可能性がある。バイデン氏が政策課題に掲げている法人や富裕層への増税もこの先の懸念材料だ。株式市場への悪影響は秋に向けて表面化するだろう。

その影響は高値が続いている日本株にも及び、今後の展開は春高値、秋安値のN字波形をたどりやすいとみている。

<財政出動時に株高パターン>

米国での追加経済対策は大統領選挙前、2兆ドル(約208兆6000億円)規模を求める民主党と反対する共和党の攻防が続いたが、昨年12月27日になって9000億ドル規模に縮小されてトランプ大統領の署名にこぎつけた。それでも日経平均は翌日に197円高、翌々日に714円高の大幅続伸となり、2万7000円台に乗せた。

この時点での経済対策をバイデン次期大統領は「頭金」と表現していた。トリプルブルーの達成を受けて「頭金」以降の追加の刺激策が期待され、日経平均は1月7日に434円高、翌日に648円高の大幅続伸となり、2万8000円を突破した。

財政出動への期待は大きな株高につながる。ちなみに、日本でも追加の経済対策が閣議決定された12月8日の翌日に、日経平均は350円高となった。

こうした中で、1月8日の米雇用統計は予想以上の悪化となった。これを受けてイエレン次期財務長官はツイッターでスモールビジネスを助ける必要性を強調。バイデン氏は失業保険の特例のさらなる延長、州・地方政府への新型コロナウイルスのワクチン供給促進を含む支援などで、数兆ドル規模の追加の経済対策を提案するとした。

この先も、こうした新政権の政策を受け株高が期待されるだろう。さらに、3月末に失業保険の特例が切れるまでに、経済対策が合意できればれば、やはり株高要因になる。

現金給付が1人2000ドルに引き上がるなどの期待によって、ネットトレーダーは元気になっており、バリュー株だけでなく彼らの好きなナスダック銘柄にも恩恵がある。実際、ネットトレーダーがナスダック銘柄とともに手掛けるビットコインは乱高下しながらも好調だ。

株高効果は新たな経済対策がまとまった後でも、ある程度は継続するだろう。株高局面は新政権のハネムーン期間である4月末頃まで続くと筆者は考えている。 

<米金利の上昇は米株高の阻害要因とならず>

米新政権の大型景気対策の流れに乗った「リフレトレード」を終わらせる要因はあるのか。まず、米長期金利が株高の阻害要因となる可能性を考えてみよう。

2017年以降、その時々のフェデラルファンド(FF)レートの先行きを見込んだドットチャートの最高値(多くの時期で長期的見通し)が、米30年国債利回り<US30YT=RR>の概ねの上限となってきた。そうした水準を金利が上回ると米株がピークアウトする傾向があり、結果的に利回り上昇が抑えられてきた。現在は2.5%が30年債の上限で、米株のリフレトレードを終了させる水準だと言える。

ただし、FRBは現在、平均物価目標を導入するなど、2016年の大統領選でトランプ氏が当選する直前と同じように、雇用のスラック(需給の緩み)の解消を目指すなどの方向に傾いている。その頃の状況を参考にすると、ドットチャートの最高値よりも0.4%程度低い水準が30年債利回りの上限だと言えそうだ。

つまり、米長期金利は株高を阻害する水準まで上昇しないと考えられる。それでも現在の30年債利回りの水準から見ると、米債利回りの上昇余地は大きい。2020年以降のダブルボトム形状のネックラインを上回ったばかりで、倍返しで30年債は2.14%程度、10年債だと1.28%程度が計測される。それまでの間はリフレトレードが継続しそうだ。 

<外債投資巻き戻しの円高に注意>

米債利回りは一定程度の水準で抑えられると思うが、米債価格が下落基調にあるとの懸念が強まれば、米債投資が巻き戻しされ、新年度入り前後に円高が発生しやすい。

外債金利が上昇すれば外債投資額を増やすとの意見もあろうが、財務省が毎週発表する対外及び対内証券売買契約などの統計によると、トランプ氏が当選したリフレトレード時は当選直後から翌年の4月末までに日本勢は対外中長期債を約9兆円売り越した。

トランプ氏の当選当初、為替市場は大きなドル高だったが、その後は外債ポジション縮小に伴うリパトリエーション(資金の本国還流)に押される形で、ドル/円<JPY=EBS>は翌年1月初めにはピークアウトし、日本勢が外債売りを終える4月までに約10円の円高となった。

日本勢の外債投資の累計額は、2013年初めのアベノミクス以降、まだ32兆円の買い越しであったが、現在では約80兆円の買い越しまでポートフォリオは膨らんでいる。その分、外債の価格変動による本邦機関投資家のリスク量は上がっており、リバランスの効果はより大きい可能性もある。

ポートフォリオのリバランスについては、黒田東彦日銀総裁の市場での神通力がどうなるか、についても考えなければならない。

今年4月25日には自民党の吉川貴盛元農相の議員辞職に伴う衆院北海道2区補欠選挙と立憲民主党の羽田雄一郎参院議員の死去に伴う参院長野選挙区補選が行われる予定だ。その頃になれば、9月の自民党総裁選も視野に入ってくる。場合によっては黒田日銀総裁の後ろ盾となる菅義偉首相の政権基盤にも影響し、この面でもアベノミクス以降のポートフォリオリバランス効果が逆回転しかねない。

時期は明確ではないが、トリプリブルーの衝撃波は20年度末から21年度初頃には米債投資の巻き戻しの円高につながりかねない。年金資金や生保などの運用計画にも注目したい。 

<増税懸念で秋に米株安に>

この先の株価動向にとって大きな懸念となるのは、米新政権による増税の動きとその影響だ。現在は株高基調が続いているが、秋には悪影響が顕在化しやすいことを指摘したい。

現在の株高は、米国の一連の選挙結果も要因になっている。まず、大統領選と議会選挙の結果、過激な主張をしている急進左派の発言力は弱まった。

急進左派のエリザベス・ウォーレン上院議員やバーニー・サンダース上院議員に関しては、一時、財務長官や労働長官での起用が取り沙汰された。しかし、11月の選挙結果でトリプルブルーの可能性が残ったため、彼らは閣僚就任のために上院議席を返上することができなくなった。

なぜなら、上院議員が議員を辞めるとその州の知事が後任を指名することになっており、両氏の選出州は共和党知事であるため上院議席が共和党になってしまうからだ。

こうしたことで市場では楽観論が台頭している。ウォーレン氏が逃した財務長官ポストに、イエレン前FRB議長が就くのも楽観論につながっているだろう。

ただし、イエレン氏は経済学者だ。無駄な民間貯蓄を増税で徴収して財政支出とすると均衡金利は景気中立的に上昇しやすいので、経済政策としては最適の方法と考えているだろう。

市場にとっては、富裕層増税が本質的なリスクで、キャピタルゲイン増税が問題だ。これは実施される懸念があるだけで株売りを招く。実際、企業経営者による自社株売買は昨年選挙前に大きく売り越しとなった。

経営者は業績開示後のわずかな期間しか売買の機会がないので早期に売り越しとなったが、昨年11時点でトリプルブルーが確定していたら富裕層による利食いが昨年内に集中し、米株安となっていただろう。ここでも選挙結果が現在の株高に微妙に作用している。

米国における1987年や2013年のキャピタルゲイン増税では、増税前の駆け込み利食いがあり、前年の秋にNYダウは共に8%台の下落となった。この下落率を現在に当てはめると、今秋に3000ドル近い暴落が懸念される。当時のキャピタルゲイン増税では、最高税率の引き上げ幅がそれぞれ5%と8%だったが、今回は19.6%もの引き上げ幅が懸念されているので、株価の下落幅はもっと大きくなってもおかしくない。

米国選挙でのトリプルブルーの衝撃は、トータルとして日本株への影響としては、年間で春高値、秋安値のN字の波形要因となりやすいと指摘したい。

*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*木野内栄治氏は、大和証券 理事 チーフテクニカルアナリスト兼ストラテジスト。1988年に大和証券に入社。大和総研などを経て現職。各種アナリストランキングにおいて、2003年から16年連続で市場分析部門などで第1位を獲得。2012年度高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。現在、景気循環学会の常務理事も務める。

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編集:北松克朗

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