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コラム

コラム:イスラム世界が嫌悪する焼殺映像の「残虐性」

[4日 ロイター] - シリアで過激派組織がヨルダン軍パイロットのモアズ・カサスベ中尉を焼き殺したとする映像について、イスラム教聖職者からは強く非難する声が噴出している。こうした殺害の方法はイスラム教では唾棄すべき行為と見なされ、正当化の余地はないと断じている。

 2月4日、シリアで過激派「イスラム国」がヨルダン軍パイロットのモアズ・カサスベ中尉を焼き殺したとする映像について、イスラム教聖職者からは強く非難する声が噴出している。写真は殺害された日本人人質を追悼し、同中尉の写真を掲げて解放を願う市民ら。首都アンマンで2日撮影(2015年 ロイター/Muhammad Hamed)

過激派組織「イスラム国」は3日、拘束していたカサスベ氏をおりの中で焼き殺す映像を公開した。これを受けてヨルダンは、イスラム国が釈放を求めていたサジダ・リシャウィ死刑囚らの刑を執行。ヨルダンは、イスラム国の拠点に対する米国主導の空爆にも参加している。

エジプトのカイロにあるイスラム教スンニ派の最高権威機関、アズハル大学は声明を発表し、「邪悪なテロ」集団による「卑しいテロ行為に対する強い怒り」を表明。タイイブ総長は、イスラム国の行為は「殺害、はりつけ、手足切断に値する」と激しく非難した。

カタールでは、著名法学者ユースフ・カラダーウィ師が率いる国際ムスリム聖職者協会が、カサスベ氏の焼殺は犯罪行為だと明言。地域で影響力を持つムスリム同胞団とも関係がある同協会は、「この過激派組織(イスラム国)は、いかなる形でもイスラムを象徴しておらず、その行動は常にイスラムを害していると断言する」と述べた。

一方、イスラム国はツイッターを通じ、異教徒の焼殺はイスラムでは容認されるとの宗教的布告を発した。

しかし、イスラム世界の高位聖職者らは、火あぶりの刑は宗教的に一切禁じられていると反発している。

イエメン南部で要職に就くシェイク・フセイン・ビン・シュアイブ師は、同国のアデンでロイターの取材に対し、「預言者ムハンマドは火あぶりを禁じた」と語った。

サウジアラビアの聖職者サルマン・オダー師は、ツイッター上に「理由が何であれ、火あぶりはイスラム法が認めていない憎むべき犯罪だ。火あぶりは神のみが許される行為だ」と投稿した。

<中東を覆う嫌悪感>

聖戦の大義には共感を寄せる聖職者でさえ、生きたまま火を付け、その殺害の様子を映像に収めるという行為は、イスラム国にとってマイナスになると指摘する。

「これはイスラム国の人気を弱める。なぜなら、人々はイスラム教を慈悲と寛容の宗教と見ているからだ。戦いのさなかであってさえ、戦争捕虜は良い扱いを受ける」

こう語るのは、米軍に対する攻撃未遂を含む戦闘活動で、ヨルダンの刑務所に約10年服役していたイスラム厳格派(サラフィスト)の聖職者、ムハンマド・シャラビ師だ。「自分たちが空爆で焼き殺されたのと同じ方法でモアズ(・カサスベ中尉)に罰を与えたとイスラム国が主張したとして、それはまだ理解するとしても、なぜこんなショッキングなビデオを撮影するのか。この方法は社会の反発を招いた」とロイターに語った。

もっとも、イスラム国の支持者の中には、カサスベ氏の殺害を喝采する者もいる。ツイッター上では、「聖戦士との戦いで十字軍連合に参加するパイロットよ。次に撃墜されるのは自分だと覚悟しろ」との投稿もあった。

ただ、中東全体を覆っているのは嫌悪感だ。

ヨルダン川西岸の都市ラマラのエンジニア、ナワフ・ドウェイクさん(43)は「これはイスラムにも人道にも反する犯罪かつ野蛮な行為だ。イスラムに責任はまったくなく、彼らがイスラム国を名乗るのもばかげている」とコメント。「こんな殺人集団を葬り去るためのアラブ連合軍をつくるべきだ」と語った。

イエメンの首都サヌアの大学生、シャディ・アブデル・ワッハーブさん(22)は「イスラム教徒を名乗り、こんな残虐行為を働く集団は聞いたことがない」と憤りを見せた。

アラブ圏の新聞でも、イスラム国によるカサスベ氏の殺害は非難されている。アルハヤト紙は一面で、「蛮行」という見出しで記事を展開。サウジのアルリヤド紙は、今回の事件でイスラム国は「残虐性と残忍な姿勢を一段と深めた」と書いている。

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*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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