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コラム:イタリア国民投票、市場反応は予想より悪い可能性
2016年11月30日 / 08:36 / 1年後

コラム:イタリア国民投票、市場反応は予想より悪い可能性

[29日 ロイター] - イタリアで12月4日実施される憲法改正の是非を問う国民投票は、反グローバル化を標榜する勢力にとって、今年3度目の大勝利となりそうだ。

 11月29日、イタリアで12月4日実施される憲法改正の是非を問う国民投票は、反グローバル化を標榜する勢力にとって、今年3度目の大勝利となりそうだ。写真は、否決されれば辞任すると明言している同国のレンツィ首相。南部カッシーノで24日撮影(2016年 ロイター/Tony Gentile)

ブレグジット(英国の欧州連合離脱)が決まった英国の国民投票や、ドナルド・トランプ氏が勝利した米大統領選とは異なり、イタリア国民投票の結果はサプライズとはならないかもしれない。だが、金融市場の反応は予想よりも悪くなる恐れがある。

レンツィ首相が提案する憲法改正案は中央集権化につながり、国民投票において否決されると見込まれている。同首相は、否決の場合、辞任すると明言している。

そうなれば、特にモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)(BMPS.MI)のような経営不振に陥っている国内銀行の資本増強努力に水を差す結果になりかねない。また、ユーロ圏に懐疑的な政党の勢力拡大を招く恐れもある。各世論調査によれば、そのような政党はすでに44%の支持率を集めているという。

その一方で、ユーロを守るために「何でもやる」という約束を尊重すべきか、あるいはどのように尊重すべきかについて再考する理由を欧州中央銀行(ECB)に与えることになるかもしれない。

これまでの経済的・政治的体制に対し、1世代に1度あるかないかのような大改革が行われるなか、2016年は投資家や金融市場にとって非常に有益な1年だったと言える。

1990年代のソ連崩壊とは異なり、今年の反発が貿易障壁やインフレ率の上昇、低成長を意味していることを考えれば、それはとりわけ正しいと言える。

株式市場のFTSE全世界指数は今年初めよりもわずかに上昇しており、米株も最高値を相次いで更新している。最近の債券市場における急落におびえている人もほとんどいないように見える。

その理由として、ブレグジット本番前の現実がもともと、その長期的な意味合いよりは苦痛を伴うものではなく、また、トランプ氏の政策も金融仲介機関にとっては有益であり、経済成長のためのギャンブルだと考えれば、リスクと捉えられるからかもしれない。

ブレグジットとトランプ勝利に比べると、イタリア国民投票の衝撃と畏怖(いふ)はそれほど大きくはないものの、現在の秩序を支持する著名な人たちからは、非難の声が上がっている。否決への一票は、乾燥した空気のなかで山火事が広がるのと同じような現象を起こす可能性があるのだ。

「政治色が薄まったわけではない。欧州の多くの地域で、グローバル化への不満やポピュリズムの台頭、そして現職の政治家たちへのいら立ちが拡大しているのを目の当たりにしている。その結果、反エリートを掲げる政治家への人気が、予測不可能な影響とともに高まっている」と、コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツのグローバル最高投資責任者(CIO)、コリン・ムーア氏は顧客向けメモに記している。

<中銀の役割に変化か>

イタリア国民投票の結果が否決なら、喫緊の問題は誰がイタリアを、どのような負託のもとで統治するかということだろう。

ドイツ銀行のアナリストらは、レンツィ首相が退陣しようとしなかろうと、「行き当たりばったりの」妥協に至ることが1つの可能性として大きいと主張する。

どのみち、来年に選挙制度改革が実施される公算は大だが、根本的な経済問題はほとんど進展しておらず、それゆえユーロに反対する各政党の人気が高まる可能性がある。

さらに混乱を招きかねないのは、2017年初めごろに総選挙の実施を求める声が上がった場合だ。そうなれば、拘束力はないものの、ユーロ離脱の是非を問う国民投票が実現する可能性が生まれる。

イタリア10年債の対独連邦債利回り格差は28日、193ベーシスポイント(bp)と2014年2月以来の高水準となったことには注意を払うべきだろう。

銀行の多くが資本増強を模索し、そのうちのいくつかは公的支援が必要になるかもしれない状況において、このような背景は望ましくないだろう。多くがイタリアの個人投資家である国債保有者の間で、政治的な痛みを伴う損失を引き起こす恐れがあるからだ。

こうしたことの全てが、ECBをどのように脇へ追いやるかも懸念される。ECBは危機の際には、迅速かつ大きな効果を上げて対応してきた。

「ユーロ懐疑派政党の台頭は、量的緩和(QE)後の世界において、2012年にドラギECB総裁が『何でもやる』とした国債買い入れプログラム(OMT)の積極的活用を妨げる可能性がある」と、ドイツ銀行のマルコ・ストリンガ氏とサイモン・カーター氏は顧客向けメモに記している。

OMTは、改革とみなすものに向けた協力に一部基づくものである。政治の立場からユーロ離脱を議論することは、ECB内部では、改革の一環とは見なされないかもしれない。

このことは、トランプ次期米大統領が米連邦準備理事会(FRB)の役割を変えたように見えるのと同様に興味深い。

2週間前にはFRBはセーフティーネットと思われていたが、トランプ氏が掲げる税制や財政出動が実現されれば、FRBはもっと積極的に金融引き締めを行うだろう。

言い換えれば、かつての救世主がリスクの拡散者になり得るということだ。

各国中央銀行は2008年の金融危機後、グローバル化をそれ自体から救おうとしてきたが、その試みがいったんほつれ始めるなら、役に立たなくなるかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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