November 15, 2019 / 3:19 AM / a month ago

コラム:4兆円弱の大手行保有「ベア型」投信、相場変動の激化要因に

[東京 15日 ロイター] - 国内の大手銀が保有する4兆円弱の「ベア型投資信託」が、株価や長期金利の変動を増幅させる変動要因として、市場の一部で意識され出した。株価下落ヘッジ用のベア型は、想定を超えた株価急騰時の対応が難しい。今月5日の日経平均.N225の大幅上昇と6日の長期金利JP10YTN=JBTC上昇には、このベア型が影響したとされる。

 11月15日、国内の大手銀が保有する4兆円弱の「ベア型投資信託」が、株価や長期金利の変動を増幅させる変動要因として、市場の一部で意識され出した。写真は都内の株価ボード。2017年9月撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)

今後、電撃的な米中の通商合意などがあった場合、予想外の株高と長期金利上昇の「誘因」になりかねないパワーを秘めている。

日銀が10月24日に公表した金融システムリポートは、地域金融機関に経費節減や非金利収入の拡大を促したことなどに注目が集まったが、市場関係者の多くが見逃した一節に、実は大きな意味があった。

金融機関の有価証券投資について言及した同リポートの23ページに「大手行では、引き続き株式投資信託に関して厚めの残高を維持しつつも、債券や政策保有株式等の評価損益を管理するための『ベア型』の投資信託を積み増す先がみられ、足元の残高増加のかなりの部分を『ベア型』が占めているとみられる」と記された。

そのうえで脚注には「投資残高ベースでは、『ベア型』は大手行の投資信託残高の約5割を占める」との説明が付いた。

日銀によると、2019年8月末の大手行の投信残高は約7.5兆円。ベア型は3兆円台後半で推移していたとみられている。

「ベア型」投信は、株価の下落局面でリターンを得る可能性が高まるように組成されている。日銀によると、19年8月末の大手行の株式保有残高は約6.4兆円。

多くは企業との取引関係を重視して保有する「政策保有株式」とみられ、その損失リスクを抑制するために保有したのが、「ベア型」投信だったとみられる。

昨年から米中貿易摩擦が激化し、株価下落リスクの高まりが意識され、そのことも「ベア型」の保有に大手行が傾いた要因だったようだ。

この「ベア型」が、東京市場で株価押し上げに一役買ったのが今月5日だった。米中通商交渉の部分合意観測が高まり、4日の米株が大幅高となり、5日朝から日経平均は足取り軽く上昇。午後になって一段と上げ、401円高で引けた。

複数の市場関係者によると、その背後に大手銀によるベア型投信解約による「上げ効果」が加わっていたという。

その余波は、翌6日にも続く。今度は円債市場で長期金利が一時、マイナス0.075%まで急上昇した。

この金利上昇の背景にも、短期的な株価の大幅上昇を受け、リスク量の調整を余儀なくされた大手銀などが、長期ゾーンの国債を売却したことが影響したという。

つまり、「ベア型」投信への対応を起点に、株高と長期金利上昇の幅がかさ上げされた構図になったということだ。

株価下落に備えた「ベア型」投信の保有だったが、11月上旬のような急激な株高時には、かえって株と債券の両方で損失リスクが拡大してしまった。

理想的には、政策保有株の残高を今後、一段と減少させつつ、「ベア型」投信の残高も減らすことが、大手行のリスクを減少させる近道となる。だが、規模が大きいだけに急激な残高削減は難しいだろう。

そうなると、次に大幅な株価上昇が短期間に実現した場合、今回と同じような展開になることが予想される。では、どういうときに想定されるのか──。

最も考え得るのは、足元で膠着(こうちゃく)している米中通商交渉で期待された「部分合意」が成立し、米国の関税撤廃の範囲が予想を超えるケースだろう。

そのほか想定外の出来事でリスクオン相場が急進展した場合、「ベア型」投信のまとまった解約が発生するのではないか。

しばらくの間、「ベア型」投信解約の破壊力を注視する必要があると考える。

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編集:石田仁志

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