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コラム

コラム:雇用と消費に危険な兆候、早急な大型対策の検討必要に

[東京 5日 ロイター] - 週明け5日の日経平均株価.N225は一時前週末比300円超の上昇となったが、日本経済の足元の実態と先行きは株価が示すほど楽観できない。雇用と消費に危険な兆候が出ており、このままの傾向が続けば、年末から年明けにかけて失業率の悪化や消費の足踏みなどがより鮮明になりかねない。

 10月5日、週明けは株価が上昇したが、雇用と消費に危険な兆候が出ており、日本経済の足元の実態と先行きは株価が示すほど楽観できない。閉店した茶屋、京都・清水寺で7月撮影(2020年 ロイター/Leika Kihara)

「GoTo」キャンペーンで下支えするのは難しく、政府は新たな給付金の支給など大型景気対策を打ち出さざるを得なくなると予想する。

<8月までに廃業した企業は3万5000社超に>

10月に入って 「GoToトラベル」の対象に東京が含まれるようになり、各地で観光客が急増しているニュースがあふれている。一方で、東京都内では大学を抱える街などで、長期化する大学のリモート授業の影響で「主要な顧客」の大学生が来店せず、先行き不透明を理由に静かに閉店する飲食店も増えてきた。

新型コロナウイルスの影響を受けているのは飲食店ばかりでない。東京商工リサーチの調査によると、今年1─8月に全国で休廃業・解散した企業は3万5816件と前年同期比23.9%増と大幅に増えている。このままのペースで行けば、年間で最多だった2018年の4万6724件を大きく超える可能性があると同社ではみている。

<悪化する雇用・所得環境>

こうした企業で働いていた人たちが新たな職を求めてハローワークに赴いて登録されると、ようやく失業率にカウントされる。日本の場合、公式統計の失業者と実質的な失業者には、かなりかい離があると労働問題の専門家は指摘している。

その「遅行性」のある失業率ですら、8月は3.0%と2017年5月以来の水準に悪化した。8月の有効求人倍率も1.04倍と6年7カ月ぶりの低水準に逆戻りした。

また、7月の実質賃金は前年比1.6%減と、5カ月連続のマイナスを記録している。雇用・所得が弱ければ、消費にも波及する。7月家計調査では、全世帯の消費支出は前年比7.6%減に落ち込んでいる。

<旅行復調、モノ消費は足踏み>

こうした政府発表のデータは遅い上に消費関連では調査対象が狭いと指摘され続けており、民間が収集しているビッグデータ(高頻度データ)に注目が集まっている。その1つであるジェーシービーとナウキャストがJCBカードのデータを基に消費動向を分析している「JCB消費NOW」の最新データ(9月前半)によると、「Go To トラベル」のおかげで「旅行」や「航空旅客」「鉄道旅客」などサービス消費の回復は目立ってきた。

ただ、モノが中心の小売総合は落ち込んでおり、サービスを含めた消費総合もコロナ禍前の1月前半と比較するとマイナス圏で足踏みする結果となっている。データを作成、分析しているナウキャストは、前年は消費増税前の駆け込み需要が盛り上がっていたことなどから、足元の消費の弱さが「より強調されている」とみている。

とは言え、4月、5月をボトムに回復が鮮明だった消費は、ここに来て予想以上に伸びが鈍ってきているのは明らかだ。やはり、これまで指摘してきたように、雇用・所得における回復ペースの鈍化が反映されとみた方がよいのではないか。

同じことが米国でも起きているのは興味深い。9月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月比66万1000人増となったが、8月の同148万9000人増から大幅にペースダウン。なお、1070万人が失業状態に陥っている。

一方、8月の個人消費支出は前月比1.0%増と、7月の同1.5%から増加ペースが鈍化した。失業給付金の上乗せ部分を巡り与野党の調整が難航し、所得の先行き不透明感が強まって消費を圧迫している構図になっている。

<廃業促す先行き不安>

日本では、政府・日銀の財政・金融政策の効果で、資金繰り倒産はかなり抑制されており、東京商工リサーチの調べでは、2020年1─8月の倒産件数は前年比0.2%減の5457件となっている。ところが、先に指摘したように廃業はその7倍近くの3万5000件を超えている。

これが何を意味しているかと言えば、運転資金は確保されても、コロナ危機の長期化予想を前に事業の先行き不透明感が拭えず、借金をしても返済が難しいと諦めて廃業しているケースが多いことを示していると考える。

つまり、現在の運転資金を融資する方策に力点を置いたままでは、どこかの時点で廃業を決断する中小・零細企業が急増し、失業者が統計上も大幅に増加してそれが消費を直撃する「縮小のループ」にはまり込むリスクが急増するということだ。実際、複数の労働問題の専門家が、失業率は1年程度経過すると10%近くまで上昇している可能性があると予想している。

<必要な消費喚起と資本増強の2本柱>

失業者が急増するような事態に直面すれば、現在、政府が力を入れている「Go To」キャンペーン程度の支援では、焼け石に水ということになるかもしれない。

そうなる前に、政府はいくつかの処方せんを国民に示すべきだ。1つは消費喚起策。10万円の特別定額給付金の再実施や波及効果のある自動車購入の補助金の導入、さらには政府内で批判の強い消費税率の期間限定引き下げなど思い切った対策の実行が必要だ。国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費の落ち込みを放置して、実効性のある景気対策は望めない。

2つ目は、大企業も含めた資本拡充策の実施である。コロナ危機が早く終息したとしても、日本や先進国の経済が元に戻るまでに3年はかかると言われ出している。半年なら持ちこたえても、3年先まで経営を維持するには資本の手当が避けて通れない。現在ある公的資金を活用したスキームだけでは支えきれない危険性もあり、政府・与党は新たな資本拡充策を早急に検討するべきだろう。

雇用や所得、消費に関連した危険な兆候は、その先に存在する重大な「危機」への暗示であると、早く政府・与党は気付くべきである。

編集:田中志保

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