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コラム:潜在成長率引き上げの目標化を、現状のままなら債務急膨張も
2016年10月14日 / 10:06 / 1年後

コラム:潜在成長率引き上げの目標化を、現状のままなら債務急膨張も

[東京 14日 ロイター] - 安倍晋三政権は2020年ごろまでに名目国内総生産(GDP)を600兆円に押し上げる目標を掲げているが、潜在成長率を高めないまま、強引に600兆円を達成しようとすると、債務残高が急膨張するリスクも高まる。現在は0.3%程度まで低下した潜在成長率を当面、1%まで引き上げることを政策目標に掲げるべきだ。そのためには生産性の引き上げが必須項目であり、必要な政策課題を早急に詰めることを提案したい。

10月14日、安倍政権は2020年ごろまでに名目GDPを600兆円に押し上げる目標を掲げているが、潜在成長率を高めないまま強引に達成しようとすると、債務が急膨張するリスクも。ニューヨークで9月撮影(2016年 ロイター/MIKE SEGAR)

<潜在成長率0.3%の現実>

最近の日本経済の成長率は、ジグザグしながらも、ならしてみれば1%未満の低成長が続いている。

しかし、内閣府によると、日本の潜在成長率は0.3%程度まで下がっており、それに見合った「低成長」とも言える。

2016年4─6月期の名目GDPは、505兆3763億円。 今後、統計ルールの変更によって研究・開発費がGDPに上乗せされ、約20兆円が加算されるので、525兆円がベースになる。

だが、潜在成長率に見合った0.3%の成長にとどまると、2020年になっても600兆円はおろか、550兆円にも達しない計算になる。

<債務膨張の誘惑>

潜在成長率を押し上げないまま、600兆円に達する近道は何か。それは積極財政を20年まで継続し、財政の力で無理やり達成するということになるのではないか。

実際、世界の潮流を見ると、最近のG20などでの議論でも、金融政策一辺倒から財政を活用した経済浮揚の道を取るべきだ、との方法論が積極的に提起されている。

日本経済も財政を活用し、パイを膨らませるべきだ、との意見が通りやすくなる内外の政治・経済環境になるのではないかと私は予想する。

しかし、そうした財政出動が、生産性の向上や潜在成長力の引き上げに結びつかないまま、時間だけが経過すると、財政出動をやめた途端に、経済活動の水準が急低下する事態に直面しかねない。

言い換えれば、赤字国債の発行増などを伴って、財政支出を拡大する動きが、いつまでたっても止まらないという展開だ。

<潜在成長率引き上げへ、中長期的な計画が必要>

だが、そうならない道もあるのではないか。潜在成長率を10年から20年かけて着実に引き上げる長期計画を立て、2年、5年という短期、中期の目標に分割し、その実現のための工程表を作成して、着実に実行する体制を作ることが重要だ。

さしあたり、2020年までに潜在成長率を1%に引き上げる目標を掲げるべきだ。内閣府によると、11年前の2005年10─12月期の潜在成長率は1.0%だった。

政府が足元で強調している「生産性革命」の実現は、正しい方向性を打ち出している。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータの研究・開発に対し、政府の手厚い支援を打ち出し始めた。

ただ、具体的なプランによって、どの程度の生産性向上が可能なのか、その結果として潜在成長率がどの程度押し上げられるのかという「数字」にリンクした努力目標がない。

<メルクマールは業界保護規制の緩和>

潜在成長率の引き上げこそ、「閉塞ニッポン」にとっての活路であり、国民の実感を伴った経済成長につながると考える。

しかし、竹中平蔵氏がロイターとのインタビューで指摘したように、今後の進展が望めるシェアリングエコノミーの広がりを既存の業界保護を目的にした規制が阻んでいる。

この規制を突破する安倍政権の「意思」がどこまで強いのか──。そこが潜在成長率の引き上げとも密接に絡んでいると考える。

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