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コラム:原油が20ドルまで下がり得る理由
2014年12月26日 / 06:32 / 3年後

コラム:原油が20ドルまで下がり得る理由

──原油価格が50%下落したことで、いったいこの先どの程度まで下がり、下落局面はどれぐらい続くのかといった疑問が生まれている。

 12月19日、原油価格が50%下落したことで、いったいこの先どの程度まで下がり、下落局面はどれぐらい続くのかといった疑問が生まれている。仏ニースのガソリンスタンドで5日撮影(2014年 ロイター/Eric Gaillard)

アナトール・カレツキー

[19日 ロイター] 原油価格が50%下落したことで、いったいこの先どの程度まで下がり、下落局面はどれぐらい続くのかといった疑問が生まれている。最初の疑問について自信を持って答えられる人はいないが、2番目の方はかなり簡単だ。

原油安は、次の2つのイベントのうちどちらかが起きれば長く続くだろう。第1の可能性は、大半のトレーダーやアナリストが予想しているとみられるように、サウジアラビアが原油安を誘引した地政学上、もしくは経済上の諸目的を達成した後、石油輸出国機構(OPEC)の市場に対する支配力を再確立すること。第2の可能性は、わたしが約2週間前に言及したものだが、原油の国際市場がサウジやOPECの力ではなく限界的な生産コストによって価格が決まる普通の競争的な環境へと向かう展開だ。これはひどく極端なシナリオに思われるが、1986年から2004年まで原油市場が実際に動いてきた仕組みといえる。

いずれかのイベントが最終的に原油価格を底入れさせるにしても、その過程が進むには相当な時間がかかるのは間違いない。サウジにとってイランとロシアの連合にくさびを入れたり、米国のシェールオイルの減産に持ち込もうとする上で、ほんの数カ月原油が下がるだけで事が足りると考えるのは合理性を欠く。同じように原油市場がOPECの支配から通常の競争状態へと素早く移行すると思うのも妥当ではない。

価格がすぐに今回の急落局面前の水準に戻るとなお見込んでいる多くの強気派の投資家は、失望を味わう可能性が大きい。強気派が期待できるのはせいぜい、新しく実質的により低い水準での取引レンジが形成されるかもしれないということだろう。

重要な問題は、現在の1バレル=55ドル前後の価格が新しいレンジの下限と上限のどちらに近いかだ。

米国の消費者物価指数で考えた物価調整後の原油価格の過去の推移は、興味深いヒントを提供してくれている。OPECが影響力を行使し始めた1974年以降の40年間は、3つの局面に分かれる。1974─1985年は、原油価格は現在の価値でみて48─120ドルで取引され、1986─2004年のレンジは21─48ドル(1991年の湾岸戦争と98年のロシア危機は別)、05年から今年までは50─120ドル(08─09年の金融危機で短期間価格が跳ね上がったケースは別)となった。

これら3つの局面で重要なのは、過去10年間の取引レンジがOPECが支配力を最初に確立した1974─1985年と酷似しているが、1986─2004年はまったく異なる枠組みだった点だ。この差は1985年にOPECの支配力が崩れてそれから20年が独占市場から競争市場に移行したことと、2005年になって中国の需要増大を利用してOPECが価格支配力を取り戻したことで説明できる。

過去の例からすると、市場が独占的か競争的かは価格が50ドル弱当たりで区別するのが、新たな長期の取引レンジの落ち着きどころを推測する上では合理的に見受けられる。だが50ドルは今後のレンジの下限なのか、それとも上限なのか。

1986─2004年の局面と同じく、これから価格が最低20ドルから50ドルまでに取引レンジが切り下がると予想されるいくつかの理由がある。

技術面と環境面の圧力は長期的な原油需要を減らし、中東以外の高い生産コストの原油を、膨大な埋蔵量があって引き合いが乏しい石炭と同じような「普通の資産」へと変貌させる恐れが出てきている。長期的に原油を押し下げる圧力としては、イランやロシアへの制裁が解除されたり、イラクとリビアの内戦が終結し、サウジよりも多い原油が国際市場に供給される可能性も挙げられる。

米国のシェール革命は恐らく今後、1974─1985年もしくは2005─14年のようなOPECの価格支配力が再度定着するよりも、価格競争が起きる状況に戻ると考える強力な根拠だろう。

シェールオイルは比較的コストがかかるが、生産作業の稼働と停止は従来型油田よりずっと簡単で費用も少ない。つまり今や、シェール業者はサウジの代わりに、国際市場における調整役「スウィング・プロデューサー」になっているはずだ。

本当に競争原理が働く市場では、サウジや他の低コストの産油国は常に生産量を最大限にする一方、シェール業者は需要が減れば生産をとりやめ、需要が増えれば増産に動く。この論理でいけば、一般的に40─50ドルとされる米国のシェール業者の限界生産コストが、新しい取引レンジの下限ではなく上限となっていくだろう。

半面、いったん市場がこのレンジの下限を試した後では、OPECが50─120ドルに水準を戻す支配力を再構築すると予想できるだけの十分な理由もまた存在する。

OPEC加盟国は、市場が再び競争的になるのを阻止することに多大な関心を持ち、効果的なカルテルとしての機能をまた学習する可能性がある。

米国勢の市場シェアが増えるので、OPECがきっちりとした価格水準を定めるのは難しいかもしれないが、来年多くのシェール業者を退出させることができれば、価格決定における「規律」を導入しようとするだろう。

原油安がもたらすマクロ経済効果が世界の経済成長に好影響を及ぼし、経済活動とエネルギー需要を押し上げることで、こうした取り組みを後押しする可能性がある。

だから以上の2つの主張はどちらも正しいと判明するだろう。つまりは弱気シナリオでは、競争的な価格決定に基づいて20─50ドルのレンジとなるし、強気シナリオならばOPECの支配力が復活して50─120ドルのレンジが形成される。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*アナトール・カレツキー氏は受賞歴のあるジャーナリスト兼金融エコノミスト。1976年から英エコノミスト誌、英フィナンシャル・タイムズ紙、英タイムズ紙などで執筆した後、ロイターに所属した。2008年の世界金融危機を経たグローバルな資本主義の変革に関する近著「資本主義4.0」は、BBCの「サミュエル・ジョンソン賞」候補となり、中国語、韓国語、ドイツ語、ポルトガル語に翻訳された。世界の投資機関800社に投資分析を提供する香港のグループ、GaveKal Dragonomicsのチーフエコノミストも務める。

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