March 11, 2020 / 11:16 PM / 5 months ago

コラム:円安への基調転換は意外に早く到来か=亀岡裕次氏

[東京 12日] - 世界的な新型コロナウイルスの感染拡大と景気減速への懸念に、石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟国による連合体「OPECプラス」の協調減産体制崩壊による原油大幅安が重なり、リスクオフの株安や金利低下が進行した。リスクオフでは低金利通貨が強く、円高圧力が働いたうえ、米金利の大幅低下がドル安に働き、ドル/円JPY=は一時101円近くまで下落した。その後は米経済対策への期待から米株価と金利が反発し105円近辺に戻っているが、今後はどうなるのだろうか。

3月12日、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大と景気減速への懸念に、石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟国による連合体「OPECプラス」の協調減産体制崩壊による原油大幅安が重なり、リスクオフの株安や金利低下が進行した。写真は米ドル紙幣と日本円。2017年6月撮影(2020年 ロイター/Thomas White)

<100円割れの可能性低い>

今年1月末から2月20日にかけては、中国での新型コロナウイルスの感染鈍化を織り込むように市場はリスクオンに傾いた。日米金利差は小幅な変動にとどまったものの、他国よりも感染拡大と景気減速への懸念が強い日本の円が売られ、ドル/円は112円台まで上昇した。しかし、これは一時的な円安に過ぎず、ウイルス感染拡大と景気減速への懸念が世界中に広がるにしたがってリスクオフに転じ、日米金利差縮小と円高・ドル安が進んだ。

例外的な局面はあったにせよ、2019年3月以降の1年強の期間で見ると、日米金利差とドル/円は順相関にある。その長期相関に従えば、日米10年金利差が0.8%でドル/円は105.6円、0.5%で104.8円となる。3月9日には日米金利差0.65%で102.4円と、ドル円は長期相関を大幅に下回ったが、10日には金利差0.79%で105.6円と、相関に見合う水準に戻った。

ドル/円が2月20日に日米金利差との長期相関に比べて最大4.5円の円安となったことに鑑み、金利差0.5%の場合に長期相関よりも4.5円の円高となるならば、100.3円となる。また、2月20日以降の短期相関に従えば、日米金利差が0.8%でドル/円は104円台、0.5%で101円台となる。リスクオフと米金利低下が大幅に拡大しない限り、100円割れの可能性は低いように思える。

<米追加利下げや景気悪化を織り込んだ市場>

米連邦準備理事会(FRB)は3月3日に50ベーシスポイント(bp)の緊急利下げをしたが、市場は3月17-18日の連邦公開市場委員会(FOMC)での50bp、4月28-29日のFOMCでの25bpの追加利下げを織り込んでいる。FRBはリスクオフと景気悪化を抑えるために追加利下げを行う可能性が高い。ただ、すでに米2年国債利回りが一時0.25%台、10年国債利回りが0.31%台をつけるほど、米金利低下が大幅に進んできた。マイナス金利政策への期待が浮上しない限り、米金利の低下余地は小さい。日米金利差縮小によるドル/円の下落余地は小さく、ドル/円を左右するカギはリスク許容度の動向にあると考えられる。

今年2月19日にマイナス3.56%だったイールド・スプレッド(米10年国債利回りと米S&P株式益回りの差)は、米株安と金利低下によって3月9日にはマイナス5.83%まで急低下した。これは12年12月以来の低水準であり、市場の期待成長率が大きく低下したことを反映している。市場は、米景気指標の悪化、例えば米供給管理協会(ISM)製造業景況指数と非製造業総合指数の平均が今年2月の53.7から50未満へと低下することを織り込んだと言えそうだ。市場予想に比べて現実の経済指標が弱くならなければ、リスクオフの円高は続きにくいだろう。

<3月末までに円高終息か>

すでに中国では新型コロナウイルス感染者数の増加ペースが大きく低下し、韓国でも増加ペースが鈍化し始めている。中国では、1月24日に移動制限が強化されてから12日後に感染増が鈍化し始め、25日後に感染者数がピークアウトした。韓国でも、2月23日に感染症警戒レベルを最高に引き上げてから11日後に感染拡大ペースが鈍化し始めており、25日後の3月19日頃に感染者数がピークアウトする可能性はある。

一方、イタリアを中心に欧州での感染者数の増加ペースが拡大し、米国でも拡大しつつある。イタリアでは3月8日に北部で、9日に全土で移動制限が強化された。12日後の3月20日頃に感染拡大ペースが鈍化し始め、25日後の4月2日頃に感染者数がピークアウトする可能性はある。米国の対策はさほど強化されていないので、感染ペース鈍化はもっと遅くなりやすいだろうが、欧州での感染拡大が峠を越えれば市場の不安心理が後退し始める可能性はある。3月下旬にリスクオフの円高が収まる可能性はあるだろう。

<一転して円安進行も>

中国ではすでに工場再開と稼働率上昇が進みつつあるので、サプライチェーンの観点からすれば、先進国の供給体制は3月に比べ4月は回復しやすいと思われる。また、先進国の感染対策が3月に比べ4月に緩和されることになれば、供給は増えやすくなる。一方、3月中に市場の不安心理が後退し始めれば、4月には消費者マインドが改善し、需要も回復に向かいやすくなるだろう。

中国の景況指数は2月に比べ3月は改善し、日米欧の景況指数は2月よりも3月は悪化するが、4月は改善する可能性がある。3月の中国購買担当者景気指数(PMI)や4月の米地区連銀景況指数が発表される3月末から4月半ばには、経済指標が景気悪化懸念を後退させリスクオンの円安に働き始める可能性がある。円高から円安に基調転換するタイミングは、そう遠くないのではないか。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*亀岡裕次氏は、大和投資信託のチーフエコノミスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2019年10月より現職。

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編集 橋本浩

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