January 10, 2020 / 7:12 AM / 5 months ago

コラム:米中第2弾合意、先送りなら世界経済V字回復望めず

[東京 10日 ロイター] - トランプ米大統領が9日、米中通商交渉の「第2弾合意」が今年11月の米大統領選後まで見送られる可能性に言及した。「ブラフ」の可能性もあるが、もし第2弾の交渉が停滞するなら、世界経済の「V字回復」シナリオは後退を余儀なくされる。現状では米国の対中高率関税が残存し、中国の対米輸出拡大が望めず、結果として世界貿易の急回復は期待できないためだ。

トランプ米大統領は9日、米中通商交渉の「第2弾合意」が今年11月の米大統領選後まで見送られる可能性に言及した。写真は訪中したトランプ大統領(右)を迎えた習近平国家主席。2017年11月、北京で撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)

ただ、世界的に5G(次世代移動体通信システム)関連投資が活発化し、半導体の需要が大幅に増える見通しで、この分野での投資拡大がどこまで貿易停滞のマイナスを吸収できるのかが、2020年の世界経済の帰すうを決めそうだ。

<残る3810億ドル対象の関税>

マーケットには、トランプ氏が今年11月の大統領選を意識し、早期に第2弾合意まで到達してその成果をアピールするため、中国に対して大胆な関税撤廃を実行するとの根強い「期待感」があった。

実際、9日のトランプ氏の発言後も「大統領一流のブラフであり、かえって早期妥結の可能性が高まったのではないか」(国内金融機関)との声も出ていた。

だが、「第1弾」の合意を冷静にみると、第1弾から第3弾までの計2500億ドルを対象にした25%の関税は残る。1310億ドルを対象にした第4弾の関税は15%から7.5%に引き下げられたが、撤廃されたわけではない。計3810億ドルの中国からの輸入に高関税がかかったままということになる。

2018年7月から始まった米国の「関税攻勢」の当初、欧米を含めた有力なエコノミストの多くは、中国経済への影響は軽微であり、まして世界経済への打撃はないとみていた。

しかし、タイムラグを伴って、中国の輸出は明らかに大きな影響を受けた。19年2月にドル建て輸出は前年比マイナス20.7%と大きく落ち込み、その後も7月まで前年比プラスとマイナスを交互に繰り返し、8月から11月までは4カ月連続でマイナスとなている。

「第1弾」合意が今月15日に正式調印されても、3810億ドル規模の輸出に高率関税がかかり続ける以上、中国の対米輸出が急回復するのは難しい。

<準備率引き下げ、過剰債務経済の特効薬にならず>

中国当局も、外需の急増は望めないと予測しているようで、今年1月1日に中国人民銀行が預金準備率の0.5%ポイント引き下げを発表した。2018年初めから8回目の引き下げになり、流動性は8000億元(1149億ドル)増加すると見込まれている。

ただ、日本の1990年代のバブル崩壊の経験を持ち出すまでもなく、過剰債務に直面している状況で金融緩和を繰り返しても、中国経済をサポートすることは難しい。

中国の製造業向けに設備投資関連の製品を輸出している安川電機(6506.T)は9日の決算会見で、中国関連需要に関し、昨年12月以降は、想定を超える受注が来ていることを明らかにした。輸出減少に伴う設備投資の減少は、いったん底打ちの兆しがみえているが、「V字回復」する可能性は今のところ見えていない。

19年の世界経済をみると、中国市場が主力の輸出先になっている国で製造業の打撃が大きくなった。日本だけでなく、韓国やASEAN(東南アジア諸国連合)、ドイツを始めとする欧州各国の輸出が振るわなかった。20年に一段と輸出が減少することはないだろうが、小幅の戻りにとどまる公算が大きいと予想する。

実際、世界銀行が8日に発表した2020年の世界経済の成長率は2.5%と、昨年6月時点での2.7%から引き下げられた。世銀は米中の「第1弾」合意を考慮に入れて予測したが、関税引き下げの効果は「小さいものにとどまる」とした。

従って、2020年の大半が「第1弾」合意による関税引き下げの恩恵を受けるだけにとどまるなら、世界の貿易は停滞状況が続き、2010年以降に平均で5%成長してきた世界経済は、その半分程度かそれ以下の低成長を強いられる可能性が高い。

<期待が集中する5G投資>

こうした「暗い世界」に一条の光を放つ存在がある。それが世界的に始まった5G投資とその効果による生産性上昇への強い期待感だ。

世界半導体市場統計(WSTS)が昨年12月3日に公表した2020年の見通しによると、世界の半導体市場は前年比5.9%増の4330億ドルに拡大する。5G投資が始まるほか、データセンタ関連投資の回復などが需要を押し上げると予測している。

米国や韓国などに後れを取ってきた日本の5G投資も、2020年になってようやく「頭出し」程度の設備投資が始まる。

野村総合研究所の試算では、25年度に日本の携帯端末の56%が5G対応になるという。5Gは波及効果も大きく、仮想現実(VR)による観戦などのスポーツテック分野、体温や脈拍などのデータを収集・分析して病気予防に役立てるヘルステック分野、スマートファクトリー、スマートシティなどへの応用が期待されていると野村総研は指摘する。

9日の東京株式市場では、ソニー(6758.T)、富士通(6702.T)、NEC(6701.T)などのIT関連銘柄への買いが目立った。

明暗の要素が入り混じる2020年の内外経済で、プラスとマイナスの綱引きがどうなるのか──。簡単に判断できる目安は、中国の輸出データと5G投資額の動向だろう。

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