March 10, 2020 / 7:50 AM / 24 days ago

コラム:新型コロナ長期戦で16兆円損失も、日本が取るべき対策2本柱

[東京 10日 ロイター] - 新型コロナウイルスとの「戦い」はどうやら長期化しそうだ。日本政府が9日に開いた専門家会議では、ウイルスを「鎮圧」するまでに数カ月から半年かかる、あるいは新年に持ち越す可能性があるとの見解が表明された。

 3月10日、日本政府は緊急対応策を矢継ぎ早にまとめているものの、「対症療法」の印象をぬぐい切れず、大きなショックへの構えができていない。写真は3月9日、東京で撮影(2020 ロイター/Edgard Garrido)

感染拡大の影響が1年間に及べば、16兆円超の影響が出るとの試算もある。新型コロナはリーマン・ショックを上回る経済低迷をもたらす可能性が出てきた。

一方、政府は緊急対応策を矢継ぎ早にまとめているものの、「対症療法」の印象をぬぐい切れず、大きなショックへの構えができていない。トランプ米大統領が減税を含む大規模な経済対策を表明しているのに比べ、対応の「遅さ」は隠せない。

政府は内外需の大幅な落ち込みに対応した大規模な経済対策と、不安心理を払しょくするためのPCR検査実施対象の大幅拡充を早急に掲げ、「不退転」の決意を国民に示すべきだ。

<数カ月から半年もしくは越年、コロナ戦の継続>

政府や日銀の中には、新型ウイルスの感染が拡大しても、感染症はいずれ鎮圧されるのだから、経済に影響があっても「一過性」との捉え方が多かった。

だが、中国だけでなく米欧でも感染が拡大。日本国内でも感染経路を把握できない患者が急増し、大規模なイベント自粛という政府からの要請が、いつになったら解除されるのか不安に思う人々が増え始めている。

そこに伝わってきたのが、ウイルス鎮圧まで時間がかかるという専門家会議での発言だ。メンバーのひとりの舘田一博・日本感染症学会理事長は、新型ウイルスが「暖かくなると消えるウイルスではない」とし、「戦いは数カ月から半年、年を越えて続くかもしれない」と述べ、「長期戦」にもつれ込む可能性に言及した。

東京都内の繁華街では午後8時過ぎてもがらがらの飲食店が目立ち、「自粛」の影響の大きさを鮮明にしている。それでも、1カ月で好転の兆しが見えるなら、と我慢してきたところが多いのではないか。それが数カ月から半年と「宣告」されれば、経営が継続できるのか考え込まざるを得ないだろう。

<1年継続ならマイナス16.3兆円の試算>

大和総研がまとめた「新型肺炎拡大による日本経済への影響度試算」によると、感染の影響が今年2月から1年程度継続すると仮定した場合、個人消費を12兆1000億円程度抑制すると推計している。2011年3月の東日本大震災の際に個人消費が2兆6000億円落ち込んだのと比べると、その深刻さがわかる。

また、その場合の実質国内総生産(GDP)の減少幅は16兆3000億円、マイナス3.1%に達し、2008年のリーマン・ショックによるマイナス3.4%に匹敵する規模になるという。

米欧などでの感染拡大の影響が加われば、リーマン・ショックを上回る打撃が加わる可能性があると大和総研ではみている。

<米は大規模対策に着手>

これに対し、政府は感染拡大防止のための緊急対策の第1弾を2月13日、第2弾を10日に打ち出すなど対応はしているものの、予備費の範囲内の対応にとどまっており、大幅な需要喪失を前提にした経済対策は手つかずだ。

一方、米国では9日にトランプ大統領が景気腰折れを回避するための大規模な経済対策を表明。給与減税などについて10日に米議会共和党幹部と協議する方針を打ち出し、10日の日経平均.N225を押し上げた。

日本では昨年末に閣議決定された20年度予算案が3月中に成立する見通しだが、当然これには新型コロナ対策が全く盛り込まれていない。当座は5000億円の予備費で対応することになるが、予想される内外需の減少を埋め合わせるには「ケタが違う」というのが筆者の実感だ。

日本の政治的流儀では、まず、本予算を成立させ、それから補正予算で対応という流れが「お作法」として存在し、今回も本予算の組み換えは一顧だにされなかった。しかし、専門家会議メンバーの予見が正しければ、5月の大型連休になっても「対コロナ戦」は継続され、とても行楽気分には浸れないムードに包まれているのだろう。

米欧での感染が拡大している中で、外需が盛り返している可能性は低い。今月3日のコラムで指摘した4─6月期のマイナス成長は、避けられない事態になっているのではないか。

<不安払しょくにPCR検査の拡大不可欠>

ここで、政府がまとめるべき対応策を指摘したい。今回のような感染症を起点とする経済的ショックには、経済的対応と衛生行政的対応の2つのルートからの政策が欠かせない。

現在は、保健所を通さないPCR検査が実現したものの、かかりつけ医がPCR検査に直接関与するシステムにはなっていない。何カ所もの医療機関を渡り歩いた末にPCR検査を受け、陽性確認となるケースがなくならないリスクもある。かかりつけ医が関与するシステムに移行し、国民の中に広がっている不安感を払しょくしなければ、消費者マインドは改善されず、20年のマイナス成長が確定的になりかねない。

もう1つは、ここまで指摘してきた大規模な経済対策の策定である。財政当局は反論するだろうが、米国のような思い切った所得減税も選択されるべき政策の1つではないか。外需依存では、景気の立ち上がりがいつになるのか「他力本願」となって、国民に強いメッセージを発することはできないだろう。

以上の2本柱で構成された対策を早急にまとめてほしい。

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