March 13, 2020 / 9:02 AM / a month ago

コラム:「コロナ危機」対応に金融市場が不信感、難しい底値確定

[東京 13日 ロイター] - 世界の株価下落に歯止めがかからない。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、日米欧の政策当局が打ち出そうとする政策で、本当に市場の混乱を収拾できるのかという疑問が広がってきたためだ。一部の市場関係者の間では、大胆な財政拡張の見合いで発行される赤字国債への懸念もくすぶり出し、日本国債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が急上昇している。

世界の株価下落に歯止めがかからない。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、日米欧の政策当局が打ち出そうとする政策で、本当に市場の混乱を収拾できるのかという疑問が広がってきたためだ。写真は3月13日、東京で撮影(2020年 ロイター/Athit Perawongmetha)

米国でも株から債券への明確な流れがストップし、金価格も下落に転じている。単純なリスクオフ相場から、「安全資産が見当たらない」というマーケットの疑心暗鬼相場へとフェーズが変化してきた。この背景には、日米欧の政策当局が持っている「薬剤」では、「コロナ危機」を鎮圧できないという疑念がありそうだ。マーケットの疑念が晴れなければ、リーマンショック時に経験した高値から60%下落という株式市場の下落幅を更新することになるかもしれない。底値の確定が難しいというのが「コロナ危機」の特徴と言えそうだ。

<日本国債のCDS上昇>

13日の日経平均.N225は一時、2016年11月以来となる1万7000円割れとなり、リスクオフ心理が一段と鮮明になった。だが、これまでのように株から債券へという決まりきったマネーシフトがみられない。この日の10年最長期国債利回りJP10YTN=JBTCは前日のマイナス0.065%から一時、マイナス0.005%へと6bp上昇した。

複数の市場関係者によると、株の大幅な下落で生じた損失を債券の益出しで埋めようという動きが国内銀行や機関投資家から出たという。

それに加え、注目すべきは海外勢の動向だ。7年ゾーンをマイナス金利で購入していた外銀勢が売りを出したという。その理由の中に、どうやら日本が赤字国債の大量発行で財政出動するようだとの思惑で、保有する日本国債を売却したという動きもあったようだ。

そうした動きと連動するかのように日本国債のCDSも足元で跳ね上がっており、2月下旬には17bp台だった5年国債のスプレッドが、足元ではいったん40bp台に急上昇した。自民党若手議員が30兆円規模の財政出動を提言したことなども材料視されたようだ。

<米長期金利上昇と進まない円高>

このような現象は日本だけではない。米国でも株価急落を横目に、一時は0.3%台まで低下した10年米国債利回りUS10YT=RRは0.8%台まで上昇した。取りざたされている給与税の減税を実施するなら、米国でも赤字国債発行が断行されることになり、市場の一部は早手回しに「警報」を鳴らしている可能性がある。

日米金利差が縮小から拡大に向かうと、円高圧力は弱まる。さらに米銀からドル資金供給量を絞られた邦銀や、米株下落で損失を出した日本の金融機関によるドル手当て要因も加わって、リスクオフの下でドル/円JPY=EBSが上昇する珍しい構図が出来上がっている。

リスクオフになると買われてきた金も、足元で下落局面を演じている。今、世界の金融・資本市場で発生しているのは、いつ終息するか分からないコロナ感染の打撃におびえ、疑心暗鬼が高じて従来の安全資産からもマネーが流出しているという現象ではないか。

<出口見えず、困難な損失確定>

リーマンショックと比較すると、今回のコロナ危機の本質が見えてくる。サブプライム問題を発火点に当初は損失規模が不明だったリーマンショックは、時間が経過するにしたがって損失額の規模が大まかに判明し、次第に市場の「緊張感」は低下していった。

しかし、現在のコロナショックでは、今のところ、感染拡大のピークアウトが1カ月後なのか、半年後なのか、1年経過しても終息しないのか全く分からない。仮に今の自粛ムードが半年も継続したら、日本経済の受ける打撃は、リーマンショック時を上回ってしまうだろう。

こうした点は、政府・日銀も認識しているのではないだろうか。武内良樹財務官が13日、3者会合後に記者団に対し、感染拡大防止が経済にとって最も重要と述べた。

感染拡大が終了しなければ、需要消失の規模と投入する財政の規模も決まらない。逐次投入すれば「労多くして益少なし」という最悪の展開にもなりかねない。

まして、日本は国債発行残高が累増し、外貨準備や対外債権が潤沢とはいえ、対コロナでの長期戦は避けたいところだ。

<特効薬、実は解熱剤の可能性>

マーケットから現状を見れば、主要7カ国(G7)の政策カードは枯渇し、さらに従来なら文句なしに有効性を証明できたマクロ政策への「信用度」もぐらついてきた。当局を医師、マーケットを患者にたとえると、医師の出す処方せんがだんだんと信じられなくなり、特効薬と信じていたら、実は単なる解熱剤だったと分かったということではないか。

別の医者に行っても、同じ結果と分かれば「何を信用していいのか」という心境に陥る。「安全資産はどこにあるのか」と言わんばかりの足元でのマネーの右往左往ぶりは、市場の恐怖心が恐怖指数の上昇以上に強まっている「証拠」と指摘したい。

当面は、その恐怖心と政策期待の綱引きになるが、18日の米連邦準備理事会(FRB)と19日の日銀という2つの政策発表後が、大きな分かれ道になりそうだ。

市場が日米中銀の政策とメッセージに敬意を表し、「一時休戦」のような地合いに戻るのか、それとも株安が止まらないのか──という明暗を分ける重要なポイントだ。

リーマンショック後に、日経平均は2007年夏の1万8000円台から、6900円近辺まで下落した。感染拡大を止めることができず、市場の疑心暗鬼が増幅すれば、今回も大きなクラッシュを覚悟すべきかもしれない。

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