March 16, 2020 / 12:17 PM / 14 days ago

コラム:日米中銀会合後の株安、コロナ対応・主役は「財政」のシグナル

[東京 16日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)がゼロ金利政策と量的緩和(QE)政策を再開し、日銀がETF(上場投資信託)の買い入れ枠を倍増させる追加緩和策を打ち出したものの、日米株価は下げ止まらなかった。移動制限を伴う新型コロナウイルス対策は、経済への「毒性」がリーマンショック時とは違った意味で大きい。市場はある意味で、金融政策が今回の危機では「脇役」であることを織り込んでしまったのではないか。

 米連邦準備理事会がゼロ金利政策と量的緩和政策を再開し、日銀がETFの買い入れ枠を倍増させる追加緩和策を打ち出したものの、日米株価は下げ止まらなかった。写真は2015年8月、都内の株価ボード(2020年 ロイター/Thomas Peter)

それでは「主役」は何か。コロナ危機の特徴が需要の「蒸発」にあるなら、財政政策での需要穴埋めが大きな役割を果たすだろう。ただ、債務残高が累増している日本にとって、中長期的には副作用も非常に強い。これから繰り出す財政・金融政策は「劇薬」だが、それほどコロナ禍のインパクトは大きいとも言える。

<1-3月期GDP、リーマン並みの落ち込みも>

コロナ危機の特徴は、消費者に近い分野での打撃が大きく、多くの人々の目にその落ち込みぶりがはっきり見えることだ。

ナウキャストとジェーシービーがまとめた2月16日─29日の「JCB消費NOW」によると、航空旅客が前年比12.7%減、遊園地が同11.1%減、旅行が同9.8%減、居酒屋が同4.6%減と大きく落ち込んだ。前年と比べ、うるう年で日数が1日多く、さらに休日も1日多いという「ゲタ」を履きながらであり、これらの業種の落ち込みは予想通りに深刻化していると言える。

第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏は、2月─4月の個人消費は2.3兆円落ち込む可能性があり、今年1─3月期の国内総生産(GDP)は、前期比・年率で12.7%減となったリーマンショック直後の2008年10─12月期に匹敵する落ち込みが予想されると指摘する。

<日銀、会合前倒しで追加緩和>

16日に金融政策決定会合を前倒しで開催した日銀の黒田東彦総裁は、同日の会見でリーマンショック時のような大きな落ち込みは予想していないとしながらも「(新型ウイルスを)終息させるために集会の抑制などが行われるため、需要や生産が一時的に急速に減少する。回復テンポは世界経済にとってV字型になるとはなかなか言い難い。一定期間、低成長が続く恐れがある」と述べた。

その上で、今回の追加緩和について「本年度末を含め安定維持に万全を期すため、必要な措置を早急に検討して実施することが必要と判断した。国民心理の安定、市場の安定にも重要と考えた上で、前倒しして本日に変更した」と指摘した。

<市場が求める財政出動>

しかし、16日の日経平均.N225は前日比2.4%の下落となり、ダウ先物は夜間取引で急落し、ストップ安となった。これはコロナ危機で失われる様々な分野での需要減少に対し、主役として活躍するのは、減少分の一部をダイレクトに埋め合わせることができる「財政出動」と、市場参加者の認識が次第に収れんした結果ではないか。

米国では、非常事態宣言とともに5兆円を超える連邦政府からの支出が決まった。ただ、足元で明らかになっている航空、旅行業界の需要蒸発や関連する産業の打撃を考えれば、その数倍から10倍を超える財政出動が必要との見方がエコノミストから出ている。FRBの政策総動員でも、需要を埋めることはできないという市場の見方が、米株先物を押し下げたとみられる。

日経平均の下げも、同様のことが言えるだろう。今回の日銀追加緩和は3月末を控え、企業金融がひっ迫しそうになる時期を前に「定石」となる政策を打った。ETFの買い入れ枠も2倍にして、市場に対するメッセージ性を強めた。それでも株価が下げたのは、日本政府の政策スタンスが明確でないからだ。

<具体性欠く政府の政策スタンス>

政府が打ち出した緊急対応第1弾、第2弾はいずれもコロナウイルスの感染者やその周辺の人々への救済が主要なテーマで、経済全体の落ち込みをカバーする性格ではない。

今のところ、報道されている範囲でも、経済対策の第1弾は2020年度予算に盛り込まれている予備費の活用が主体で、規模も5000億円を少し超える程度。とても大幅な需要減に対応した対策とは言えない。安倍晋三首相は16日の参院予算委で「機動的に必要かつ十分は経済・財政政策を間髪を入れずに講じる」と述べたものの、具体的な時期や規模、内容には全く触れなかった。

足元で生じている需要の消失は、仮に4月以降も政府が自粛を要請すれば、かなりの規模に上るだろう。10兆円台の対策を打っても、果たして安倍首相が提唱する成長軌道への回復が可能か、現状では、はなはだ疑問だ。

自民党の若手や野党の一部が主張している消費税率の引き下げも含め、メリットとデメリットをわかりやすく並べ、国民の多くがわかるよう透明性の高い議論を行って、結論を導いてほしい。

<国債CDS上昇、副作用強い劇薬の怖さ>

ただ、債務残高が1100兆円を超える日本では、国際金融・資本市場で「アンカーが切れた」と思われれば、安定した経済運営ができなくなる。

一部の市場参加者からは、足元で株価が下がっても国債先物が売られ、かつてのような円高にもならないのは「日本売り」の前兆ではないか、と懸念する声も上がっている。国債の信用度を図るCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)も主要7カ国(G7)でイタリアに次ぐ2番目の高さ(信用度が低い)となっており、財政拡張は今の日本にとって、副作用の強い劇薬であることを示している。

新型コロナウイルスの経済に対する強い毒性を前に、市場に無関心だった多くの国民も、日本の置かれた厳しい経済状況を直視すべき時期に来たと指摘したい。

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編集:石田仁志

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