March 25, 2020 / 9:30 AM / 5 months ago

コラム:21年五輪にコロナと景気後退のハードル、どうする負担増

[東京 25日 ロイター] - 東京五輪の1年延期が決まった。「中止でなくてよかった」との声も少なくないが、前途に立ちはだかるハードルは意外と高い。特に大きな障害になりそうなのが、新型コロナウイルスの世界的な感染状況と景気後退リスクの2つだ。特に景気後退は、延期で膨らむコスト負担の一部を担うとみられる国内企業の業績を圧迫。国内で雇用が悪化した場合には、税金での負担増に国民的な理解が得られない可能性も出てくる。

 3月25日、東京五輪の1年延期が決まったが、前途に立ちはだかるハードルは低くない。写真は3月25日、東京で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

2021年夏の開催を前に、今から半年経過した9月末から10月にかけての感染状況や世界経済と国内景気の動向によっては、再び、世界的な議論が巻き起こる可能性もあると考える。

<世界で懸念される感染拡大>

トランプ米大統領は24日、新型コロナウイルス感染拡大阻止に向けて制限されている米経済活動を4月12日のイースター(復活祭)までに再開させたいとの考えを示した。

一方、フォーブズ誌によると、ビル・ゲイツ氏は同日、米国がダメージを最小限に抑えるため、6週間から10週間の完全な隔離措置が必要との見解を示した。米国の感染者数は3万人を超え、半数近くを占めるニューヨーク州のクオモ知事は、住民の40─80%が感染する可能性があると警告した。感染増加の傾向を見ると、トランプ大統領の見通しは、甘過ぎるのではないか。

世界の感染者数は40万人を突破。感染ペースが日に日に速まっている。今後、衛生状態が悪いアフリカや中南米で感染が拡大すると、どれだけの感染者数に膨れ上がるのかわからなくなる。

<終息の決め手、ワクチン完成は不透明>

感染症の専門家によると、終息への決め手はワクチンと特効薬の開発。主要7カ国(G7)財務相による24日のテレビ会議では、ワクチンや治療薬の開発に資金支援する方針が確認された。

日本でも大阪大学微生物病研究所とワクチンメーカーが今月18日、ワクチン開発に着手したと発表したが、患者に投与できる具体的な時期は不透明。世界的にもいつから投与できるのかはっきりしていない。

専門家の話を総合すると、特効薬の開発に約半年、ワクチンの開発から投与には12カ月─18カ月かかるという。

来年夏の五輪を最終決定するには、その数カ月前に終息のメドが立っていないと、選手や観客、その他の関係者の健康と安全と守れないだろう。特にアフリカで今後、爆発的な感染拡大という事態になった場合、2021年の五輪開催は相当に難しくなってくるのではないか。2020年末か21年初に国際保健機関(WHO)がパンデミック宣言を解除していないと、21年五輪開催のハードルが相当に上がると判断せざるを得ない。

<トランプ氏も認める経済破壊の現実>

一方、世界的な経済状況の悪化も深刻化している。トランプ大統領は、先の発言に関連し「経済活動を停止することで国を破壊する恐れがある」と述べ、現在の移動制限措置が経済に与える深刻な打撃の状況を正直に述べてしまった。

IMFのゲオルギエバ専務理事も23日、新型コロナウイルスの影響で、2020年における世界経済成長率がマイナスになるとの見解を示した。09年のマイナス0.1%からマイナス幅を拡大させる可能性も十分にありえる。

なぜなら、感染拡大が長期化した場合、世界的な需要の大幅減少も長期化し、過去最大規模の財政出動でも、吸収できない「穴」が発生しかねないからだ。米国は国内総生産(GDP)の10%を対策に充てるが、全面的にストップした経済の1-2カ月分にしか相当しない。トランプ大統領の「国を破壊する恐れ」というのは、そういう事実を指している思われる。

<国内でも深刻な落ち込み>

感染者数や死者数が相対的に抑制されている日本でも、移動制限の「毒素」は、はっきり経済に出ている。政府が23日に開催した4回目の「新型コロナウイルス感染症の実体経済への影響に関する集中ヒアリング」で示されたデータによると、2月下旬から、JR東日本(9020.T)・JR東海(9022.T)などの新幹線、在来線の利用実績は、いずれも前年比で50%を割り込む落ち込みを示した。

また、日本旅行業協会がまとめた主要旅行業者の総取扱額の予測値は、前年同月比で3月が3274億円減、4月は2931億円減、5月は1794億円減となる。

日本のGDPは、昨年10─12月期が前期比・年率マイナス7.1%と大きく落ち込んだが、1─3月期と4─6月期も同マイナス4%─5%の大幅なマイナス成長が避けられなくなっている。日本政府もどこかの時点で、景気後退を認めることになるだろう。

<失業増なら、費用負担増に異論も>

経団連などは、五輪延期に伴う費用増の一部を負担する方向のようだが、国内景気の急速な悪化によって、大企業の業績も打撃を受けることは必至であり、負担増がすんなりとまとまる保証はない。

また、サービス業を中心に非製造業の売上減少が深刻になっており、パートタイマ―などの非正規社員の雇用を打ち切る動きが表面化しかねない。アルバイトやパートの雇用契約解除が大量に発生すると、2%台で低位安定していた失業率が跳ね上がり、社会的な不安が急速に拡大することも予想される。

そうした中で、五輪延期に伴う費用の多くを財政資金で賄うことになれば、その資金は「雇用対策に回すべき」という声が、国民の各層から出てくる可能性もある。場合によっては、21年夏の開催に向けた「国民一致」の盛り上がりという政府の描くイメージが、実現しないリスクも浮上するだろう。

「大不況」の下での五輪開催は、どうしても避けたいシナリオだ。

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編集:内田慎一

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