May 14, 2020 / 9:09 AM / 23 days ago

コラム:緊急事態解除で経済再開どこまで、日本に求められる工程表

[東京 14日 ロイター] - 日本国内では緊急事態宣言の解除が進んでいるが、その先の経済再開に向けた「工程表」が示されていない。今のままでは、夏休みに長距離旅行に出かけてもいいのかどうか、基準が分からないままだ。段階的に経済活動を再開するためのマイルストーンがなければ、経済活動の順調な回復は望めないだろう。

日本国内では緊急事態宣言の解除が進んでいるが、その先の経済再開に向けた「工程表」が示されていない。今のままでは、夏休みに長距離旅行に出かけてもいいのかどうか、基準が分からないままだ。写真は5月14日、東京の浅草で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

同時に感染状況の正確な把握がなければ、いくら政府が「活動してください」と要請しても、安心して日常生活に戻れない。不安感が残ったままでは消費マインドは回復せず、企業活動の停滞が長期化しかねない。この問題を解決するため、全国民にPCR検査を実施する目標を掲げ、陽性者の隔離を徹底し、人々の「安心感」を取り戻すことにも注力するべきであると提案したい。

<どうなる夏休みの旅行>

14日中に39府県での緊急事態宣言解除が決まり、残りの8都道府県も早ければ今月31日の解除が視野に入ってきた。ところが、仮に全国で解除された場合、その後に県境をまたいだ移動が全面的に「容認」されるのか、経済活動はどこまで再開が許されるのかについて、政府からはまとまった「指針」が示されていない。

今のままでは、東京都内に居住する人たちが、夏休みにどの範囲まで旅行に出かけることができるのか、判断材料がないため、計画の立てようがないというのが実態だ。

一方、欧州連合(EU)の欧州委員会は13日、EU域内の国境封鎖を徐々に解除することを提案。解除に際しては、航空機内でのマスク着用や列車内での対人距離確保の義務付けなどを計画していることを明らかにした。

日本国内でも、緊急事態宣言の全国的な解除後に、国内の移動をどのようにするべきか早急にガイドラインを示すべきだ。

宣言の解除後にどのような経済活動なら許容されるのか、観光に限らず、全産業分野に関して「指針」を示すべきだ。もし、今月31日で全国的に宣言を解除するなら、残すところ2週間しかない。今のままでは個人や企業にとっての予見可能性が極めて低く、合理的な経済活動の再開には大きな障害となる。

<許容される経済活動はどこまでか>

米国では4月16日、トランプ大統領が経済再開に向けた3段階の指針を発表している。一部の州知事からは経済優先の対応で、感染の再拡大リスクが大きいと批判されているが、具体的な内容が示されたことで、適切かどうかの議論が社会的に進んだ面がある。

日本でも全国的な宣言解除を前に、経済を段階的に再開する際に守るべき内容を明確に示した「工程表」を早急に示すべきだ。例えば、多くの場所で止まっている公共工事は、どのような条件の下で再開できるのかということを明示するべきだ。

また、映画やテレビドラマの撮影現場は「3密」の典型として自粛が求められているが、どのような課題をクリアすれば撮影が再開されるのか、事業者が判断できることも求められる。

経済全体を見据えたマクロ的な工程表と、各業種ごとのミクロ的なガイドラインを組み合わせた「経済再開プラン」を早急にまとめ、国民に示すべきだ。

<不安残ればデフレに>

ただ、今回の新型コロナウイルスの感染は、経済再開の「枠組み」を作れば、直ちに景気が回復していくという簡単な構造になっていないところが大きな問題点として浮上している。何がネックかと言えば、「知らないうちに感染するのではないか」という不安感だ。

政府が緊急事態宣言を解除し、「これからは経済活動を再開してください」と言っても、不安感が残っていれば、観光地に人があふれることにはならないだろう。個人のマインドが弱いままでは消費の回復ペースが鈍いままとなり、企業経営者の投資マインドも慎重さを増すことになる。

これは「失われた20年」やリーマンショック後に見られた「デフレマインド」による経済収縮の悪循環の再来であり、何としても阻止しなければならない。

そのために思い切った財政出動が米欧各国でも検討され、一部は実施に移されているが、その政策が効果を発揮するには、ある前提が不可欠だ。自分はウイルス陰性であり、周囲に陽性者がいないという「確信」が存在することだ。

<PCR拡大へ総力挙げるべき>

一部の疫学専門家や医療従事者は「不可能」と言うかもしれないが、一定の期間内に全国民にPCR検査を受診してもらい、陽性者を隔離し、「感染するかもしれない」という不安感を払しょくすることが重要である。米国のロサンゼルス郡では、症状のある住民全員を対象に無料のPCR検査を始めた。

また、再び感染者が見つかった中国の武漢市では、市民全員のPCR検査を始めようとしている。日本でも検査キットや検査場の新設などに大規模な予算を投入し、全国の医科系や理科系の大学スタッフなどの協力も得て、PCR検査を全国民に実施できる体制整備を始めるべきだ。

このことは、予想される新型ウイルスの第2波、第3波襲来時にきっと貢献するだろう。日本の専門家の中には「できない理由」を挙げることが得意な人たちがいるようだが、発想を転換し、困難なことを可能にするための条件を挙げてほしい。

経済再開のための工程表とPCR検査の拡大が、日本の未来を切り開くカギになると指摘したい。

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編集 高木匠

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