May 18, 2020 / 10:55 AM / 3 months ago

コラム:日本の消費停滞は「序の口」、雇用の受け皿不足が深刻に

[東京 18日 ロイター] - 2020年1─3月期の国内総生産(GDP)は2期連続のマイナス成長だったが、6割以上を占める個人消費が新型コロナウイルスの警戒感から、この先も長期間にわたって停滞する可能性が高く、年内回復のハードルは相当に高そうだ。また、テレワークが「新常態」となる公算大であり、それにつれて店頭販売からEコマースへのシフトが進み、短期的には雇用の受け皿不足が深刻化するリスクがあると指摘したい。

2020年1─3月期の国内総生産(GDP)は2期連続のマイナス成長だったが、6割以上を占める個人消費が新型コロナウイルスの警戒感から、この先も長期間にわたって停滞する可能性が高く、年内回復のハードルは相当に高そうだ。写真は5月14日、東京新宿の歌舞伎町で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

<4月の娯楽・旅行・宿泊など大打撃>

1-3月期GDPは前期比年率3.4%減だったが、個人消費は前期比0.7%減と事前予想よりは強かった。だが、これで先々の消費が「安心」と思っている市場関係者はゼロだ。

それは、ナウキャストとジェーシービーがクレジットカードの取引データを活用して、直近の消費動向を把握するために作成した国内消費動向指数「JCB消費NOW」の結果にはっきり出ている。

同指数によると、1月後半と比べた4月は、前半がマイナス29.2%、後半がマイナス33.3%と右肩下がりが歴然となっている。緊急事態宣言を受けた行動の自粛要請が、時間の経過とともに強まっていることがうかがえる。中でも、娯楽、旅行、宿泊の4月後半はそれぞれマイナス96.1%、マイナス95.2%、マイナス93.0%と壊滅的な打撃を受けている。

この傾向が、年後半にかけて急速に回復していくという想定は難しい。新型コロナウイルスの感染リスクを気にしないで「旅行」「出張」に出かける環境が整っていないからだ。

<回復に不可欠な安心感>

政府の新型コロナ感染症に関する「基本的対処方針等諮問委員会」に加わった東京財団政策研究所・研究主幹の小林慶一郎氏(慶大客員教授)はロイターのインタビューで、経済の回復には、検査能力と隔離能力を大幅に引き上げ、経済マーケットの中に陽性者がいないと多くの人が認識し、安心できるようにすることが重要だと指摘した。

この指摘は「正鵠を射ている」と私も考える。検査と隔離の能力が短期間に拡充されることは難しく、とすれば、少なくとも年内は、長距離の旅行と宿泊、関連する交通需要の大幅な回復は難しいだろう。ナウキャストでも「レジャー系の回復には時間がかかる」と予測している。

人と人との接触を伴うビジネス分野の回復には、「飛沫感染防止」のための環境整備やさらに根本的なワクチン・特効薬の開発と普及をみつつ、相当の時間がかかると覚悟を決めることが必要なようだ。

<テレワークが標準になる世界>

一方、「JCB消費NOW」によると、Eコマースが時間の経過とともに伸びている。中でも機械器具小売業や飲食料品小売業が売り上げを伸ばしている。機械器具はPCやAV機器、ヘッドホンなどテレワーク用の製品が人気を集めたようだ。

小林氏もテレワークの広がりは一時的な現象ではなく、「標準形態」として社会に定着していくとみており、通信インフラを駆使した行動が、さらに広がりをみせることになるだろう。

この勢いは、Eコマースの比重を高め、店頭販売のシェア低下を招くと予想される。米百貨店JCペニー(JCP.N)の経営破綻は「対岸の火事」ではなく、いずれ日本でも何らかの形で店頭販売ビジネスの苦戦が表面するに違いない。

そこで問題になるのが、Eコマースと店頭販売を比較すると、雇用の受け皿としてEコマースは容量が小さいことだ。確かに宅配の現場における人出不足は深刻で、余剰人員を受け入れる大きな選択肢になりえるが、Eコマースビジネス事態は、人手をかけないことが特徴であり、短期的な労働需給は緩和する方向に傾きそうだ。

年内だけでなく、2021年以降を展望して「雇用・所得─消費―投資」のマクロの歯車が前向きに回り出すパワーは相当に不足している。当面は、財政の大きなサポートが必要になるのは必至の情勢だ。だが、国会審議を見ていると、与野党とも経済の中長期的なビジョンを語ろうとせず、先行きの不安感を感じないわけにはいかない。

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編集 高木匠

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