June 2, 2020 / 8:07 AM / a month ago

コラム:コロナが生んだ日本社会の格差、10兆円予備費で失業増回避を

[東京 2日 ロイター] - 緊急事態宣言が全国で解除されて1週間が経過するが、宣言前と比べ社会の様子が変わったのは疑いの余地がない。特にコロナ前は覆い隠されていた格差が、鮮明になっている。大企業の社員はテレワークを継続しているが、中小・零細企業の社員は通勤を強いられる。Eコマース企業は収益を大幅にアップさせる一方、集客を手段にする業種は、外食から文化、スポーツに至るまで幅広い分野で収益悪化に直面している。

緊急事態宣言が全国で解除されて1週間が経過するが、宣言前と比べ社会の様子が変わったのは疑いの余地がない。特にコロナ前は覆い隠されていた格差が、鮮明になっている。写真は4月7日、東京・銀座で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

この「ピンチ」を「チャンス」に変えるため、政府は大胆に資金を配分するべきだ。具体的には、2020年度第2次補正予算で計上された10兆円という空前の規模の予備費を活用し、中小・零細企業のテレワーク比率を上げるための補助金支給や、集客数の制限により損益分岐点が大幅に上がっている業種に対する新たな支援策を打ち出し、失業者の大幅増を回避してほしい。

<地下鉄乗車率が示すテレワークの実態>

緊急事態宣言が解除され、テレビなどの報道では、朝のラッシュ時間帯の混雑が戻ってきたように伝わっているが、現実のデータを見るとちょっと違う。

東京メトロの自動改札機のデータによると、宣言が出る直前の4月3日(金)の午前7時半─8時の乗車数は、前年比20%減だった。それが宣言後の4月10日(金)の同時刻帯が同51%減、解除直前の5月22日(金)が同57%減。解除後の5月29日(金)が48%減だった。

つまり宣言解除後の5月29日は、宣言が始まったばかりの4月10日よりも多少、混雑している程度で、4月3日よりは大幅にすいていたことになる。

ここで分かるのは、テレワークや時差通勤が可能な企業に勤務している人たちは、宣言解除後の5月26日以降も、多くは宣言前の「日常」には戻らなかったことだ。

他方、5月30日(土)が同60%減だったことと比較すると、29日の48%減との差の12%分が、金曜は通勤して土曜は休んだ人と解釈することができる。

また、パーソル経済研究所が今年3月に行ったテレワークに関する調査では、従業員100人未満で84.2%、100人から1000人未満で73.9%が会社からテレワークの案内が来ていないと回答した。

中小・零細企業のテレワーク環境を整備すれば、平日でも休日並みの社内混雑率を達成することが可能とも言える。中小・零細企業がテレワーク環境を向上できるよう投資したコストの多くを国が支援すれば、通勤電車内での感染リスクを低下させることができる。また、日本企業の生産性が低い原因の1つとして指摘されている事務処理効率の大幅な向上や、日本経済の潜在成長率引き上げにもつながる。

<酒屋とEコマースが勝ち組>

一方、ジェーシービーとナウキャストがクレジットカードの取引データを活用して作成した国内消費動向指数「JCB消費NOW」によると、5月1日─15日の消費総合指数は、今年1月後半と比べマイナス30.7%の水準に低下した。

ここで特徴的なのは、居酒屋が同85.7%減だったのに対し、酒屋が同40.2%増となり、百貨店を含む小売業が同21.6%減と苦戦し、Eコマースが同33.5%増となったことだ。コロナ禍は人々の接触への懸念を強め、「家飲み」とネット通販を激増させた。この傾向は、今後、コロナ感染者数が減少しても、第2波への警戒感が残っているうちは継続するだろう。

<危機はらむ集客制限>

居酒屋だけでなく外食産業は、これから「再起」を図ることになるが、「社会的距離」を取ることが求められ、客数の制限を余儀なくされる。この制約は「客商売」であるあらゆる分野に共通の問題点となる。映画館や演劇などでも、従来の定員の50─60%に収容人数を制限されることになるし、野外での大型イベントや野球、サッカーなどのプロスポーツでも無観客から段階的に観客を入れても、当面は、5000人が収容の上限になる。

いずれの業種でも、損益分岐点が上がり従来のビジネスモデルの維持は困難だ。特に規模の小さい店や業態では、廃業の危機にも直面するだろう。コロナ禍は、弱者へのしわ寄せが大きいとこのコラムで何回も指摘してきたが、ここでも大きな資本を持つプロスポーツよりも「日銭」でやりくりしている個人営業の飲食店の倒産危機が何倍も大きい。

<予備費、迅速な対応可能>

そこで提案したいのは、2次補正で計上された10兆円の予備費の活用だ。予備費なので今のところ、使途は未定である。安倍晋三首相は会見などで、何回も雇用を守り抜くと言ってきた。家賃の補助や持続化給付金の交付はあるものの、今のままでは集客ビジネスに関わる業種は第2波や第3波が襲来してきたら、耐えられないだろう。

業種を転換したり、新しビジネス手法を採用するにも、資金が必要になる。国は簡素な手続きで、中小零細企業の経営者などに資金支援する新たな枠組みを作るべきだ。手をこまねいていると、1-2年後の失業率が急上昇しているだろう。

また、テレワーク環境の整備に必要な資金支援も、10兆円の予備費を活用すべきだ。今度こそ、タイムリーは政策実行を果たしてほしい。

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編集:内田慎一

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